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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!
二人きりの浴室 5
しおりを挟むビクッと身体が震える。その反応に気づかれて、優しく責められた。身体が熱い。この火照りはお湯のせいではないだろう。
「やぁ……アーデルベルト、さまぁっ、さっ、触らないでぇ……」
「ルツィエ。オレの手で、イってくれ」
「やぁ……だめっ……こんなのっ……あぅあっ⁉︎」
首筋に吸い付かれ、指先の振動が加速すると、私は絶頂を迎えざるをえなかった。
ビクビクと身体を痙攣させて、アーデルベルトにもたれかかる。彼の指は震える花弁を優しく撫でていた。
「アーデルベルトさま……」
身体に力が入らない。このまま抵抗できなければ、最後までされてしまいそうな気配がある。なかなか離れていかない彼の指が、そのタイミングを探っているみたいで怖い。
まずは呼吸を整えようと意識するのにうまくいかない。言葉も思うように出てこなくて、余計に焦った。
「――お前はいいな……」
彼の指がやっと離れたと思ったら、不意に抱きしめられた。
意図がわからず困惑する私の耳元で、アーデルベルトは言葉を続けた。
「お前はヒトの姿のままを保てていて羨ましい。オレは、自分の姿が変わっていくのが怖い。自分が自分でなくなってしまいそうで、どうしたらいいのか時々わからなくなる。――ゲルハルト叔父は、こういう気持ちにはならなかったのかな。ドラゴンである自分を受け入れるなんて、本当にすごい」
そっか……アーデルベルトさまは、この恐怖を、その不安を、誰かと分かち合いたかったんだな……
弱気なところを一切見せないアーデルベルトは、おそらく私の前だけでなく親友のヴァルデマールの前でさえ、そのように振る舞っていたのだろう。
性格だけじゃなくて、立場的にも……難しいことよね。私への想いをきちんと告げていてくれたら、もっと自然に受け入れることもできたかもしれなかったのに。
本心を打ち明ける最初の相手に私を選んだらしいことがなんとなく伝わってきて、彼の不器用さにちょっとだけ同情した。同情しただけで、彼になびく気はないが。
「愛していたぞ、ルツィエ。結ばれるならお前だと、心の底から思っていた」
軽く唇に口づけられて、そして封魔錠が外された。
「ほら、外したぞ。だから、オレの弱音は忘れてくれ」
「忘れろと命じるのではなく、記憶を消してしまえばいいのではないですか?」
記憶操作は精神干渉の魔法に特化しているアーデルベルトの得意分野だろう。本気を出されたら、私でも対抗呪文が間に合わない。
そのくらい彼にとって優位な状況なのに、私の魔法の拘束を解いた上でそんなことを命じる理由なんて自明だ。
私は自由を取り戻した両手首を確認しながらわざと尋ねる。これで魔法は使いたい放題である。感覚も戻ってきた。
「意地悪なことを言うな」
「お互い様でしょうに」
私が返すと、それもそうだな、と短く告げてアーデルベルトのほうから離れていった。
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