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誤算② ~ユーリ視点~
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さらに誤算だったのは、あの女の性格が最悪だったこと。
俺たちの中だけで完結すべきだという暗黙の了解を無視し、ウェンディは俺の両親に告げ口をした。
その日、家に帰ってきた俺を待っていたのは、父親の往復ビンタだった。
「……この馬鹿もんが!」
尋常じゃないほどブチギレている父親。
「本当、あんたって最低ね。自分の息子とは思いたくないわ」
冷たく言い放つ母親。
その2人の態度を見て、俺はウェンディが両親にチクったことを悟った。
「違うんだ」
俺は痛む頬を押さえながら言う。
「ウェンディの言っていることは、嘘だ。あいつは嘘をついてる」
「嘘だって!?」
2人はさらに怒った。
「これを見ても、そう思うのか!?」
投げつけるようにして父親が取り出したのは、1枚の写真だった。
「……えっ」
そこに写った自分たちの姿を見て、俺は血の気が引く。
それは、俺とヒメナがカメラ越しに見せつけるようにして撮った、キスの写真だった。
なんで。
なんでこれを、ウェンディが。
「この写真を撮ってもなお、お前が浮気をしていないと言い張るのか?」
「いや、これは、その……。そうじゃなくて。ウェンディには既に、恋愛をするって許可を」
だから、それは浮気していることにはならないと、俺は両親に訴えかける。
「浮気したことにならないですって?」
だが、両親は俺の説明を全く意に介そうとはしない。
「じゃあ、一体いつ、ウェンディにその許可を貰ったの?」
「……一昨日」
「その写真を撮ったのは?」
「き、昨日だよ」
「嘘をつくな!」
父が怒鳴る。
「この写真の端にある数字を見ろ! どこが昨日だ!?」
俺は慌てて写真を確認する。
父の言う通り、端に書かれた数字は、昨日ではない。
数週間前だ。
「この場に及んで嘘をつき続けるとは、情けない。恥を知れ!」
父親の叫び声とともに、ドンッと右目に鈍い衝撃が走った。
俺たちの中だけで完結すべきだという暗黙の了解を無視し、ウェンディは俺の両親に告げ口をした。
その日、家に帰ってきた俺を待っていたのは、父親の往復ビンタだった。
「……この馬鹿もんが!」
尋常じゃないほどブチギレている父親。
「本当、あんたって最低ね。自分の息子とは思いたくないわ」
冷たく言い放つ母親。
その2人の態度を見て、俺はウェンディが両親にチクったことを悟った。
「違うんだ」
俺は痛む頬を押さえながら言う。
「ウェンディの言っていることは、嘘だ。あいつは嘘をついてる」
「嘘だって!?」
2人はさらに怒った。
「これを見ても、そう思うのか!?」
投げつけるようにして父親が取り出したのは、1枚の写真だった。
「……えっ」
そこに写った自分たちの姿を見て、俺は血の気が引く。
それは、俺とヒメナがカメラ越しに見せつけるようにして撮った、キスの写真だった。
なんで。
なんでこれを、ウェンディが。
「この写真を撮ってもなお、お前が浮気をしていないと言い張るのか?」
「いや、これは、その……。そうじゃなくて。ウェンディには既に、恋愛をするって許可を」
だから、それは浮気していることにはならないと、俺は両親に訴えかける。
「浮気したことにならないですって?」
だが、両親は俺の説明を全く意に介そうとはしない。
「じゃあ、一体いつ、ウェンディにその許可を貰ったの?」
「……一昨日」
「その写真を撮ったのは?」
「き、昨日だよ」
「嘘をつくな!」
父が怒鳴る。
「この写真の端にある数字を見ろ! どこが昨日だ!?」
俺は慌てて写真を確認する。
父の言う通り、端に書かれた数字は、昨日ではない。
数週間前だ。
「この場に及んで嘘をつき続けるとは、情けない。恥を知れ!」
父親の叫び声とともに、ドンッと右目に鈍い衝撃が走った。
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