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トニー
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その日、私はマーサの屋敷を訪れ、作戦会議をすることにした。
帰り際にたまたまユーリの友人であるトニーを発見し、2人で彼を制止する。
彼は、ユーリとヒメナのキスシーンを目撃したあの日、私たちと一緒にいた男子生徒だ。
「久しぶりね、トニー」
私は小柄な彼の肩を掴んで言った。
「元気にしてた?」
可哀想なトニーは、私たちの姿に気づいたとたん、顔を青白くさせた。
「……や、やあ」
「久しぶりね」
マーサは張りついた笑みを浮かべて、トニーの前に立ち塞がる。
彼女は背が高く、トニーは背が低い。
自身を見下ろしてくるマーサの威圧感に、トニーは恐怖した。
「トニーは元気?」
「あ、ああ……。うん」
トニーは曖昧に返事をする。
「き、君たちは?」
「私たちは元気よ。とってもね」
「へ、へえ……。そうなんだ。そ、それは良かったよ」
それじゃあ、と私たちを押しのけて帰ろうとするトニーの腕をがっしりと掴む。
「ご、ごめん。僕今日忙しくて……」
「心配しなくても大丈夫よ。私たちも今日は忙しいの」
私はにこやかに微笑む。
「今日僕病院に行かなきゃいけ」
「1つだけ聞きたいことがあるのよ」
と、マーサ。
「ユーリのことなんだけど」
彼の名前を出した途端、トニーは私たちを突き飛ばして駆け出した。
「きゃあ!」
「痛っ!」
私たちはそれぞれ悲鳴をあげ、しりもちをつく。
「何すんのよ!」
マーサはトニーの背中側に向かって怒鳴りつけた。
しかしトニーはなんの返事もせず、私たちを無視してダッシュする。
すぐに彼の姿は見えなくなった。
一部始終を見ていた生徒たちがざわつく。
「あいつ、トニーだっけ?」
「クソじゃん」
「最低」
「女の子を突き飛ばすなんて」
「ねえ、大丈夫?」
私たちは知り合いの生徒たちに助け起こされ、立ち上がる。
「怪我してない?」
「ええ、大丈夫……。ありがとう」
私は痛む腰に手を当て、身体を伸ばす。
「人を突き飛ばすなんて、最低ね」
「確かあいつ、トニーだっけ?」
「ええ」
マーサは頷く。
「トニーよ」
「トニーって確かユーリの」
「そう。友達」
彼らは顔を歪めた。
「やっぱり類は友を呼ぶんだな」
「ヤバいやつの友達は、同じくヤバいやつってことか」
まあ、間違いではない。
帰り際にたまたまユーリの友人であるトニーを発見し、2人で彼を制止する。
彼は、ユーリとヒメナのキスシーンを目撃したあの日、私たちと一緒にいた男子生徒だ。
「久しぶりね、トニー」
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「元気にしてた?」
可哀想なトニーは、私たちの姿に気づいたとたん、顔を青白くさせた。
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マーサは張りついた笑みを浮かべて、トニーの前に立ち塞がる。
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自身を見下ろしてくるマーサの威圧感に、トニーは恐怖した。
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「今日僕病院に行かなきゃいけ」
「1つだけ聞きたいことがあるのよ」
と、マーサ。
「ユーリのことなんだけど」
彼の名前を出した途端、トニーは私たちを突き飛ばして駆け出した。
「きゃあ!」
「痛っ!」
私たちはそれぞれ悲鳴をあげ、しりもちをつく。
「何すんのよ!」
マーサはトニーの背中側に向かって怒鳴りつけた。
しかしトニーはなんの返事もせず、私たちを無視してダッシュする。
すぐに彼の姿は見えなくなった。
一部始終を見ていた生徒たちがざわつく。
「あいつ、トニーだっけ?」
「クソじゃん」
「最低」
「女の子を突き飛ばすなんて」
「ねえ、大丈夫?」
私たちは知り合いの生徒たちに助け起こされ、立ち上がる。
「怪我してない?」
「ええ、大丈夫……。ありがとう」
私は痛む腰に手を当て、身体を伸ばす。
「人を突き飛ばすなんて、最低ね」
「確かあいつ、トニーだっけ?」
「ええ」
マーサは頷く。
「トニーよ」
「トニーって確かユーリの」
「そう。友達」
彼らは顔を歪めた。
「やっぱり類は友を呼ぶんだな」
「ヤバいやつの友達は、同じくヤバいやつってことか」
まあ、間違いではない。
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