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【番外編】不機嫌なブルーサファイア(R-18)
*4*【A】
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「っ!?」
目の前にいる人物に驚いて退くと、ピンヒールが引っかかって体勢を崩した。すぐに大きな手が紅の背に周り、もう片方の手は彼女の手を取って転倒を防ぐ。ダンスで似たようなポーズがあったような気がした。
「危ないですよ、紅」
サファイアブルーの柄がついた眼鏡を掛けた青年の顔が近い。綺麗に整った顔は、心配そうというよりも楽しげな表情を刻んでいる。
「それはこっちの台詞ですっ!! 蒼衣兄様っ!!」
ヒールが高いおかげで、学校で会うときよりも顔の高さが近い。ダンスのときの距離だ。
「何の冗談ですか?」
この部屋にいたはずの青葉は姿を消している。それだけでなく、衣装や小物類も撤収済み。紅は蒼衣と二人きりにされたらしい。
――って、ちょっと待った!! このドレスはっ!?
姿見に映っている格好に仰天した。
背中はすべて晒されて、臀部の上部までが見えてしまいそうなくらい抉れている。確かに下着を替えた方が良さそうなデザインだ。胸元は布地に覆われていたが、うっかり激しく動いたら乳房が零れ落ちてしまいそうで心許ない。想像していたとおり、大きな胸を片方ずつ包む生地は首まで伸びて、首の後ろに大きなリボンを作っている。加えて、大胆なスリットが刻まれたロングスカートから、太ももとふくらはぎがよく見えた。
あまりの恥ずかしさに蒼衣から距離を取ろうともがくと、彼は引き寄せて抱き締めてくる。
「とってもお似合いですよ、紅」
何も纏っていない背中を直接撫でられて、紅は小さく震えた。まさかこんな形で肌に触れられるとは思っていなかった。
「や……やめてくださいっ。あたしに立てた誓いを破るつもりですかっ!?」
蒼衣に「あなたは兄としか見られない」と伝えたその日、彼は紅に誓いを立てていた。先走った真似はしない、だからチャンスをくれ、と。これまでその誓いの通りに距離を保っていてくれたというのに、どうして今こんなことをしてくるのだろう。
紅の訴えに応える前に、蒼衣は紅の頬を優しく撫でてそっと顎を持ち上げる。
「このまま口付けを受けるのと、貴女の首の後ろで結ばれたリボンを解いてしまうのと、どちらがよろしいですか?」
ひんやりとした声で問われるが、そんなのどちらも御免だ。紅は動かせる範囲で首を横に振る。
「どちらもお断りですっ! 戯れのつもりなら、ここまでにしてくださいっ! さすがに怒りますよっ!!」
「先に怒らせたのは貴女でしょう?」
蒼衣の瞳が冷たく光ったかと思うと、口付けをされた。
「んぅっ!?」
噛みつかれるみたいに強く食まれたかと思えば、強引に口内に舌が侵入してきた。歯列をなぞり、反射で僅かに開けた口から奥へと進む。
「んっ!? むぅっ……」
逃げようとする紅の舌はすぐに追い詰められ、なぶるように絡められる。執拗に絡められて、そのうちにつつかれたり吸われたりと様々な刺激を与えられた。
――やっ……やだっ……。
抵抗するために身を捩ったり彼の胸を押してみるが効果はない。むしろそうされることで、腰をしっかりと寄せられて、顎に触れていたはずの手が後頭部を支え、口付けから逃げることを許さないと蒼衣は示してくる。
「んんっ……あっ……」
唇から離れると、顔を首筋に埋めて口付けされる。
「やっ……だめっ……あぁんっ……ひゃんっ……」
ペロリと首を舐められると、全身がぞわりとした。
――恐い……。
「やっ……兄様……やめて……」
恐怖で身体が震える。絞り出した声には涙が混じった。こんなことはやめて欲しい。
彼の手は首の後ろのリボンを弄っていたが、ピタリと止まった。
「――ここまでがお仕置きですよ?」
紅の顔を覗き込む目は冷え冷えとしている。冷静な状態で、彼は行為に至ったのだ。
「貴女には躾も必要ですよね? 私の愛しいフィアンセ」
目の前にいる人物に驚いて退くと、ピンヒールが引っかかって体勢を崩した。すぐに大きな手が紅の背に周り、もう片方の手は彼女の手を取って転倒を防ぐ。ダンスで似たようなポーズがあったような気がした。
「危ないですよ、紅」
サファイアブルーの柄がついた眼鏡を掛けた青年の顔が近い。綺麗に整った顔は、心配そうというよりも楽しげな表情を刻んでいる。
「それはこっちの台詞ですっ!! 蒼衣兄様っ!!」
ヒールが高いおかげで、学校で会うときよりも顔の高さが近い。ダンスのときの距離だ。
「何の冗談ですか?」
この部屋にいたはずの青葉は姿を消している。それだけでなく、衣装や小物類も撤収済み。紅は蒼衣と二人きりにされたらしい。
――って、ちょっと待った!! このドレスはっ!?
姿見に映っている格好に仰天した。
背中はすべて晒されて、臀部の上部までが見えてしまいそうなくらい抉れている。確かに下着を替えた方が良さそうなデザインだ。胸元は布地に覆われていたが、うっかり激しく動いたら乳房が零れ落ちてしまいそうで心許ない。想像していたとおり、大きな胸を片方ずつ包む生地は首まで伸びて、首の後ろに大きなリボンを作っている。加えて、大胆なスリットが刻まれたロングスカートから、太ももとふくらはぎがよく見えた。
あまりの恥ずかしさに蒼衣から距離を取ろうともがくと、彼は引き寄せて抱き締めてくる。
「とってもお似合いですよ、紅」
何も纏っていない背中を直接撫でられて、紅は小さく震えた。まさかこんな形で肌に触れられるとは思っていなかった。
「や……やめてくださいっ。あたしに立てた誓いを破るつもりですかっ!?」
蒼衣に「あなたは兄としか見られない」と伝えたその日、彼は紅に誓いを立てていた。先走った真似はしない、だからチャンスをくれ、と。これまでその誓いの通りに距離を保っていてくれたというのに、どうして今こんなことをしてくるのだろう。
紅の訴えに応える前に、蒼衣は紅の頬を優しく撫でてそっと顎を持ち上げる。
「このまま口付けを受けるのと、貴女の首の後ろで結ばれたリボンを解いてしまうのと、どちらがよろしいですか?」
ひんやりとした声で問われるが、そんなのどちらも御免だ。紅は動かせる範囲で首を横に振る。
「どちらもお断りですっ! 戯れのつもりなら、ここまでにしてくださいっ! さすがに怒りますよっ!!」
「先に怒らせたのは貴女でしょう?」
蒼衣の瞳が冷たく光ったかと思うと、口付けをされた。
「んぅっ!?」
噛みつかれるみたいに強く食まれたかと思えば、強引に口内に舌が侵入してきた。歯列をなぞり、反射で僅かに開けた口から奥へと進む。
「んっ!? むぅっ……」
逃げようとする紅の舌はすぐに追い詰められ、なぶるように絡められる。執拗に絡められて、そのうちにつつかれたり吸われたりと様々な刺激を与えられた。
――やっ……やだっ……。
抵抗するために身を捩ったり彼の胸を押してみるが効果はない。むしろそうされることで、腰をしっかりと寄せられて、顎に触れていたはずの手が後頭部を支え、口付けから逃げることを許さないと蒼衣は示してくる。
「んんっ……あっ……」
唇から離れると、顔を首筋に埋めて口付けされる。
「やっ……だめっ……あぁんっ……ひゃんっ……」
ペロリと首を舐められると、全身がぞわりとした。
――恐い……。
「やっ……兄様……やめて……」
恐怖で身体が震える。絞り出した声には涙が混じった。こんなことはやめて欲しい。
彼の手は首の後ろのリボンを弄っていたが、ピタリと止まった。
「――ここまでがお仕置きですよ?」
紅の顔を覗き込む目は冷え冷えとしている。冷静な状態で、彼は行為に至ったのだ。
「貴女には躾も必要ですよね? 私の愛しいフィアンセ」
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