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【番外編】キューピットストーンの粋な計らい
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「……っと。電話みたい」
尻ポケットからスマートフォンを取り出すと、画面を見た遊輝は表情を曇らせた。
「誰から? 女、とか?」
わざとらしく抜折羅が問うと、彼は苦笑して答える。
「母親からだよ。さっきメールしたから、電話してきたみたい。ちょっと待ってて」
数歩離れると、遊輝はスマートフォンを耳に当てる。
「もしもし? ……うん。写真を送った通りだよ。まだ友だちと一緒。……は? え? ちゃんと男友だちだっているって。ハーレムパーティーなんてしないよ。今、本気で好きな女の子がいるんだから、適当な女の子を連れ込んで遊ぶのはやめたの。……非道い。父さんと一緒にしないで」
――どういう価値観に基づいた教育だよ……。
抜折羅は突っ込みたい気持ちを抑えて黙る。家庭に憧れがあるものの、白浪家のような環境にはしたくない。夕食をしながら語ってくれたことの信憑性が、この通話からひしひしと伝わってくる。
「うん……うん……で、パリはどうなの? ……あぁ、そういうことなら、冬休みにはそっちに行くよ。土日で行くには遠いし。……うん。お金は自分で稼げているから心配しないで。学費は預かってるから大丈夫だし。……ん? 誕生日プレゼント? 要らないよ。僕が欲しいもの、お金で買えるようなものじゃないから。……え? なら丁度良かったって、どういうこと?」
そして、沈黙。遊輝が目をまるくしている。
何を言われたんだろう――抜折羅は紅と顔を見合わせて首を傾げた。
遊輝は小さく唸ると、困った顔をして自身の銀髪の毛先をくるくると指先に絡める。
「……あ。おめでとう、で良いの、こういうときの反応って。ってか、その子、本当に父さんの子どもだよね? 嫌だよ、普通の容姿の子どもだったら。遺伝的に考えて、二人からは色素が薄い子しか産まれないんだから。見たらすぐにわかるじゃない」
――何の話だ?
ひどい言われようだと思うのだが。遊輝の台詞には突っ込みどころが満載で、抜折羅の感覚からは有り得ない台詞が続いている。
「……ちょっと待って。まだ妹かどうか判らないよね? 妊娠初期がどんな状態なのかくらい、知識あるって。……えっと……フライングして、僕と同じ道は辿らせないで。母さん、お願いだから。……あぁ、うん。驚きはしたけど、嬉しく思うよ。……うん。ありがと。慣れない土地で大変だとは思うけど、身体は大事にしてね。……うん。わかった。じゃあ、冬に」
スマートフォンを耳元から離すと、彼にしては珍しく長いため息をついた。
尻ポケットからスマートフォンを取り出すと、画面を見た遊輝は表情を曇らせた。
「誰から? 女、とか?」
わざとらしく抜折羅が問うと、彼は苦笑して答える。
「母親からだよ。さっきメールしたから、電話してきたみたい。ちょっと待ってて」
数歩離れると、遊輝はスマートフォンを耳に当てる。
「もしもし? ……うん。写真を送った通りだよ。まだ友だちと一緒。……は? え? ちゃんと男友だちだっているって。ハーレムパーティーなんてしないよ。今、本気で好きな女の子がいるんだから、適当な女の子を連れ込んで遊ぶのはやめたの。……非道い。父さんと一緒にしないで」
――どういう価値観に基づいた教育だよ……。
抜折羅は突っ込みたい気持ちを抑えて黙る。家庭に憧れがあるものの、白浪家のような環境にはしたくない。夕食をしながら語ってくれたことの信憑性が、この通話からひしひしと伝わってくる。
「うん……うん……で、パリはどうなの? ……あぁ、そういうことなら、冬休みにはそっちに行くよ。土日で行くには遠いし。……うん。お金は自分で稼げているから心配しないで。学費は預かってるから大丈夫だし。……ん? 誕生日プレゼント? 要らないよ。僕が欲しいもの、お金で買えるようなものじゃないから。……え? なら丁度良かったって、どういうこと?」
そして、沈黙。遊輝が目をまるくしている。
何を言われたんだろう――抜折羅は紅と顔を見合わせて首を傾げた。
遊輝は小さく唸ると、困った顔をして自身の銀髪の毛先をくるくると指先に絡める。
「……あ。おめでとう、で良いの、こういうときの反応って。ってか、その子、本当に父さんの子どもだよね? 嫌だよ、普通の容姿の子どもだったら。遺伝的に考えて、二人からは色素が薄い子しか産まれないんだから。見たらすぐにわかるじゃない」
――何の話だ?
ひどい言われようだと思うのだが。遊輝の台詞には突っ込みどころが満載で、抜折羅の感覚からは有り得ない台詞が続いている。
「……ちょっと待って。まだ妹かどうか判らないよね? 妊娠初期がどんな状態なのかくらい、知識あるって。……えっと……フライングして、僕と同じ道は辿らせないで。母さん、お願いだから。……あぁ、うん。驚きはしたけど、嬉しく思うよ。……うん。ありがと。慣れない土地で大変だとは思うけど、身体は大事にしてね。……うん。わかった。じゃあ、冬に」
スマートフォンを耳元から離すと、彼にしては珍しく長いため息をついた。
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