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気づき

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 まあまあ当たっている。

 違うのは、マテオが情報屋ではなく「噂屋」というくらい。


 こういうときにだけ都合の良い脳みそをしているオーティスが、たまに羨ましくなる。


 ――が。

「情報屋?」

 私はすっとぼけた。


「情報屋なんてやっているの? マテオは」

「まあね」

 マテオはにっこりと微笑む。

「我が家は結構貧乏でさ。公爵家と言えども、情報を売って生活しないとやっていけないんだよ」

「あらまあ……」


「何すっとぼけてるんだ!」

 オーティスは怒鳴った。

「お前たちが組んで俺たちを陥れたんだろう? このクソ女!」


「まあ、なんて下品な言葉遣いなんでしょう。婚約者として悲しいですわ」


 私はハンカチで目を押さえるふりをした。

「浮気された挙句おぞましい罪を背負った婚約者と婚約し続けなければならないというのに、こんな酷い言いがかりをつけられるだなんて」

「だから浮気していない!」

 オーティスは言った。


「カミラとはなんでもない! 遊びに行く時だってそうだっただろ!」

「遊びに行く時?」

「俺とカミラは2人きりで会ったことは一度もない! いつもお前と3人で――」


「うわ最低」

 女子生徒がヤジを飛ばした。

「キモいんだけど」

「デート中にカミラさんが間に入ったってこと?」

「婚約者を隠れ蓑にして浮気とか……」


 こそこそと話をするクラスメイトたちに、今度は弁明し始める。

「だから、俺たちは喜んで一緒に」


「喜んでいたのはあなただけでしょう?」

 私はハンカチで目を押さえたまま言った。

「明らかに鼻の下を伸ばして喜んでいらしたの……。私、何も言えなくて」


「ああ、可哀想に」

 マテオが私の肩に軽く腕を回した。

「婚約者である君の気持ちを踏みにじったんだね、彼は」


「エミリーに触るな!」

「自分のことを棚に上げて……。凄い精神だね。尊敬に値するよ」


 マテオは苦笑した。

「浮気している人間に言われるなんて、心外だなあ」

「だから浮気なんてしてないし、それがお前が――」

「僕はやってないよ。それに何か証拠があるの?」

「……っ。しょ、証拠がなくとも明らかにお前が」

「証拠がないんじゃあ、話し合う余地もないね」


 マテオが肩を竦めた。

「君たちはよほど僕たちに言いがかりをつけたいみたいだけどさ。まずは自分たちの行いを振り返ってみたらどうだい? その反応は、どう見ても自分たちの罪を肯定しているようにしか見えないけどな」


 彼は私に向かって視線を向ける。

「それじゃあ、またねエミリー」

「ええ、また。誘ってくれてありがとう」

「こちらこそ」


「待て、逃げるのか?」

「逃げるとかダサ」


 2人は捨て台詞を吐くが、マテオは、

「逃げてるのは一体どっちなんだろうね」

 と気にも留めず、その場を立ち去った。

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