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序章
名前
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私は旅人を連れて屋敷を出る。
その間、ずっと脳内で計算していた。
一体どこを案内しようか。
あれだと、倉庫の整理が終わるまでに結構時間がかかりそうだ。
変に長引いてもあれだが、早すぎてもどうかと思う。
「君」
旅人は、考え事をしている私に話しかけてきた。
「君の名前は、エレアというのか?」
「ええ、はい」
私は頷く。
「エレアか、そうか……」
何か言いたいことがあるような顔をする旅人。
「旅人さん、どうかされましたか? 私の名前が」
「いや、なんでもない」
彼はそれっきり何も言わない。
しばし、気まずい沈黙が流れる。
ずっと「旅人」呼ばわりするわけにもいかず、私は名前を尋ねた。
「旅人さんのお名前は?」
「俺は、ロイ……だ」
言いにくそうに自分の名前を口にする。
私はなんとなく、それが偽名ではないのかと感じた。
だが、旅人が身の安全のために偽名を使うのはよくあることだ。
今ここで、その話をしても仕方がない。
「ロイさん?」
私は、彼を「ロイさん」と呼ぶことにした。
「……ああ」
「じゃあロイさん。改めまして、昨日はアルさんを救ってくれてありがとうございます」
「いや、気にするな。たまたま通りかかっただけだ」
「それでも、大事な村人を救ってくれて嬉しいです――それでは、小さな村ですが案内しますね。明日のお祭りにも、ぜひ参加してください」
私はロイの腕を掴み、村の中を歩き始めた。
その間、ずっと脳内で計算していた。
一体どこを案内しようか。
あれだと、倉庫の整理が終わるまでに結構時間がかかりそうだ。
変に長引いてもあれだが、早すぎてもどうかと思う。
「君」
旅人は、考え事をしている私に話しかけてきた。
「君の名前は、エレアというのか?」
「ええ、はい」
私は頷く。
「エレアか、そうか……」
何か言いたいことがあるような顔をする旅人。
「旅人さん、どうかされましたか? 私の名前が」
「いや、なんでもない」
彼はそれっきり何も言わない。
しばし、気まずい沈黙が流れる。
ずっと「旅人」呼ばわりするわけにもいかず、私は名前を尋ねた。
「旅人さんのお名前は?」
「俺は、ロイ……だ」
言いにくそうに自分の名前を口にする。
私はなんとなく、それが偽名ではないのかと感じた。
だが、旅人が身の安全のために偽名を使うのはよくあることだ。
今ここで、その話をしても仕方がない。
「ロイさん?」
私は、彼を「ロイさん」と呼ぶことにした。
「……ああ」
「じゃあロイさん。改めまして、昨日はアルさんを救ってくれてありがとうございます」
「いや、気にするな。たまたま通りかかっただけだ」
「それでも、大事な村人を救ってくれて嬉しいです――それでは、小さな村ですが案内しますね。明日のお祭りにも、ぜひ参加してください」
私はロイの腕を掴み、村の中を歩き始めた。
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