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第3章:欠席

通話、仲直り

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 私の部屋は由奈姉ちゃんと共有している。夕食を終えた今も由奈姉ちゃんは帰ってきていないので、一人で黙々とぬいぐるみ作りに精を出していた。完成まであとわずかだ。
 そんなとき、コノミから電話が掛かってきた。
 昼休みにあんなことがあったので、どこか気まずい。病院に行ってしまったコノミとはあれから顔を合わせることはなかった。
 最初は無視しようかと思った。でも長いことスマートフォンが震えていたので、私はしぶしぶ出ることにしたのだった。

「も……もしもし?」
「もしもし? 結衣?」

 コノミの不安げな声が返ってくる。

「うん……」

 何を話したら良いのかわからなくて、返事をしたっきり黙る。
 謝るなら私からすべきなのだろう。しかし、電話はコノミから掛けてきたのだ。なんと切り出すべきか思い浮かばない。

「きょ……今日の昼休みはゴメンね。わたし……ついかぁっとなっちゃって」
「ううん。私も悪かったし」

 電話では見えないとわかっているのに、つい首を振ってしまう。

「結衣は悪くないよ! それに、わたし、みんなに弁解しなかったし。結衣を悪者にしちゃった。明日、みんなにちゃんと説明するから!」
「――怪我は大丈夫?」

 私は気になっていたことを訊ねる。窓ガラスにひびが入るほど強く打ちつけたのだ。ひょっとしたら、骨が折れているかもしれない。

「あぁ、うん。大丈夫だよ! 打撲だって。今は青くなっていて触ると痛いけど、何の問題もないよ。心配してくれてありがと」

 コノミの明るい声を聞いて、私はとてもほっとした。コノミを突き飛ばしたわけではないが、自分にも原因があるような気がして罪悪感を覚えていたのだ。

「あぁ、よかったぁ」
「……だからさ、わたしのこと、無視したりしないでね? また一緒にお弁当食べよう?」

 一転、コノミは不安そうな声で確認してくる。それで彼女が私との友だち関係を心配して電話を掛けてきたのだとわかった。

「うん、コノミ。無視したりなんてしないし、もちろんお弁当も一緒に食べるよ。――こっちこそゴメンね。コノミがせっかく話してくれるのに上の空でさ、怒る気持ちもわかるよ。明日からは気をつけるから」
「ありがとう! わたし、結衣が大好きだよ! ――じゃあ、また明日ね!」
「また明日」

 私が答えると、電話は切れた。しばらくスマートフォンの画面を眺めていたが、待ち受け画面に戻ったのを合図に私はスマートフォンを机の上に置く。

 ――これで仲直りできたのかな?

 ちゃんとゴメンと言えたことに安堵した。このままでは謝るきっかけを作れないまま、友だちを失うかもしれなかった。

 ――明日、会ったらもう一度謝ろうっと。

 そこで私はふと気づき、机の上の作りかけのぬいぐるみを見る。

 ――そうだ。コノミちゃんにもぬいぐるみをあげよう! どんなのが好きかな?

 コノミをイメージしながら、手に取った本を私は捲った。


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