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4:私の選択
挟まれました⁉︎*
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私がふたりから咄嗟に離れようと動く。だがアメシストは進路を塞ぎ、シトリンが退路を塞いだ。
すごい連携ですね?
アメシストが私の頬に手を触れて顔を近づけてきた。離れたくても後ろにシトリンがいるので難しい。
「ふふ。僕たちを異性として意識しているってことかな?」
「いやいやまさか」
私は即答した。わりと冷たい声だったことに驚きである。
「いいんだよ、求めてくれても」
なおもグイグイと迫ってくるので思わず下がる。
背後のシトリンにぶつかると抱き留められ――いや、しっかりと抱きしめられていた。
「否定されるのは、それはそれで悲しいのだが」
「ええっと、ですね……」
完全に挟まれた。ふたりが私の取り合いをしていないのは平和であるが、側から見たら結構きわどい状況のような気がする。
「僕ね、本気出すと君を酔わすことができるんだよ。試してみてもいいかい?」
「酔わない力のほうを使ってほしいですけどねえ?」
私は苦笑した。
アメシストの基本的な能力だ。お酒に強く酔わされることはない一方で、魅力で特定の相手を酔わせることもできるという。
石の効能については私だって詳しいのだ。
「魅了できたら、忌避感はなくなるでしょう?」
「実力で私を魅了したらいかがですか? 能力で迫るのはフェアじゃないと思います」
「むむ……」
私はアメシストを正面から見据えて、はっきりと自分の意見を告げた。
アメシストの手が離れていく。諦めてくれたようだ。
「シトリンさんも、そろそろ離れてくださいな。怒りませんから」
「……名残惜しい」
「アメシストさんが離れてくれたんですから、いつまでもくっついているというのは、ふたりを平等に愛でたい私的にはよろしくないんですよね」
私は怒らないが、アメシストが不機嫌になりそうだ。なかなか離れてくれないのでもぞもぞと身体をゆすると、臍の下あたりを彼の手が撫でた。ゾクっとする。
「……君は嘘つきだ」
「ちょ、ちょっと、変な触り方しないでください。くすぐったい」
「触られるのは嫌じゃないんだろう?」
耳元で囁かれると、彼の低い声が身体の芯を揺さぶるように響く。
なに、これ。
「嫌じゃないからって、いいっていうわけでもないんですよ。離して」
耳にかかる吐息が身体を痺れさせる。抵抗が抵抗にならなくなってきた。
「君が実力で酔わせろと言ったのだぞ?」
なるほどね!
どこで彼はこういう知識を手に入れたのだろう。いや、あるいは本能的なものなのだろうか。シトリンなりに私を誘惑してきているのだと理解した。
いやいや。理解できても、許可は出せない。
「ま、待って待って。これ以上は、ダメ。ダメなの。シトリンさんがとってもお疲れで私の魔力を欲しているのはよぉーっくわかりましたからっ、同じベッドで寝ることを許可しますからっ、ね、これ以上は触らないで」
「声が艶めいてきたな?」
「負けを認めるから、もう……」
くすぐられているわけではない。身体を優しく撫でられているだけなのだ。逃げようとすれば引き戻されるけれど、強く縛り付けられているわけではない。
それなのに、身体が熱い。
「……そうか」
諦めたような声がして、私の体は横抱きにされた。ベッドの真ん中にそっと横たえられる。
「あまり疲れさせるのもよくない。今夜はしっかり休もう」
腰が砕けてしまったみたいで、私は動けない。それに気づいているのか、シトリンは私に毛布をかけてくれた。ありがたい。
すごい連携ですね?
アメシストが私の頬に手を触れて顔を近づけてきた。離れたくても後ろにシトリンがいるので難しい。
「ふふ。僕たちを異性として意識しているってことかな?」
「いやいやまさか」
私は即答した。わりと冷たい声だったことに驚きである。
「いいんだよ、求めてくれても」
なおもグイグイと迫ってくるので思わず下がる。
背後のシトリンにぶつかると抱き留められ――いや、しっかりと抱きしめられていた。
「否定されるのは、それはそれで悲しいのだが」
「ええっと、ですね……」
完全に挟まれた。ふたりが私の取り合いをしていないのは平和であるが、側から見たら結構きわどい状況のような気がする。
「僕ね、本気出すと君を酔わすことができるんだよ。試してみてもいいかい?」
「酔わない力のほうを使ってほしいですけどねえ?」
私は苦笑した。
アメシストの基本的な能力だ。お酒に強く酔わされることはない一方で、魅力で特定の相手を酔わせることもできるという。
石の効能については私だって詳しいのだ。
「魅了できたら、忌避感はなくなるでしょう?」
「実力で私を魅了したらいかがですか? 能力で迫るのはフェアじゃないと思います」
「むむ……」
私はアメシストを正面から見据えて、はっきりと自分の意見を告げた。
アメシストの手が離れていく。諦めてくれたようだ。
「シトリンさんも、そろそろ離れてくださいな。怒りませんから」
「……名残惜しい」
「アメシストさんが離れてくれたんですから、いつまでもくっついているというのは、ふたりを平等に愛でたい私的にはよろしくないんですよね」
私は怒らないが、アメシストが不機嫌になりそうだ。なかなか離れてくれないのでもぞもぞと身体をゆすると、臍の下あたりを彼の手が撫でた。ゾクっとする。
「……君は嘘つきだ」
「ちょ、ちょっと、変な触り方しないでください。くすぐったい」
「触られるのは嫌じゃないんだろう?」
耳元で囁かれると、彼の低い声が身体の芯を揺さぶるように響く。
なに、これ。
「嫌じゃないからって、いいっていうわけでもないんですよ。離して」
耳にかかる吐息が身体を痺れさせる。抵抗が抵抗にならなくなってきた。
「君が実力で酔わせろと言ったのだぞ?」
なるほどね!
どこで彼はこういう知識を手に入れたのだろう。いや、あるいは本能的なものなのだろうか。シトリンなりに私を誘惑してきているのだと理解した。
いやいや。理解できても、許可は出せない。
「ま、待って待って。これ以上は、ダメ。ダメなの。シトリンさんがとってもお疲れで私の魔力を欲しているのはよぉーっくわかりましたからっ、同じベッドで寝ることを許可しますからっ、ね、これ以上は触らないで」
「声が艶めいてきたな?」
「負けを認めるから、もう……」
くすぐられているわけではない。身体を優しく撫でられているだけなのだ。逃げようとすれば引き戻されるけれど、強く縛り付けられているわけではない。
それなのに、身体が熱い。
「……そうか」
諦めたような声がして、私の体は横抱きにされた。ベッドの真ん中にそっと横たえられる。
「あまり疲れさせるのもよくない。今夜はしっかり休もう」
腰が砕けてしまったみたいで、私は動けない。それに気づいているのか、シトリンは私に毛布をかけてくれた。ありがたい。
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