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話②
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「あのねぇ。そもそも、この件は許すとか許さないとかじゃないのよ」
私はユーリに向かって言う。
「もう、終わった話なの。わかる?」
「終わったって……」
「だってそうでしょ? 私とあんたは婚約破棄した。それで終わり。私たちの間には、もう何もないの」
「そんなこと言うなよ」
ユーリは苦笑する。
「君はちょっといじけているだけだ。いじけて、それでずっと強情なんだ。あの日からそのままなんだ」
「あんたがヒメナとキスをしているのを目撃してから?」
「そ、それは……」
こいつがあえて誤魔化していた部分を、丁寧に補足した。
きまり悪くなった彼は、私から視線を外して下を向く。
「あのね。私は残念ながらいじけてもないし、強情でもない」
「なら、さっさと」
「仲直り? 馬鹿なの? 仲直りする土台がもう私たちにはないのよ」
「いや、あるだろ? まだ残ってる。残ってるはずだ。俺たちは幼馴染だ」
「幼馴染だろうがなんだろうが、婚約を破棄した時点でもう私たちの間には何もないの。あんたが私を裏切った時点で、私たちの関係は終わった。幼馴染でも友人でも婚約者でもない。ただの他人よ」
「ちょっと待て。俺は君を裏切ったりはしてない」
「じゃああのキスは何? なんなの? どういうつもりなの?」
「あれは」
ユーリは顔を歪ませる。
「言ったろ? 俺は恋がしたいって。だから俺はヒメナと」
「だから、あんたのは浮気なのよ。あんたは私にそういう前に、ヒメナとはもう不適切な関係だったのよ」
「違う。誤解だ。それに、そんな証拠はない」
「あるっつってんでしょ! あんたも見たでしょ、あのコス写真」
私は部屋から持ち出した小さな箱を開け、ユーリに見せつける。
「これはパトリックがくれた写真よ。私があんたにああ言われる前に撮られたね」
「だから、合成だって」
「合成だと思うなら、その合成だっていう証拠を見せなさいよ。そうじゃなきゃ、あんたのはただの言い逃れよ!」
私はテーブルに、写真を叩きつけた。
「それに何よ!
『ウェンディとヒメナは仲良く出来るはずだ』
ですって!? 狂ってんじゃないの、あんた!」
「だって、そうだろ!」
ユーリも叫ぶ。
「君も彼女も、俺のことが好きなんだ!」
「……は?」
こいつ、本当に何を言っているんだ。
私は開いた口が塞がらない。
「俺を好きな君たちなら、きっと仲良く出来る。そうだろ? そうに決まってる」
……こいつ。
ヤバい。
本当に頭おかしい。
私はユーリに向かって言う。
「もう、終わった話なの。わかる?」
「終わったって……」
「だってそうでしょ? 私とあんたは婚約破棄した。それで終わり。私たちの間には、もう何もないの」
「そんなこと言うなよ」
ユーリは苦笑する。
「君はちょっといじけているだけだ。いじけて、それでずっと強情なんだ。あの日からそのままなんだ」
「あんたがヒメナとキスをしているのを目撃してから?」
「そ、それは……」
こいつがあえて誤魔化していた部分を、丁寧に補足した。
きまり悪くなった彼は、私から視線を外して下を向く。
「あのね。私は残念ながらいじけてもないし、強情でもない」
「なら、さっさと」
「仲直り? 馬鹿なの? 仲直りする土台がもう私たちにはないのよ」
「いや、あるだろ? まだ残ってる。残ってるはずだ。俺たちは幼馴染だ」
「幼馴染だろうがなんだろうが、婚約を破棄した時点でもう私たちの間には何もないの。あんたが私を裏切った時点で、私たちの関係は終わった。幼馴染でも友人でも婚約者でもない。ただの他人よ」
「ちょっと待て。俺は君を裏切ったりはしてない」
「じゃああのキスは何? なんなの? どういうつもりなの?」
「あれは」
ユーリは顔を歪ませる。
「言ったろ? 俺は恋がしたいって。だから俺はヒメナと」
「だから、あんたのは浮気なのよ。あんたは私にそういう前に、ヒメナとはもう不適切な関係だったのよ」
「違う。誤解だ。それに、そんな証拠はない」
「あるっつってんでしょ! あんたも見たでしょ、あのコス写真」
私は部屋から持ち出した小さな箱を開け、ユーリに見せつける。
「これはパトリックがくれた写真よ。私があんたにああ言われる前に撮られたね」
「だから、合成だって」
「合成だと思うなら、その合成だっていう証拠を見せなさいよ。そうじゃなきゃ、あんたのはただの言い逃れよ!」
私はテーブルに、写真を叩きつけた。
「それに何よ!
『ウェンディとヒメナは仲良く出来るはずだ』
ですって!? 狂ってんじゃないの、あんた!」
「だって、そうだろ!」
ユーリも叫ぶ。
「君も彼女も、俺のことが好きなんだ!」
「……は?」
こいつ、本当に何を言っているんだ。
私は開いた口が塞がらない。
「俺を好きな君たちなら、きっと仲良く出来る。そうだろ? そうに決まってる」
……こいつ。
ヤバい。
本当に頭おかしい。
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