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その炎は血よりも紅く
★1★ 9月6日金曜日、放課後
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九月六日金曜日。
遊輝《ゆうき》が下級生を殴って病院送りにしたという噂は翌日には周知のことになっていた。彼は自宅謹慎となり、学校にはいない。紅《こう》も体調が優れないと欠席している。
――俺のせい、かな……。
抜折羅《ばさら》は主のいない紅の席を見ながら、災いをもたらすとされる左肩のホープに触れる。
――俺は彼女を守れなかったんだ……自分の使命を優先したばかりに。
教室でうなだれているとメールを受信する。英文で書かれたそれをみて、抜折羅は静かにしまった。
放課後。生徒会室。
蒼衣《あおい》から呼び出されて訪ねると、彼一人だけだった。文化祭前日ということもあり、青空《あおぞら》瑠璃《るり》も藍染《あいぞめ》海《かい》も出払っているようだ。
二人きりの部屋。抜折羅は蒼衣と向き合う。
「昨日はすまなかったな」
邪魔が入らないことを確認した上で、蒼衣が切り出す。
「いえ……」
「今日は君に頼みがあって呼んだのですよ」
彼からの頼みなど、簡単に想像できる。抜折羅は蒼衣が続きを告げる前に割り込んだ。
「紅から離れろってことですか?」
「わかっていらっしゃるようで話が早い」
蒼衣は冷たく笑う。
「今回の件、俺が招いた災厄だと言いたいんですか?」
口調には責める気持ちはない。ただ淡々とした様子の自身の声色に、抜折羅は密かに安堵する。
――こんなことは慣れている。いつものことじゃないか。
「そうは言っていませんよ。ただ、少し彼女にも気持ちを整理する時間が必要だろうと判断しての提案です」
「なら、良いんですけど。俺自身も整理したいと思っていたんで。紅の護衛、タリスマンオーダー社で手配しておきました。俺はしばらく一人になります。精神的なケアは幼なじみである星章《せいしょう》先輩の方が適任でしょうからね」
「そうですか。もっと紅に固執しているかと思っていたんですが」
表情に変化はなかったが、蒼衣の声には意外に思う気持ちが滲んでいた。
「任務が終わればアメリカに戻るんです。それまでの関係ですよ」
抜折羅はいつもするように、人を避けるような微笑みを作ったのだった。
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