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【番外編】不機嫌なブルーサファイア(R-18)
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そこでふと、蒼衣の裸を意識してしまった。照明で浮かび上がる陰翳は均整のとれた筋肉を表現している。服を着ているとわかりにくいのだが、しっかり鍛えているらしい身体つきだ。
――やだっ、あたしっ……。
男性の裸に見慣れていないからか、うっかりじっと見つめてしまった。すぐに視線を外す。恥ずかしさで熱くなった。
「に、兄様っ、何か上に羽織ってくださいっ! そんな格好では風邪をひきますっ!!」
「おやおや。そんなに赤くなって。上半身だけでも、意識してしまうものですか?」
紅が何に反応しているのか、蒼衣はすぐに見抜いてきた。近付いては来なかったが、すごく不思議そうだ。
「そりゃしますよっ! ですから、さっさと着てくださいっ! あたしは着替えて帰りたいんですっ」
蒼衣が部屋に現れたとき、すでに脱いだ衣類は近くになかった。青葉がドレス等を片付ける際に持ち出したに違いない。今はどこにあるのだろう。
「その格好のままにしたら、貴女をここに引き止めておけそうですね」
近くのテーブルに無造作に置かれていたワイシャツに袖を通しながら、蒼衣は告げる。
「本気でそれを言ってます?」
冗談じゃない。だが、蒼衣が何の意図を持って告げているのか、紅にはわからなかった。
「本気だったら、どうするおつもりで?」
涼しげな視線が紅を見つめる。蒼衣はこの部屋に最初に現れたときと同じ、ワイシャツにセーターを合わせた格好に戻った。
――試されている。
胸元を隠すために掴んでいた毛布をさらに引き上げる。
「……どうするも何も……困るだけだわ」
大声を張り上げて、蒼衣に襲われたと告げ口する方法も思い付いた。だが、せっかく彼が落ち着きを取り戻してくれたのに、意味がなくなってしまう。あまり大ごとにはしたくない。
「紅は優しいのですね。もっと怒っても良いはずですのに」
「勘違いしないでください、兄様。あたしは許してはいませんよ」
「許すくらいなら、貴女は抱かれることを選びそうですものね」
「さぁ……それはどうかしらね」
当たり前のように蒼衣は言っていたが、紅は自分が何を選択するのかは想像できなかった。
――あたしは、諦めてしまうのかしら? それとも、最後まで抵抗するの? 抵抗できるの?
「――着替えなら用意してありますよ。ご心配なく」
告げて示された先には、お洒落な籠が置かれていた。見慣れたサファイアブルーの制服が目に入る。
「私は廊下に出ていますから、支度が終わったら声を掛けてください。火群の家まで、自転車ごと車でお運びしますよ」
「えぇ。お願い」
「では、失礼します」
蒼衣はかしこまった様子で部屋を出て行った。
――何やってるのよ、あたし……。
ふぅ、と息を吐き出すと、紅はベッドをそろりと抜け出したのだった。
――やだっ、あたしっ……。
男性の裸に見慣れていないからか、うっかりじっと見つめてしまった。すぐに視線を外す。恥ずかしさで熱くなった。
「に、兄様っ、何か上に羽織ってくださいっ! そんな格好では風邪をひきますっ!!」
「おやおや。そんなに赤くなって。上半身だけでも、意識してしまうものですか?」
紅が何に反応しているのか、蒼衣はすぐに見抜いてきた。近付いては来なかったが、すごく不思議そうだ。
「そりゃしますよっ! ですから、さっさと着てくださいっ! あたしは着替えて帰りたいんですっ」
蒼衣が部屋に現れたとき、すでに脱いだ衣類は近くになかった。青葉がドレス等を片付ける際に持ち出したに違いない。今はどこにあるのだろう。
「その格好のままにしたら、貴女をここに引き止めておけそうですね」
近くのテーブルに無造作に置かれていたワイシャツに袖を通しながら、蒼衣は告げる。
「本気でそれを言ってます?」
冗談じゃない。だが、蒼衣が何の意図を持って告げているのか、紅にはわからなかった。
「本気だったら、どうするおつもりで?」
涼しげな視線が紅を見つめる。蒼衣はこの部屋に最初に現れたときと同じ、ワイシャツにセーターを合わせた格好に戻った。
――試されている。
胸元を隠すために掴んでいた毛布をさらに引き上げる。
「……どうするも何も……困るだけだわ」
大声を張り上げて、蒼衣に襲われたと告げ口する方法も思い付いた。だが、せっかく彼が落ち着きを取り戻してくれたのに、意味がなくなってしまう。あまり大ごとにはしたくない。
「紅は優しいのですね。もっと怒っても良いはずですのに」
「勘違いしないでください、兄様。あたしは許してはいませんよ」
「許すくらいなら、貴女は抱かれることを選びそうですものね」
「さぁ……それはどうかしらね」
当たり前のように蒼衣は言っていたが、紅は自分が何を選択するのかは想像できなかった。
――あたしは、諦めてしまうのかしら? それとも、最後まで抵抗するの? 抵抗できるの?
「――着替えなら用意してありますよ。ご心配なく」
告げて示された先には、お洒落な籠が置かれていた。見慣れたサファイアブルーの制服が目に入る。
「私は廊下に出ていますから、支度が終わったら声を掛けてください。火群の家まで、自転車ごと車でお運びしますよ」
「えぇ。お願い」
「では、失礼します」
蒼衣はかしこまった様子で部屋を出て行った。
――何やってるのよ、あたし……。
ふぅ、と息を吐き出すと、紅はベッドをそろりと抜け出したのだった。
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