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謝罪
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「「本当に申し訳ありませんでした!」」
その手紙の内容をフランの両親に伝えると、善良な市民の彼らは、我が家の床に頭を擦りつけんばかりの勢いで土下座した。
家の中は、完全に修羅場と化している。
私の両親ーー特に母親はブチ切れていた。
鬼のような形相で、母は2人を睨んでいる。
「一体どういう教育をなさったのかしら?」
嫌味ったらしく母は言う。
「おっしゃる通りでございます」
フランの父親は、我が家の床に向かってそう言った。
「我々の教育が失敗してしまい、皆様にご迷惑をかけてーー」
「今、そういうこと言ってるんじゃないんですけどね」
母は謝罪の言葉に被せて言った。
「別に謝れって言ってんじゃないの。わかる?」
母が言いたいのは、私の文句をただひたすら聞けということらしい。
「ありえないわ、本当に。長年付き合ってきた彼女を捨てて、ぽっと出の女のほうに行くなんて。一体どういう神経してるのかしら」
「本当にそうだ」
と、父。
母親の勢いには負けているものの、確かに父親も怒っていた。
「もう結婚式の日取りも内容も、ドレスだと予約済みだ。その金、一体どうするつもりなんだ?」
両家の取り決めで、諸々の費用は半々に分けることにしていた。
が、フランのこの事件である。
当然、そのようにするわけにはいかなかった。
「すべて我が家と愚息で払います」
と、フランの母親。
「当たり前だろ」
と、父。
「こっちは親戚友人にまで結婚式の招待状送ってるんだ。それも全部あんたらの方でどうにかしてくれよ」
「はい。承知いたしました」
私は、2人がとても可哀想に思えてきた。
子が親を選べないのと同様、親も子を選べないのだろう。
あんなクズの身代わりになるしかないなんて。
もし私があいつの親だと考えるとゾッとする。
その手紙の内容をフランの両親に伝えると、善良な市民の彼らは、我が家の床に頭を擦りつけんばかりの勢いで土下座した。
家の中は、完全に修羅場と化している。
私の両親ーー特に母親はブチ切れていた。
鬼のような形相で、母は2人を睨んでいる。
「一体どういう教育をなさったのかしら?」
嫌味ったらしく母は言う。
「おっしゃる通りでございます」
フランの父親は、我が家の床に向かってそう言った。
「我々の教育が失敗してしまい、皆様にご迷惑をかけてーー」
「今、そういうこと言ってるんじゃないんですけどね」
母は謝罪の言葉に被せて言った。
「別に謝れって言ってんじゃないの。わかる?」
母が言いたいのは、私の文句をただひたすら聞けということらしい。
「ありえないわ、本当に。長年付き合ってきた彼女を捨てて、ぽっと出の女のほうに行くなんて。一体どういう神経してるのかしら」
「本当にそうだ」
と、父。
母親の勢いには負けているものの、確かに父親も怒っていた。
「もう結婚式の日取りも内容も、ドレスだと予約済みだ。その金、一体どうするつもりなんだ?」
両家の取り決めで、諸々の費用は半々に分けることにしていた。
が、フランのこの事件である。
当然、そのようにするわけにはいかなかった。
「すべて我が家と愚息で払います」
と、フランの母親。
「当たり前だろ」
と、父。
「こっちは親戚友人にまで結婚式の招待状送ってるんだ。それも全部あんたらの方でどうにかしてくれよ」
「はい。承知いたしました」
私は、2人がとても可哀想に思えてきた。
子が親を選べないのと同様、親も子を選べないのだろう。
あんなクズの身代わりになるしかないなんて。
もし私があいつの親だと考えるとゾッとする。
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