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第3章
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私の作品を褒めてくれる人間が、また1人、また1人と増えていく。
一応は、彼らの主人の未来の妻である作者。
その私が書いた小説だから、多少は盛って褒めていると考えるにしても。
それでも、かなりの反響だった。
「うまいですね」
「さすがです、ユリ様」
「面白いですよ」
「プロみたいですね」
使用人たちは一様に私を褒め称え、私は嬉しくなる。
私はさらに調子に乗り、小説を書き進めた。
それをみんなが読み、感想をくれる。
しばらく、その循環が続いていた。
私は、すっかり小説家気分だった。
作品が注目され、褒められる。
身内の中だけど、それでも褒められるのは嬉しい。
私はすっかり、執筆活動にのめり込んでしまっていた。
そのことに目ざとく気づいたのは、我らがベアトリーチェ先生だった。
「最近、身に入っていないようね。勉強が」
彼女は授業中、上から目線でそう言った。
「うっ……」
確かにそうだ。
私は言い訳出来ず、言葉に詰まった。
「この家の使用人が話しているのを聞いたわ」
「な、何をでしょう……?」
「あなた今、何か書いているそうじゃない」
私は心の中で叫ぶ。
……なんで聞こえるところでその話してるのよぉ!?
「え、ええっと……。な、なんのことで――」
「私は誤魔化されないわよ」
ベアトリーチェは、キッと私を睨む。
「あなた、ノース将軍の婚約者のはずなのに、どうしてそれ相応に振舞わないわけ?」
「す、すみません……」
「その小説、見せてちょうだい」
「えっ」
彼女は私の机の引き出しから、強引にノートを奪い取る。
「読んでやるわ」
「ちょ、ちょっと!」
「その問題、解いておいてちょうだい。その間に、どんなレベルなのかきちんと判断してあげる」
私は泣きそうになった。
かつての光景がフラッシュバックする。
そんな私を意に介さず、ベアトリーチェはノートをペラペラと捲り始める。
「……ふーん」
「へえ」
「ほぉ……」
「ん?」
私はいたたまれなくなり、下を向く。
目の前で起こる事件を出来るだけ目に入れないように、出された問題を必死で解く。
気づけば、ベアトリーチェは真剣な顔でノートを一気読みしていた。
授業終わり、
「これ、しばらく借りるわ」
と、苦虫を噛みつぶしたような表情でそう言った彼女。
しばらくして、戻ってきたノートとともに手渡されたのは、1冊の文庫本だった。
「製本にしたから」
「えっ」
「一緒に組みましょう。そして、この本を庶民に売り捌きましょうよ」
一応は、彼らの主人の未来の妻である作者。
その私が書いた小説だから、多少は盛って褒めていると考えるにしても。
それでも、かなりの反響だった。
「うまいですね」
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「プロみたいですね」
使用人たちは一様に私を褒め称え、私は嬉しくなる。
私はさらに調子に乗り、小説を書き進めた。
それをみんなが読み、感想をくれる。
しばらく、その循環が続いていた。
私は、すっかり小説家気分だった。
作品が注目され、褒められる。
身内の中だけど、それでも褒められるのは嬉しい。
私はすっかり、執筆活動にのめり込んでしまっていた。
そのことに目ざとく気づいたのは、我らがベアトリーチェ先生だった。
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彼女は授業中、上から目線でそう言った。
「うっ……」
確かにそうだ。
私は言い訳出来ず、言葉に詰まった。
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「な、何をでしょう……?」
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私は心の中で叫ぶ。
……なんで聞こえるところでその話してるのよぉ!?
「え、ええっと……。な、なんのことで――」
「私は誤魔化されないわよ」
ベアトリーチェは、キッと私を睨む。
「あなた、ノース将軍の婚約者のはずなのに、どうしてそれ相応に振舞わないわけ?」
「す、すみません……」
「その小説、見せてちょうだい」
「えっ」
彼女は私の机の引き出しから、強引にノートを奪い取る。
「読んでやるわ」
「ちょ、ちょっと!」
「その問題、解いておいてちょうだい。その間に、どんなレベルなのかきちんと判断してあげる」
私は泣きそうになった。
かつての光景がフラッシュバックする。
そんな私を意に介さず、ベアトリーチェはノートをペラペラと捲り始める。
「……ふーん」
「へえ」
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「ん?」
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と、苦虫を噛みつぶしたような表情でそう言った彼女。
しばらくして、戻ってきたノートとともに手渡されたのは、1冊の文庫本だった。
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「一緒に組みましょう。そして、この本を庶民に売り捌きましょうよ」
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