君の名をよばせて

雨ましろ

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うわさ

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「しかし、僕には恋人がいますから、聖夜さんの性処理役にはなれません。すみません」
「ああ、知っているよ」
「えっ?」
僕に恋人がいることは知っているんだ。話した覚えはないけれど。
会社でも田丸のことは秘密だし。

「戸狩くんと付き合っているのはオレだろ」
「えっ?」
ちょっと言っている意味がわからない。僕は聖夜さんとつきあっていないけれど。
「オレは、戸狩くんと付き合いたかった。だから、オレと戸狩くんが付き合っているという噂を流した。もちろん、心矢に協力してもらってな」
つまりホストクラブでは、僕と聖夜さんが恋人ってわけ。うわさでは。
そんな噂流されて僕は全然、とくにならない。
お金のために僕は、ホストクラブで働いていたわけで、稼げることが魅力だった。
聖夜さんは素敵だけれど、僕の気持ちはまだ確かめていなかったわけだし。

「どうして?」
「オレが同性愛者だということにしていた方が、都合がいいからだ。オレは、戸狩くんと仲良くなりたい。で、オレは男しか愛せない。だから、オレは噂を流した」
他の人に僕がとられないように、聖夜さんの恋人にされて、聖夜さんはそれでよかったかもしれないけれど。
僕の知らないところでことがすすんでいた。
僕の気持ちは無視だったわけだ。
聖夜さんは自信があったのかもしれないし、
聖夜さんのこと嫌いにはなれないけれど。
特別な人にはなれそうにない。

「それでホストクラブは従業員同士の交際が禁止だから、僕がくびになったんだろうか」
急に仕事が首になって、ショックだったことを思い出した。
お金が稼げなくなって失敗したって思っていたんだ。
「そうだな。それもあるだろうな」
「そうですか」

やはり、僕の失態の数々でもクビにもなったんだろうな。お客様にもっと親しみを持って接しないと仕事なんだし。お客さまにいやな気持にさせてたならプロじゃない。
「まあ、気にすることはないさ」
「まあ、したかたないです」
「とりあえず、オレのことは好きにしていいぞ」
「いえ、そういうわけにはいきません。僕は本当に恋人いまから」
ただ、聖夜さんは僕に恋人がいることは知らなかったみたいだけれど。
田丸のこと紹介したらまじめそうな好青年で驚くかな。
「そうか、残念だ」
「では、失礼します」
僕は部屋を出た。

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