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筋書きどおりに婚約破棄したのですが、

これは優しいのでしょうか?

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「お前な……どうしてそういう発想になるんだ? 今のところ俺には妻はいないし、婚姻歴もない。男性なら二十七歳で結婚したことがなくてもおかしくはないだろう? 仕事を優先してきたんだ。恋愛をする余裕もなかった」
「そうおっしゃいますけど、私のことを気に入っていたのでしょう?」
「そうだな。ずっと忘れられなかった」

 話はこれで終わりだとばかりに、熱烈な口づけをされた。口封じっぽい荒々しさから次第に甘いものに変化していくと、私の吐息も甘さを帯びる。

 ああ、だめ、呑まれちゃう……

 話を聞き出したかった私は暴れて抵抗するも、結局は押さえつけられて受け入れるしかなくなってしまった。流されるには、まだ早いのに。
 唇が離れると、すかさず言葉を挟んだ。

「ま、待って。私を愛しているなら、少しは言葉を――」
「注文が多いな」

 怒っているというよりもあきれているような声。この状況において、ロータルは想像以上に落ち着いている。

 欲しかったものが手に入りそうなときって、もっと興奮したり焦ったりして、ガッついてきそうなものだけど……変な人。どうしてこんなに余裕があるのかしら。私が逃げられないと確信しているから?

「私は言葉がほしいの。あなたの態度から気持ちが読み取れないから」
「優しくしているだろう? まだキスしかしていない。ドレスを脱がして、肌を触れあわせたいと思っているが、あまり急かすのもよくないからな」
「優しい? 女性に手枷をつけるような人が優しいとは思えないですが」

 私は右手を持ち上げて、ロータルに見せつける。鎖はそれなりの重量もあるので、動くのが億劫だった。

「それは逃がさないようにという意味合いよりも、お前が自殺しないようにつけたんだ。ヨハネス王子に何か言われて、泣きそうになっているのを見たら、よからぬことをするんじゃないかと心配で」

 ロータルはそう答えると、自身のトラウザーズのポケットから小さな鍵を取り出し、私の手枷を解いた。

「これでいいか?」
「あ、ありがとう……」

 鎖はベッドの外に出される。私は自由になったはずだが、ロータルが上に乗っかっているのは変わらないので、そういう感じがしなかった。

「さて、続けるぞ。最後まではするからな」
「ろ、ロータルさん? それ、本気なんですよね……?」

 最後まですると宣言されると、つい身構えてしまう。身体を繋げるのは、怖い。初めてだし。

「お前を慰めるのも目的の一つだからな。ヨハネス王子のことを忘れて、新しい恋に身を委ねるのも悪くはないだろ?」
「えっと……ヨハネスさまを慕ってはおりましたが、恋かと言われると、ちょっと……。政略結婚ですし、私にとっては仕事みたいに感じていたので……」

 なんか微妙に誤解されている気がして、大真面目に訂正してしまった。こんな説明をしても、いまさらな話だろうに。
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