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第4章
倉庫
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指示によると、裏口にある倉庫の中に大きいダンボール箱が何個も置いてあるらしい。
それらを玄関口にまで運んでいくのが私の仕事だ。
裏口を一歩でて、左右を見ると一発でどこが倉庫かわかる。
「大っきいなぁ……」
つい独り言をつぶやいてしまうくらい、一般的な家の倉庫よりは、かなり大型のプレハブ小屋だった。
湿った土にまみれて、キシキシと音を立てる扉。
壊れそうで、ゆっくりと開いていくと、まず目と鼻に衝撃が走る。
カビと埃の臭いだ。
思わず、うっと声を上げて、中に入る。
雛子家は綺麗とはいえ、倉庫まではちゃんと管理しているわけではないらしい。
しかしそれも、逆に人間味があって好感が持てた。
中は、とてもごちゃごちゃしていた。
箱でいちいち仕切っている。
しかし、その箱もどろどろで、中から物が見え隠れしている。
埃が雪のように積み上がり、天井には、きめ細やかな蜘蛛の巣がそこかしこに張り巡らされていた。
確か、ダンボールって言ってたよね、冬馬さん。
わさわさと荷物共をかき分け、何とかダンボールで作られたバベルの塔を見つける。
ああ、これか。
思ったよりも大きく、また思ったよりも多かった。
何入っているのか分からないダンボール箱は、くたびれて薄汚れている。重そうだ。
うーん、失敗したな。
一人で持つのはちょっと……。
いや、ここでわざわざ向こうへ行って、
「すみません、冬馬さん。重すぎて持てませんでした」
なんて言ったら、それ見た事かというドヤ顔をされそうだ。
重たい物を持つと腰痛めそうだから嫌だし、冬馬さんに勝たれるのも嫌だ。
どうするか天秤に掛けていると、後方からガサゴソと音がする。
思わず飛び上がった。
背筋が凍る。
肝が一気に氷点下へダイブした。
ありとあらゆる毛が逆立つ。
嫌な予感が喉元を通って身体全体に広がった。
言っちゃ悪いが汚い倉庫。
私一人だけ。
誰かがこちらにやってくる。
音的に、Gではない。
その他の虫でもない。
ミシミシと枝を踏み締めて、誰かがやってくる。
落ち着け私。
きっと、雛子ファミリーの誰かだろう。
ここは居住地なんだ。普通の人なら、不法侵入なんていう罪を犯しはしない。
外から、荒い息遣いが聞こえてくる。
倉庫の扉は閉めている。
音が響いているのだ。
心臓付近が酷く痛い。
何度も何度も私を打ち付ける。
速くなり、私を焦らせる。
大丈夫だ。
落ち着け、私。
武器だ。
とりあえず、武器を手にしろ。
リモコンで消音ボタンを押したように、ゆっくり静かに近くにある棒を掴む。
さあ、かかってこい。
こちらはいつでもいいぞ。
準備万端だ。
ガチャガチャと扉に触れる。
不快な音を立てて開く。
全貌が見えてきた。
逆光を浴びて、よく見えない。
しかし、輪郭は掴めた。
私の知っている誰のものでもない。
「おりゃぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!」
乙女なんてとうに捨てた雄叫びをあげながら、私はやつに飛びかかった。
それらを玄関口にまで運んでいくのが私の仕事だ。
裏口を一歩でて、左右を見ると一発でどこが倉庫かわかる。
「大っきいなぁ……」
つい独り言をつぶやいてしまうくらい、一般的な家の倉庫よりは、かなり大型のプレハブ小屋だった。
湿った土にまみれて、キシキシと音を立てる扉。
壊れそうで、ゆっくりと開いていくと、まず目と鼻に衝撃が走る。
カビと埃の臭いだ。
思わず、うっと声を上げて、中に入る。
雛子家は綺麗とはいえ、倉庫まではちゃんと管理しているわけではないらしい。
しかしそれも、逆に人間味があって好感が持てた。
中は、とてもごちゃごちゃしていた。
箱でいちいち仕切っている。
しかし、その箱もどろどろで、中から物が見え隠れしている。
埃が雪のように積み上がり、天井には、きめ細やかな蜘蛛の巣がそこかしこに張り巡らされていた。
確か、ダンボールって言ってたよね、冬馬さん。
わさわさと荷物共をかき分け、何とかダンボールで作られたバベルの塔を見つける。
ああ、これか。
思ったよりも大きく、また思ったよりも多かった。
何入っているのか分からないダンボール箱は、くたびれて薄汚れている。重そうだ。
うーん、失敗したな。
一人で持つのはちょっと……。
いや、ここでわざわざ向こうへ行って、
「すみません、冬馬さん。重すぎて持てませんでした」
なんて言ったら、それ見た事かというドヤ顔をされそうだ。
重たい物を持つと腰痛めそうだから嫌だし、冬馬さんに勝たれるのも嫌だ。
どうするか天秤に掛けていると、後方からガサゴソと音がする。
思わず飛び上がった。
背筋が凍る。
肝が一気に氷点下へダイブした。
ありとあらゆる毛が逆立つ。
嫌な予感が喉元を通って身体全体に広がった。
言っちゃ悪いが汚い倉庫。
私一人だけ。
誰かがこちらにやってくる。
音的に、Gではない。
その他の虫でもない。
ミシミシと枝を踏み締めて、誰かがやってくる。
落ち着け私。
きっと、雛子ファミリーの誰かだろう。
ここは居住地なんだ。普通の人なら、不法侵入なんていう罪を犯しはしない。
外から、荒い息遣いが聞こえてくる。
倉庫の扉は閉めている。
音が響いているのだ。
心臓付近が酷く痛い。
何度も何度も私を打ち付ける。
速くなり、私を焦らせる。
大丈夫だ。
落ち着け、私。
武器だ。
とりあえず、武器を手にしろ。
リモコンで消音ボタンを押したように、ゆっくり静かに近くにある棒を掴む。
さあ、かかってこい。
こちらはいつでもいいぞ。
準備万端だ。
ガチャガチャと扉に触れる。
不快な音を立てて開く。
全貌が見えてきた。
逆光を浴びて、よく見えない。
しかし、輪郭は掴めた。
私の知っている誰のものでもない。
「おりゃぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!」
乙女なんてとうに捨てた雄叫びをあげながら、私はやつに飛びかかった。
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