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意味不明な主張

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 私は彼らに向かって叫んだ。


「ユーリ! あんた何してんの!」

「こら、馬鹿っ」

 マーサは私の頭を軽く叩くが、もう遅い。


 私の怒鳴り声はしっかり中庭の方まで届いたらしく、彼らは私の姿を認めて目を見開いた。


「な、何してんの……?」

 と、ユーリ。


「それはこっちのセリフよ! ユーリ、あんた浮気してたのね! ここにいるトニーから聞いたわよ」

「ちょ、ちょっと!」


 トニーが慌てて私の口を塞ぐ。

「僕が見てたの、バレるじゃないか!」

「もう遅いわよ」

「あっ」


 ユーリと目が合ったのだろう、トニーの顔が青白くなった。


「トニー……」


 ユーリはため息をついた。

「ウェンディに言ったのか?」

「言ってない、てか知らない!」


 トニーはそう言って、どこかへ走り去ってしまった。


 私たちは唖然として、彼の背中を見送る。

「情けな」

 マーサは小さな声で言った。


「で、話を戻して」
 

 私はユーリに向き直る。

「何してんの?」

「何してんのって、見ただろ。その通りだ」

「だから、それを答えろつってんのよ」

「キスしてたんだよ、彼女と」

 ユーリは、隣にいたヒメナを抱き寄せて答えた。


「昨日の今日よね?」

「だから何?」


 ユーリは、あの優しかったユーリは一体どこへ消えたのだろうか。


 彼は鬱陶しいと言いたげな顔で、私を睨みつけた。


「だからって、さすがに早すぎるわよ」


 私は、自分の声が震えていることに驚く。

「だから? でも時系列的にはなんの問題もないよね? だって、俺が君に恋がしたいから距離を置かせてくれと言ったの、数日前のことだろ」

「で、でも」

 私は反論する。


「トニーが言ってたわよ。あなたたち、数ヶ月前から怪しかったって」

「だから?」

「だからって何よ」

「だからなんなんだよ。それ、証拠でもあるの?」

「は?」

「俺とヒメナがデキてたって証拠、どこにあんの?」

「……」


 私は絶句する。


「あのさあ、俺は一応、ウェンディに許可を取ったよね。で、ウェンディはそれを了承したわけだ。だからこうやって俺は、ウェンディの許可の元でヒメナとキスをした」


 何を言っているんだろう、この子は。


 私は彼の言うことをほとんど理解出来なかった。


 この子本当に、ずっと私と一緒にいたユーリなの?

 本当にユーリ?


 私が何も言わないのを見て、それを了解と取ったのか、ユーリはさらに続けた。


「もちろん心配しなくても、君とはちゃんと結婚するよ。そういう約束だしね。君は俺の一番の理解者だし、君といるのは都合が良いんだ」

「ゴミじゃん……」

 マーサが、ユーリに向かって言う。


 ユーリはマーサに微笑むと、さらに続ける。


「ウェンディ、君は俺を責めるけれど。君だってもちろん自由にして良いんだ。君が誰と付き合おうが何をしようが、俺は何も言わないし、興味ないーーじゃ、話済んだから俺帰る。行こう、ヒメナ」


 ユーリはヒメナの手を取り、中庭から出て行く。


 ヒメナは最後まで、言葉を発することはなかった。
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