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第2章
族長
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「……」
族長の家は、集落の北側にある、おおきな木をくり抜いた中にあった。
樹齢1万年とも噂されるその大木は、まるで神に恋焦がれているかのように、天に天に伸びていっている。
その木の中に、一際小さな若々しい女性が、安楽椅子に座って目をつぶっていた。
彼女がその、族長である。
彼女と接する際には、決して年齢など聞いてはいけない。
ひょんなことから年齢を聞いたとしても、
「歳の割に若々しいですね」
なんて言ってはいけない。
言ったが最後。
私はこれ以上の責任を持てない。
私はギルと一緒に、族長の家に赴いて彼女に挨拶をする。
片膝をついてお辞儀をし、
「ただいま戻って参りました」
と言った私。
族長は小さな口を開いた。
「……お久しぶりですね」
「ええ」
私は軽く頷く。
「約2年ぶりでしょうか」
「ええ、そうですね」
族長の声は、数年経っても穏やかだった。
不思議なのは、この人、私が子どもであったころと今とで変わった部分がない。
ずっと同じままであり続ける、我ら妖精族の「不変」なのだ。
「あなたにはご迷惑をおかけしました」
すべてを知っていたのだろう、族長は目を開け、私に謝罪する。
「いえいえ、そんな」
私は慌てて首を横に振る。
「族長に謝ってもらう必要はっ」
悪いのは族長ではなく、あのギーリウス王国だ。
ルドルフ殿下以外の。
「いえ、私の責任ですから」
族長は目を伏せた。
「私が、あのような場所にあなたを派遣してしまったせいで……。2年間、辛い思いをさせてしまいましたね」
族長の家は、集落の北側にある、おおきな木をくり抜いた中にあった。
樹齢1万年とも噂されるその大木は、まるで神に恋焦がれているかのように、天に天に伸びていっている。
その木の中に、一際小さな若々しい女性が、安楽椅子に座って目をつぶっていた。
彼女がその、族長である。
彼女と接する際には、決して年齢など聞いてはいけない。
ひょんなことから年齢を聞いたとしても、
「歳の割に若々しいですね」
なんて言ってはいけない。
言ったが最後。
私はこれ以上の責任を持てない。
私はギルと一緒に、族長の家に赴いて彼女に挨拶をする。
片膝をついてお辞儀をし、
「ただいま戻って参りました」
と言った私。
族長は小さな口を開いた。
「……お久しぶりですね」
「ええ」
私は軽く頷く。
「約2年ぶりでしょうか」
「ええ、そうですね」
族長の声は、数年経っても穏やかだった。
不思議なのは、この人、私が子どもであったころと今とで変わった部分がない。
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「あなたにはご迷惑をおかけしました」
すべてを知っていたのだろう、族長は目を開け、私に謝罪する。
「いえいえ、そんな」
私は慌てて首を横に振る。
「族長に謝ってもらう必要はっ」
悪いのは族長ではなく、あのギーリウス王国だ。
ルドルフ殿下以外の。
「いえ、私の責任ですから」
族長は目を伏せた。
「私が、あのような場所にあなたを派遣してしまったせいで……。2年間、辛い思いをさせてしまいましたね」
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