腹黒王子のお気に入り ~婚約破棄したら、なぜか第一王子が近づいてきました~

 伯爵令嬢アデリーナは、社交界で「氷の華」と呼ばれる少女だった。


 凍えるような美しさにクールな性格。

 あまり人と関わることもないせいか、良く誤解されやすいタイプだった。


 そんな彼女にも親が決めた婚約者がいたのだが、

「伯爵令嬢アデリーナ! 良くも可愛いマリーを虐めてくれたな! お前のような陰険で不愛想な女とは付き合いきれない。婚約破棄させてもらう!」

「はあ」


 ある日のこと、彼女はパーティ会場でその婚約者から一方的に婚約破棄を告げられる。

 彼の隣には、マリーとかいう見たことのない少女が立っていた。


「エドガー様、アデリーナ様をこれ以上責めるのは辞めてください! 私が全部悪いんですっ」

「マリー、お前はなんて良い子なんだ……! やはりアデリーナとは大違いだ」

「いいえ、私は良い子なんかじゃありません! エドガー様を愛してしまっただけですわ」

「マリー!」


 目の前で繰り広げられる寸劇。

 苛つくアデリーナ。


「アデリーナ様、どうぞいくらでも私を罰してくださいまし! ですがこの私の想いは本物ですわ。あなたには負けません!」


 とうとうその言葉にキレたアデリーナは、これ幸いと2人の顔面を思い切り殴り飛ばす。


「どうぞ不細工同士お幸せに」

 気絶した2人にそう言い放ったアデリーナに向かって、爆笑しながら拍手を送る人物が現れた。


 その人は、第一王子のディラン殿下。

「君面白いねぇ。良かったら僕の婚約者にならない?」

「いえ、結構ですわ」

「いやいや遠慮しなくても。君これから大変でしょ?」

「結構ですわ」


 なぜか王子に気に入られてしまったアデリーナは、彼のせいで様々な問題に巻き込まれていくのだった――。
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