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【番外編】紅玉のひめはじめ

*2* 1月2日

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 スマートフォンのけたたましいアラームの音で、紅はガバッと飛び起きた。

「あ、あたしってば……」

 アラームを止めて、頭を抱える。スマートフォンに表示されていたのは一月二日。抜折羅とイチャイチャしていたのは夢の中の出来事で――つまり、これが初夢だ。

「願望が全開ですね」
「ほっといてよ、フレイムブラッド」

 右肩に埋まるスタールビーの原石《フレイムブラッド》に指摘されて、紅はげんなりする。こういう夢は一時よりは減っていたはずだが、忘れた頃に、しかも初夢で見るなんてとんでもない。
 忘れ去りたいと、あまりの恥ずかしさで悶絶していると、いきなりスマートフォンが鳴った。

「ハロー?」

 通話にすると抜折羅の声。彼は今、ワシントンの実家に帰省中だ。

「ハロー。どうしたの、珍しいわね」

 用事がないと電話どころかメールすらしない彼だ。急用かと思って身構えると、照れくさそうに笑う声が耳に入った。

「新年に恋人の声を聞きたいと思うのは、そんなに変なことではないだろう?」
「そ、そりゃあ変じゃないけれど……抜折羅にしては珍しいから」

 稀にみる暖冬だが、彼の行動にも影響があるのだろうか、などと考えてしまう。

「サプライズも必要だと、白浪先輩が心配して言うから、な」

 遊輝にけしかけられたのだとわかって、妙に納得する。こういう入れ知恵は遊輝の専売特許だ。

「そっか。そっちは楽しくやってるの? こっちは例年通り星章家での年越しパーティーに呼ばれて、そのあとに初詣行って帰宅して寝てたところよ」
「忙しそうだな」
「まぁ、こんな行事も今年でおしまいだけどね」

 来年の今頃は、きっと抜折羅のそばにいる。彼がさらっていってくれる。
 抜折羅がふっと笑った。

「だな。別れて過ごす正月も今年できっと最後だ。こっちの行事もいろいろ面倒だから、覚悟しておけ。俺は社長の座を継ぐつもりはないが、本社の連中はそうは思っていないからな。次期社長の夫人として見られる。覚悟しておけ」
「うん。あたし、頑張るよ」

 大変そうではあるが、充実していそうだ。自分で決めたことなのだから、弱音は吐きたくない。

「俺も頑張るから」

 幸せな時間だ。こんなふうに電話越しでも同じ時間を過ごせるなんて。
 初夢の話はしないようにして、紅は抜折羅と楽しい通話の時間を楽しんだのだった。

《完》
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