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学校

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「―――――――――は?」


 私の話を聞いた友人のマーサは、その大きな目をさらに見開いた。


「恋がしたい?」

「そうらしいわ」

 私は答えた。


 放課後。

 普段ならいつも一緒にいるはずの私とユーリがバラバラな行動を取っていることに疑問を抱いたマーサは、私に尋ねてきたのだ。

「喧嘩したの?」

 と。


 私が数日前に起こった出来事を話すと、マーサは驚いて固まってしまい、今に至るというわけだ。


「恋って、具体的には?」


 彼女は、先日の私と似たような質問をした。

「よくわかんないの。最近流行っている恋愛小説の話をしていたけど」

「ああ」

 マーサは目を細めて言った。


「王道系ね」

「王道?」

「そう。身分の低い貴族の少女が主人公なんだけどね」


 彼女は具体的なストーリーの説明に取り掛かる。

 そういえば、彼女はあの本を書いた作者の大ファンだった。


「その主人公がある日身分違いの恋をするの。その相手は王子様で、彼も主人公のことが好きなんだけど。実は王子には婚約者がいて――というストーリーよ」

「へぇ」


 熱っぽく語るマーサには悪いが、私はちっとも興味をそそられなかった。


「でも、それって妄想だよね」

「そう、妄想で理想。だからみんな好きなのよ」

「全然わかんないわ」

 この現実主義者め、と軽く小突かれた。


「いてっ」

「まあでも、あのユーリ公爵子息が恋愛? 意外ね」


 あなたと同じく現実的なものの見方をする人だと思っていたわ、と彼女は呟く。

「そうなのよね。でも、まあ別にいいんじゃないと思って」

「良いんだ」


 マーサは驚いた表情を浮かべた。

「だってそれ、浮気したいって婚約者のあなたに向かって高らかに宣言したってことよね?」

「そうは言っていないと思うけどな」

 私は反論する。


「ただの願望なんじゃない?」

「懐広いわね」

「だって私、彼の婚約者で幼馴染なんだもの。一番の理解者でいたいわ」

「へぇ。あなたたち2人、変わっているわね。まあ、本人が良いなら別に問題はないんだろうけど――それで、今日はどうするの?」

「今日?」

「ええ。せっかく放課後暇になったんだし。久しぶりに町へ出て遊びに行かない? 最近出来たクレープ屋さんが気になってて」

「良いわね。私も行きたいわ」


 私は甘いものが大好物だ。


 すぐさま机の上を片付け、鞄に突っ込む。


「行きましょう」

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