47 / 65
第3章
転換
しおりを挟む
私たちは行動の転換を余儀なくされた。
まず、周辺地域との情報共有である。
王家からの手紙が届いた日、私たちは手分けして近接の領地へ手紙を送った。
ほとんどはアンダーソン家と同じく辺境伯で、今回のお達しのせいでかなりの大打撃を受けていると踏んだのだ。
案の定、どの領地からも王家から同じような手紙が届いたとの連絡が入った。
「一体これはどういうことなのか?」
「王家は我らを見捨てたのか?」
という怒りの声が続々と届く。
一番多かったのは、
「やはり彼らは、田舎である我々を馬鹿にしているのだ」
という声だった。
私はかつて、王都に住む公爵令嬢だったから、彼らのその考えはあながち間違いではないことを知っている。
同じ国の貴族であるにも関わらず、何かと地方貴族は蔑ろにされてきた。
伯爵家と公爵・侯爵家という、身分の違いというのももちろんあるだろうが。
一番重きに置かれていたのは、城との距離だ。
住む場所によってどの家が一番重宝されているのかと考えられている昨今、王都に住む者、つまり城に近い場所に住む者は王家からも信頼され、また王家が関わりたいと強く考えている者であるという認識がなされる。
つまり、地方に住む貴族たちはそうではなく、まったく王家から信頼されていない「田舎者」だと蔑まれているのだ。
地方貴族たちは王都のパーティに出席出来ず、王家にお目通りする機会もほとんどない。
私とレイモンドの結婚式の際、私たちを馬鹿にしようとやってきたハロルド殿下一行ではあったが、彼らがこの領地に訪れたのも異例中の異例。
王家がここを訪れたのは、一体何百年ぶりだろうかという話だ。
地方貴族たちは別に身分が低いわけではなく、野蛮な人間ではないのに。
アンダーソン家は元王族だったし、他の地方貴族たちも、もとはそうだ。
不思議なのは、その過去を忘れてなぜ能天気にそんなふうに思っていられるのだろうか、王都に住む王侯貴族たちは。
しかし、現に我々は王家から侮辱されており、そのせいでこういった問題が起こっているのは由々しき事態だった。
私は、どうしたものかと悩む夫に向かって提案する。
「こういうのはどうでしょう? 地方貴族たち全員で手を組むのは」
まず、周辺地域との情報共有である。
王家からの手紙が届いた日、私たちは手分けして近接の領地へ手紙を送った。
ほとんどはアンダーソン家と同じく辺境伯で、今回のお達しのせいでかなりの大打撃を受けていると踏んだのだ。
案の定、どの領地からも王家から同じような手紙が届いたとの連絡が入った。
「一体これはどういうことなのか?」
「王家は我らを見捨てたのか?」
という怒りの声が続々と届く。
一番多かったのは、
「やはり彼らは、田舎である我々を馬鹿にしているのだ」
という声だった。
私はかつて、王都に住む公爵令嬢だったから、彼らのその考えはあながち間違いではないことを知っている。
同じ国の貴族であるにも関わらず、何かと地方貴族は蔑ろにされてきた。
伯爵家と公爵・侯爵家という、身分の違いというのももちろんあるだろうが。
一番重きに置かれていたのは、城との距離だ。
住む場所によってどの家が一番重宝されているのかと考えられている昨今、王都に住む者、つまり城に近い場所に住む者は王家からも信頼され、また王家が関わりたいと強く考えている者であるという認識がなされる。
つまり、地方に住む貴族たちはそうではなく、まったく王家から信頼されていない「田舎者」だと蔑まれているのだ。
地方貴族たちは王都のパーティに出席出来ず、王家にお目通りする機会もほとんどない。
私とレイモンドの結婚式の際、私たちを馬鹿にしようとやってきたハロルド殿下一行ではあったが、彼らがこの領地に訪れたのも異例中の異例。
王家がここを訪れたのは、一体何百年ぶりだろうかという話だ。
地方貴族たちは別に身分が低いわけではなく、野蛮な人間ではないのに。
アンダーソン家は元王族だったし、他の地方貴族たちも、もとはそうだ。
不思議なのは、その過去を忘れてなぜ能天気にそんなふうに思っていられるのだろうか、王都に住む王侯貴族たちは。
しかし、現に我々は王家から侮辱されており、そのせいでこういった問題が起こっているのは由々しき事態だった。
私は、どうしたものかと悩む夫に向かって提案する。
「こういうのはどうでしょう? 地方貴族たち全員で手を組むのは」
1
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる