上 下
4 / 5

多忙

しおりを挟む
 パーティでの妻の役割は、かなり大きい。


 私は夫であるジェフリーについて回りながら、色んな方に挨拶をする。

 
 相手側は全員、ジェフリーよりも身分が高い貴族たちだ。


 彼らは私たちと同じく妻を連れて歩いている。

 つまり、人が多ければ多いほど、その分私たちは気を遣わなければならない。


 この狭いコミュニティの中では、何よりも上下関係が重要視されているのだ。


 もし機嫌を損ねてしまえば、そこでジェフリーの出世の道は立たれてしまう。

 それに私も、もし重役の妻たちと良い関係を築けなければ、婦人のネットワークからはみ出し者扱いされてしまう。


 さらに、ジェフリーの直属の部下たちも、私たちに挨拶をしてくる。


 彼らの対応にも追われ、私たちはかなり忙しく動き回っていた。


「ねえ、大丈夫?」

 私は、顔色の悪いジェフリーに耳打ちした。

「顔色が悪いわ。どうしたの?」

「ちょっと」

 ジェフリーの額から、汗がにじみ出ている。

「お腹が痛くて……」


 ジェフリーはかなり繊細な人だ。

 こういうストレスがかかる場所にいると、よく体調を壊してしまう。


「まあ、大変」


 私はキョロキョロと周囲を見渡す。


 ある程度、挨拶回りは終わっていた。

 そろそろ雑談するグループも出来始めているので、少し休憩する時間はありそうだ。


「少し抜け出して休憩したらどう? 私はここに残って対応するわ」

「ああ、ごめん……。すぐに戻るから」


 青白い顔をした夫は、亡霊のようにスッと会場からいなくなった。


 いつも思うが、ジェフリーは大丈夫なのだろうか。

 田舎に引っ越すとかすれば、少しでも彼の負担が減るだろうけど。


 出世なんて気にしなくても良いのに。

 2人でいれば、多少貧乏でもうまくやっていけるのに。


 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

バイバイ、旦那様。【本編完結済】

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
妻シャノンが屋敷を出て行ったお話。 この作品はフィクションです。 作者独自の世界観です。ご了承ください。 7/31 お話の至らぬところを少し訂正させていただきました。 申し訳ありません。大筋に変更はありません。 8/1 追加話を公開させていただきます。 リクエストしてくださった皆様、ありがとうございます。 調子に乗って書いてしまいました。 この後もちょこちょこ追加話を公開予定です。 甘いです(個人比)。嫌いな方はお避け下さい。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

もういいです、離婚しましょう。

杉本凪咲
恋愛
愛する夫は、私ではない女性を抱いていた。 どうやら二人は半年前から関係を結んでいるらしい。 夫に愛想が尽きた私は離婚を告げる。

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。

ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」  はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。 「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」  ──ああ。そんな風に思われていたのか。  エリカは胸中で、そっと呟いた。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。 側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。 それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

処理中です...