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序章
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先ほどまで黙って事の顛末を見守っていた村長が代表して、ロイにお願いする。
「……と言うことだ。申し訳ないが、この村から出て行ってくれないか? アルの恩人だということは百も承知だ。だが、この村の人間に害を成す者であれば、俺は決断しなければならない」
「……わかった」
ロイは小さな声でそう言った。
思っていたよりも素直な態度だと、私は意外に思った。
彼からすれば、この村の行動は、理不尽極まりないものだろう。
村人を助け、わざわざ高くて希少な薬まで分け与えた。
そのお礼をと、祭りに招待され、村人たちと仲良くやっていた。
それなのに、突然現れた謎の老女から「占い」なる非科学的なもので罵られ、それに感化された村人たちから、一気に掌返しを受ける。
彼の立場からすれば、多少なりとも文句を言う権利はあるだろうに。
彼は何も言わず、大人しく村長のお願いを聞き入れた。
彼は自分の荷物を持ち、黙ってその場から立ち去る。
彼を避けようと、村人たちが後ろに引き下がっていく。
「あっ」
私は不意に声を出した。
「ロイさん、ちょっと待ってください」
ロイは立ち止まる。
「エレア? あなた、何を言ってるの?」
レナが、不思議そうな顔を私に向けた。
これじゃあ、余りにも可哀想だ。
アルさんを助けてくれたのに。
私だって、カルラさんの占いを信じていないわけじゃない。
だけど、せめても彼に、何かしなきゃいけない。
私はそんな罪悪感で、彼を呼び止めたのだ。
「村の外まで、送ります」
「何を言っているんだ?」
村長が私を止めようとする。
「占いでは、お前が攫われるとあったんだぞ?」
「私1人だけじゃなくて、見張りをつけていれば大丈夫よ」
私は反論する。
「せっかく村の人を助けてくれた恩人に、こんな冷たい態度を取ったんだもの。せめて、送ってあげるくらいはしても良いでしょ?」
「……と言うことだ。申し訳ないが、この村から出て行ってくれないか? アルの恩人だということは百も承知だ。だが、この村の人間に害を成す者であれば、俺は決断しなければならない」
「……わかった」
ロイは小さな声でそう言った。
思っていたよりも素直な態度だと、私は意外に思った。
彼からすれば、この村の行動は、理不尽極まりないものだろう。
村人を助け、わざわざ高くて希少な薬まで分け与えた。
そのお礼をと、祭りに招待され、村人たちと仲良くやっていた。
それなのに、突然現れた謎の老女から「占い」なる非科学的なもので罵られ、それに感化された村人たちから、一気に掌返しを受ける。
彼の立場からすれば、多少なりとも文句を言う権利はあるだろうに。
彼は何も言わず、大人しく村長のお願いを聞き入れた。
彼は自分の荷物を持ち、黙ってその場から立ち去る。
彼を避けようと、村人たちが後ろに引き下がっていく。
「あっ」
私は不意に声を出した。
「ロイさん、ちょっと待ってください」
ロイは立ち止まる。
「エレア? あなた、何を言ってるの?」
レナが、不思議そうな顔を私に向けた。
これじゃあ、余りにも可哀想だ。
アルさんを助けてくれたのに。
私だって、カルラさんの占いを信じていないわけじゃない。
だけど、せめても彼に、何かしなきゃいけない。
私はそんな罪悪感で、彼を呼び止めたのだ。
「村の外まで、送ります」
「何を言っているんだ?」
村長が私を止めようとする。
「占いでは、お前が攫われるとあったんだぞ?」
「私1人だけじゃなくて、見張りをつけていれば大丈夫よ」
私は反論する。
「せっかく村の人を助けてくれた恩人に、こんな冷たい態度を取ったんだもの。せめて、送ってあげるくらいはしても良いでしょ?」
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