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第1章

ストーカー

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 城内にて。


 隣を歩いていた友人のマリナが、私に耳打ちする。


「あ、あのさ……」

「何?」

「う、後ろ……。誰か、ついてきてるんだけど」

「後ろ? ……ああ」


 私は後ろを振り返ることなく、そのまま真っすぐに目的地へと向かう。


「放って置いて良いの?」


 マリナは怯えたような顔で、時々後ろを振り返ったり、腕を絡ませたりしてくる。

「大丈夫なの? 本当に」

「ええ、大丈夫よ」

 私は気にしないでと答えた。

「あなたも知っているでしょう? モーガン公爵よ、あの人」

「モ、モーガン公爵ですって!」

 マリナは素っ頓狂な声をあげた。

「なんで?」

「さあ」

 最初から全部説明するのも面倒だったので、私は苦笑して言葉を濁した。

「そんなの、私が一番知りたいわ」




 今日は、城で行われるパーティがある。


 公爵令嬢マリナは第二王子の婚約者として。

 私は第一王子の婚約者として、そのパーティに参加することになっている。


 特に誰かの誕生日でも、記念日というわけでもない。


 王妃様が定期的に行う、王侯貴族のお遊びだ。


 私もマリナも、そういう派手なイベントには興味がないのだが、王子の婚約者と言う手前、出席するしかなかった。

 それに今回のパーティは、王妃と婚約者直々に、

「参加してほしい」

 と、お願いされているのだ。


「パーティの時間も、お前の都合に合わせる」

 とまで言われてしまえば、参加するしかあるまい。


 ということで、授業が終わった放課後。

 友人のマリナと、城に向かっていた。


 そんな今日、私はモーガン公爵につきまとわれていた。


 
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