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7:魔導師として宮廷入りしたので、あの日の話をしませんか?

運命を変えるためにできること 2

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「確かに殿下と比べたら俺の経験は少ないですよ。知識に偏っているとも思います。ですが、俺は俺でアルが喜びそうなことを考えてきたつもりだったんですがね」
「ちょっ! なんでそういう話にするんですか! あたしは真面目にメルヒオールさまの心配をしているってのに! 身体の相性や魔力の相性とは別の話です。ごっちゃにしないでください」
「だって、嫌じゃないのでしょう?」

 彼の目が怖い。
 あの、メルヒオールさま。その感情は嫉妬と呼ばれるもので、おそらくあたしに対する愛着はお持ちであると思いますよ?

 愛情がわからないと告げたのはリシャールだったが、同じように育てられたであろうメルヒオールだって愛情がよくわかっていない可能性は充分にあると想像した。

 だから、何が愛なのか示すと言ってメルヒオールさまの気を引くことにしたんだけど……形はどうであれ、あたしはメルヒオールさまに愛されているんだと思うけどなあ。

 リシャールが直接アルフォンシーヌと関わるようになり、メルヒオールは自分の気持ちと向き合うことにしたのだろう。その結果、愛情が理解できないばかりに迷いが生まれてしまった。それがこうしてアルフォンシーヌとの間に溝を作ってしまったのではないかと、今なら考えられる。

 あたしはメルヒオールさまを信じます。

 アルフォンシーヌはニッコリと笑った。

「あたしが殿下を交えた行為を嫌だと感じていないのは、メルヒオールさまがあたしの味方でいてくれると信じられるからです。メルヒオールさまは自信を持っていいんですよ」

 アルフォンシーヌの言葉へのメルヒオールの返事はない。だが、代わりに身体を引き寄せられて、ギュウッと抱き締められた。

「――まったく……つい先日までただの少女だったのに、立派な女性になりましたね」
「師匠、言葉選びに作為的なものを感じるんですが。――それに、あたしは宮廷魔導師という仕事の延長として引き受けると言っているだけで、殿下への下心があったり行為に夢中になっていたりするわけじゃないんですからね!」

 メルヒオールに誤解をされている気がして抗議をすると、とても自然な動作で唇を奪われた。
 軽く触れるだけかと油断した瞬間、食まれるように唇を覆われて深いキスへと移行する。

「あっ、んっ……」

 入浴中で肌が直接触れ合っているのはよろしくない。身体に纏う魔力が混ざり合う気配があって、アルフォンシーヌは酔わされる。性器で交わっていなくても、心地がよかった。

 ああ、メルヒオールさまの魔力だ……。

 精霊王の気配に似ているが、この穏やかな陽だまりのような暖かさはメルヒオールの固有のものだ。触れるだけで気持ちよくなってしまう。

「アル……どうか俺たちの脅威にはならないで」
「なりませんよ。あたしはあなたと殿下を助けます。これからもずっと」

 長いキスを終えると微笑み合う。幸せな時間だ。
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