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きっかけ①

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 私は夥しい量の請求書を見て、今日もため息をついた。


 使用人からいつものように、

「お嬢様宛です」

 と、渡された手紙たち。


 その全ては、婚約者である第二王子のブラッド殿下が引き起こした騒動の慰謝料だ。


 いつものように、そのすべての請求書を暖炉の中に投げ込み、燃やし尽くしてしまいたくなる衝動に襲われる。


 しかしそんなことをすれば当然、すべての責任は私に行く。

 ただでさえ、貴族たちから私は「第二王子の尻拭い係」として勝手に任命されているのに。


 これ以上問題を起こせば、私の命1つでは済まなくなるだろう。


 私はそれを1つ1つ確認していく。


 手紙たちは私に向かって、私になんの遠慮もない悪意や怒りを吐いていく。


 初めてこういう手紙を読んだとき、私はショックだった。

 私はこんなに人に嫌われているんだと思って、1日寝込んだ。


 だけど今はもう、なんとも思わない。


 ただの情報として、脳がそれを処理していく。


 それは私にとって良い傾向なのか、それとも心を蝕まれた結果という悪い産物か。


 その手紙を読みながら、今回殿下がやらかした事件を推察する。


 どうやらブラッド殿下は、辺境伯の領地で自分たちの仲間と散々暴れ回った挙句、農産物を駄目にしてしまったらしい。

 あの人の考えていることはよくわからないが、恐らく、

「せっかくだから、この俺が直々に田舎者に会いに行ってやろう」

 と、クラスメイトの実家を訪問し、散々人を馬鹿にしたり罵ったりした挙句、畑をめちゃくちゃにしたのだろう。


 手紙には、その事件によって起こった精神的苦痛の慰謝料と、農産物の弁償代を支払ってくれと書かれている。


 私はもう一度、深くため息をついた。


 誰か私に、ブラッド殿下から受けた精神的苦痛を慰めるための慰謝料をくれないだろうか。


 
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