上 下
4 / 6
第1章

パーティ

しおりを挟む
 ――話を戻して。


 私とマリナは、王妃主催のパーティ会場に足を運んだ。


 相変わらず、豪奢なパーティだ。

 
 城の大広間には大きなシャンデリア。

 端には細長いテーブルが並ぶ、ビュッフェ形式。

 あの料理たちは、この国で有名なシェフをわざわざ呼びつけて作らせている。


 何よりも凄いのは、パーティに参加する人々の服装だった。

 いくつもの宝石が使われたアクセサリーに、今夜のパーティのためにこさえられたドレス。


 あの辺を買うとなると、庶民の一生分の賃金でも足りない。


 それを彼ら貴族は、1日だけのために平気で買うのだ。


「お久しぶりですね、アリエッタ嬢」

 ぼんやりしていると、ふと誰かに声をかけられる。

「あっ、すみません……。お久しぶりですわ、ライリー第二王子殿下」


 私は慌ててお辞儀をする。


「いつも婚約者と仲良くしてくれてありがとう」

「いえいえ、そんな。お世話になっているのは、いつも私の方ですので」


 美しいブロンド髪の貴公子は、ふんわりと微笑んだ。


 彼は、ライリー殿下。

 私の婚約者である第一王子の弟で、友人のマリナの婚約者でもある。


 未来の義理の弟になる人だ。


「ライリー様、ごきげんよう」

「ごきげんよう、マリナ――今日の君も凄く素敵だね。そのドレス、似合っているよ」


 彼は見た目にそぐわず、大変麗しい紳士で、マリナは彼にぞっこんだった。

 彼もマリナをよく思っているみたいで、2人は本当にお似合いのカップルである。


 正直、羨ましい。


「そう言えば、アリエッタ嬢。今日は珍しいね。王妃のパーティに来るなんて」

「ああ……。それが、王妃様と第一王子殿下に直接来てくれとお願いされまして」

「へえ」


 ライリー殿下は少し目を丸くする。


「あの2人が」

「はい」


 確かに、少し不思議ではある。


 あの2人はとても派手好きで、反対に私は質素な方を好んでいる。

 それを汲んでくれているのか、普段はパーティに誘われることはなく、なぜ急にそんなことを言われたのか気になってはいた。


「それなのに、兄上の姿が見えませんが……」

「ええ。何か用事があるとかで」


 普通、婚約者のいる女性はその相手と一緒に行事に参加することが多い。


 だが、今日の第一王子殿下はかなり忙しいらしく、

「すまないが、今日は1人で出てくれ」

 と、言われてしまった。


「誘っておいて女性を1人にするとは……。兄上が大変失礼いたしました」

「いえいえ、お気になさらないでくださいませ」


 そのくらい、どうってことない。

 未来の王の婚約者としての覚悟はきちんと出来ているから。

 
 少し寂しさもあるが、殿下の忙しさに理解はあるつもりだ。


「皆様方、大変お待たせいたしました」

 上の方で、今日の司会者が私たち参加者に声をかけた。


「それではただいまより、王妃陛下主催のパーティを開催いたします!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

ヤンデレ王子とだけは結婚したくない

小倉みち
恋愛
 公爵令嬢ハリエットは、5歳のある日、未来の婚約者だと紹介された少年を見てすべてを思い出し、気づいてしまった。  前世で好きだった乙女ゲームのキャラクター、しかも悪役令嬢ハリエットに転生してしまったことに。  そのゲームの隠し攻略対象である第一王子の婚約者として選ばれた彼女は、社交界の華と呼ばれる自分よりもぽっと出の庶民である主人公がちやほやされるのが気に食わず、徹底的に虐めるという凄まじい性格をした少女であるが。  彼女は、第一王子の歪んだ性格の形成者でもあった。  幼いころから高飛車で苛烈な性格だったハリエットは、大人しい少年であった第一王子に繰り返し虐めを行う。  そのせいで自分の殻に閉じこもってしまった彼は、自分を唯一愛してくれると信じてやまない主人公に対し、恐ろしいほどのヤンデレ属性を発揮する。  彼ルートに入れば、第一王子は自分を狂わせた女、悪役令嬢ハリエットを自らの手で始末するのだったが――。  それは嫌だ。  死にたくない。  ということで、ストーリーに反して彼に優しくし始めるハリエット。  王子とはうまいこと良い関係を結びつつ、将来のために結婚しない方向性で――。  そんなことを考えていた彼女は、第一王子のヤンデレ属性が自分の方を向き始めていることに、全く気づいていなかった。

新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜

秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。 宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。 だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!? ※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

執事が〇〇だなんて聞いてない!

一花八華
恋愛
テンプレ悪役令嬢であるセリーナは、乙女ゲームの舞台から穏便に退場する為、処女を散らそうと決意する。そのお相手に選んだのは能面執事のクラウスで…… ちょっとお馬鹿なお嬢様が、色気だだ漏れな狼執事や、ヤンデレなお義兄様に迫られあわあわするお話。 ※ギャグとシリアスとホラーの混じったラブコメです。寸止め。生殺し。 完結感謝。後日続編投稿予定です。 ※ちょっとえっちな表現を含みますので、苦手な方はお気をつけ下さい。 表紙は、綾切なお先生にいただきました!

【完結】帰れると聞いたのに……

ウミ
恋愛
 聖女の役割が終わり、いざ帰ろうとしていた主人公がまさかの聖獣にパクリと食べられて帰り損ねたお話し。 ※登場人物※ ・ゆかり:黒目黒髪の和風美人 ・ラグ:聖獣。ヒト化すると銀髪金眼の細マッチョ

処理中です...