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プロローグ

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 羽柴 浩輔(はしば こうすけ)。

 26歳男、独身。


 俺は今、人生の崖っぷちに立たされていた。


 10で神童、15で才子、20過ぎれば只の人。


 なんていうことわざがあるが、よく言ったものだと常々思う。


 俺も、かつては「神童」ともてはやされていた。


 小学校・中学校時代。

 その年齢にしては勉強も出来、運動も出来た俺は、そりゃもうモテモテだった。


 学年で一番にモテる男として扱われ、同性にも、

「まあ、羽柴なら仕方ねぇよな」

 みたいなふうに思われており、あのころは俺の天下だった。


 同級生女子にライバルがいて、いつも俺はそいつと切磋琢磨しながら生きていたんだ。


 本当に毎日がキラキラしていた。

 このままずっとそう生きていくと、未来は明るいと、漠然とした希望的観測を抱いていた。


 あの時代が、俺にとっての人生の絶頂期だったのだ。


 しかし色々あって落ちるところまで落ちた俺は、なんとか引っかかった3流大学に進学し、悪友たちと遊んで暮らす。

 バイトに明け暮れ、その金で飲み歩き、金を湯水のように使う。

 出席日数は常にギリギリ。

 両親からは、

「クズ」

 と罵られる。


 そう思われても、平気だった。

 大学時代の俺は、ずっと自暴自棄だったのだ。


 その後人一倍遅い段階で就職活動を行った俺は、なんとか引っかかった中小企業に就職。


 そこは、とんでもない超絶ブラックな職場だった。

 ワンマン社長にパワハラ上司。

 毎日毎日怒鳴られ全否定され、仕事終わりは上司に飲みにつれていかれる。


 そこでも、くどくど説教を受けること数時間。


 同期は皆辞めた。

 残ったのは、俺だけ。


「仕事遅いんだよ」

「このぼんくら!」

「早くしろよ。それしか能のない癖に!」


 たまの休みは、スーパーで買った安酒とつまみ。

 昼から飲んで、ごろ寝する。


 友人と遊びに行く暇もない。

 当然、彼女もいないし、そもそもそんな相手もいない。


「本当、クソだ」


 俺はボロアパートの中で、独り言ちる。

「クソみてぇな人生だよ」


 1人、過去を振り返っては嘆き続ける。


 これからも、そしてずっとその先も――。


 俺は死ぬまで、無駄なことで時間を消費していくんだと、そう感じた。
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