社畜系公爵令嬢は、婚約破棄なんてどうでも良い

訪問者

　なんというタイミングでの訪問なのか。


　最悪だ。

　殿下には悪いけど。


　本当、なんでこのタイミングで？

　私は心の底から、思いっきりため息をつく。


「……今？」

「はい。客室にいらっしゃいます」

「……わかったわ」


　私はもう一度ため息をつき、ベッドから起き上がる。


　時計を確認しつつ、殿下にお会いするための準備する。


　殿下とお話するのがどれくらい時間がかかるのかはわからないけど。


　私が仮眠をする時間は、ちゃんとあるだろうか。




　第二王子であるエドワード殿下は、第一王子のエイベル殿下とは雲泥の差だった。


　優秀で聡明、人望もまるで違う。

　老若男女問わず、身分関係なくエドワード殿下は好かれていた。


　この世襲制の国で、先に生まれたという事実がとても重要視されている状況においても、第二王子殿下の勢いは凄まじかった。


　あのエイベル殿下よりも、エドワード殿下を次期国王にすべきだという考えが多くあり、だからこそ現国王は、未だに王太子を設置していない。


　一応妃教育を受けていた私だが、正直言って王妃になる気はさらさらなかった。

　というか、ならないだろうと思っていた。


　あのエイベル殿下は、思っていたよりも馬鹿で頑固だった。

　あの人が次期国王になるくらいなら、建国当初から続く伝統を違えても、エドワード殿下を国王に据えるだろう。

　陛下もきっと、そう思っているはずだと。


　両親もそう思っていたから、第一王子の婚約者であるはずの私に、領地経営を任せていたのだ。