好きだから虐めてしまったなんて言われても、今更すぎて困るんですけど

 公爵令嬢ルーティアの長年の悩みは、婚約者である公爵子息のセオドアだった。


 大人しくて本好きの、いわゆる「地味」なルーティアと、ガキ大将のセオドア。

 ルーティアは小さい頃から彼に虐められていた。


 大切にしていた本を破り捨てられたり、髪の毛を掴まれたり。

「地味女!」

「ブス!」

 などという暴言はもはや日常。


 文句も言えずただなくだけのルーティアを見て、調子に乗ったセオドアとその仲間たちは散々彼女を虐め続けた。


 そうしてルーティアの性格は暗くなり、学園にも通わずに自室でずっと本ばかり読んでいる。

 それとは対照的にセオドアは、学園で華々しい人生を送っていた。


 なぜこうも人生が食い違ったのか。

 加害者であるはずのセオドアが幸せそうなのに、自分は学園に通うことさえ出来ていない。

 そんなモヤモヤを抱えていたルーティアは、ある日送られてきたセオドアの手紙でとうとうぶちギレる。


「今までごめん。本当は君のことが好きで、でもどうすれば良いかわからなかったんだ。やり直させてほしい。それと、一度でも良いから学園に来てほしいんだ。みんな待ってるからさ」

「………………は?」


 好きだった?

 だから虐めたですって?


 ……何よ今更。

 こっちはあんたのせいで人生めちゃくちゃにされたんですけど!


 堪忍袋の緒が切れた彼女は、その手紙をセオドアに突き返した。


「婚約破棄するわ! もう二度と私に関わらないで!」
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