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第2章

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 村に到着したのはお腹の機嫌が悪くなり始める午後帯であったが、早朝と同じく、村には人の気配がなかった。


 出てこないのは、スライムのせいで仕事をすることが出来ないからだろう。


 これは私たちにとって好都合なのか、それとも不都合なのか。


 どちらにせよ、私たちが関与したことがバレたら(いや、結果を見れば一目瞭然だろうが)、私たちにとって不利になるのは確実だった。


 私たちは畑へと向かい、布の中の暗闇を覗き込む。


 太陽の光に照らされて、少し全貌が見えた。


 だが、なんてことはない、ただの茶色い土だけがそこに広がっていた。


 スライムのせいで全部の農作物を駄目にしてしまったのか、それとも奴らにめちゃくちゃにされるくらいなら、と綺麗にしてしまったのか、少なくともそこには土しかなく、戦いのフィールドには十分そうだ。


 ーーそう言えば、まだ具体的な報酬内容聞いてなかったな。


 どうしよう。

 今聞くべきか?


 パーシーの方をちらりと見やる。


 彼は真剣な表情で、 畑を凝視していた。

「あの……」

「スライムは馬鹿なので、布を被せてしまえば村には近づきません。しかし、それを少しでもめくってしまえば最後ーー」


 彼はぶつぶつと作戦の説明をしている。

 私はもう一度尋ねた。


「あの、すみません」


 パーシーはこちらを振り返る。

「なんですか?」

「今聞くのもあれなんですけど。報酬金って」

「あっ」


 絶妙なタイミングで、パーシーは声を上げた。


「来ました。スライムです!」


 ゼロと私は、パーシーが指さす方角を確認する。


 だがーー。

「えっ、どこ?」

「そこです!」
 
「えっ」


 私は瞬きしたり、目を凝らしてみたりするが、どこにもその影がない。


「どこ?」

「だから、そこだっつってんだろ!」


 ゼロも、ほとんど怒鳴りつけるようにそう叫ぶ。


 ヴァイオレットってこんなに目が悪かったの?


 前世の私で唯一褒められるところと言えば、目だった。

 長時間漫画を読んだりゲームをしたりなんかしていたのに、コンタクトはおろか眼鏡さえつけたことがない。


 だから、なんかショック。


「ヴァイオレット! 馬鹿か! 早く剣を抜け!」


 ゼロに急かされ、私は慌てて腰に差した剣を抜いた。


 よくよく見ると、向こうの境界線から砂埃が立っているのを見つける。


 なんだ。

 あの程度か。


 所詮はスライム。


 そう油断した数秒前の私をしばき回したい。


 砂埃の向こう側から確認出来る魔物の姿。

 人間の子どもくらいの大きさの透明な何かが、全速力でこちらに近づいてくる。


 その数、数百、いや数千……?


「いやいやいや!」


 私は叫んだ。

「多すぎでしょ!」


 まるで例の名作アニメーション映画のラストシーンのような、夥しい数の物体がこちらに迫ってきていた。

 

 
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