上 下
191 / 309
【番外編】必要なのは夢魔を祓う石(R-15)

★14★ 12月7日土曜日、午後

しおりを挟む
 エキセシオルビルの前に着いてもこうは目を覚まさなかった。うなされていたわけではないようだが、朝から刺激的な夢を見た所為で疲れが取れていないのだろう。

 ――ったく、どんな夢を見ているんだか……。

 あまりにも気持ちよさそうに眠っているために起こすのが躊躇ためらわれ、抜折羅ばさらは彼女を抱きかかえるとビルの七階にある私室に運び入れた。ソファーベッドに眠ったままの紅をそっと横たえる。

 ――無防備すぎだぞ、紅。

 紅が持ってきていた荷物はトパーズに頼んで運んでもらい、彼はすでにここを去っている。誰の目もない二人きりの状況だ。

 ――待て。意識するな、俺。

 彼女が見たという夢の話を妄想していた所為か、普段以上の動悸を感じる。
 夢の中での自分は、彼女にどんなことをしたのだろう。何を仕出かすと、彼女は照れて視線を合わせられなくなるのだろう。キスなら現実でも何度もしているのだから、おそらくキス以上のことを……。

 ――あぁっ! フレイムブラッドが変な言い回しで説明してきた所為で気になるじゃないかっ!!

 じっとしていられなくて、抜折羅は頭をかきむしる。少し癖のある黒髪がボサボサになるだろうが、構っている余裕が今はない。

 ――手っ取り早く起こして聞き出すか? すっきりするし。

 紅に近付いて、彼女を見下ろす。そのタイミングで紅は寝返りをうち、横向きから仰向けになった拍子にスカートの裾が捲れた。黒いタイツで覆われた太ももが露わになる。

 ――バカっ!?

 咄嗟とっさに彼女に毛布を被せる。これでひと安心だ。

 ――俺に襲われたいのかっ!? そうなのかっ!?

 毛布にくるまってもぞもぞと動いている彼女を見ながら、大きく深呼吸をしてみる。落ち着け、落ち着けと念じながら。

 ――彼女は眠りたいから寝ているだけ。他意はない。うん、それ以外の何物でもないぞ。

 自分に言い聞かせ、改めて紅に対峙する。

 ――だから、コートくらいは脱がそう。眠りの妨げになるはずだし。

 ロングブーツを脱がすのは色々な理由で諦めたが、彼女が羽織っているピーコートを脱がす程度ならそう難しくはなさそうだ。
 紅の眠りを邪魔しないように陣取り、抜折羅はそうっと手を伸ばす。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...