【完結】恋がしたい？ どうぞご勝手に

誤算① ～ユーリ視点～

　ウェンディに言えば、問題ない。


「恋がしたい」

　そう言って彼女から許可を貰えば、俺とヒメナが何をしようが、ウェンディも周りも、俺を咎めることはしない。


　そんな完璧な計画を立てた俺は、早速ウェンディにそう告げた。


　彼女は少し戸惑った様子だったが、

「どうしても恋がしたい。一種の経験として」

　俺が説得すると、最後には、

「わかったわ」

　と、言ってくれた。


　それで良かった。

　それで全部終わったはずだった。


　――しかし。


　俺は勘違いしていた。

　というか、長い年月一緒に過ごした彼女のことを、誤解していたらしい。


　彼女は、俺が思っていたよりも遥かに面倒な女だった。


　ウェンディに許可を貰って早速、俺とヒメナが恋人らしくイチャイチャしていると、それを見たウェンディがブチ切れてきたのだ。


　彼女がそこまで、自己中で嫉妬深い人間だとは思っていなかった。


　あのとき彼女の隣には、なぜか青白い顔のトニーと、ウェンディと同じく怒り狂った様子のマーサがいた。


　マーサはともかく、トニーが何か適当なことをウェンディに言ったのかもしれない。


　しかし、彼らはどうでも良い。


　問題はウェンディだ。


　彼女は、

「ユーリ、あんた浮気してたのね！」

「昨日の今日なんて、さすがに早すぎるわよ」

　と、俺を怒鳴りつけた。


　しかし、いくら彼女が怒鳴り散らそうが、結果は何も変わらない。


　俺がウェンディにお願いをした後、俺とヒメナはキスをした。

　それだけだ。


　つまり、その前後に俺とヒメナの関係があったかどうかなど、最たる問題ではない。


　なぜなら、彼女は俺とヒメナの関係に気づきさえしなかったからだ。