青空の色

小鳥遊 雛人

文字の大きさ
上 下
7 / 9
1色目 雨上がりの空の色

1-5

しおりを挟む
「…で、何色かな!?」

 質問からは逃してくれず、もう一度聞き直してくる彼女。よくわからないが答えないと終わらなさそうだった。

「…青、ですけど」
「なるほど、これも青!でも当たった!」

 彼女が嬉しそうに笑う。よくわからないことだらけだ。


「あの入道雲は白かな!?」
「…はい、白ですね」
「灰色じゃない?」
「はい、白です」
「…敬語やめないかな!?私1年生だし!」
「は、はい…あ、うん。僕も1年生です」
「おぉ、先輩じゃなくて良かった!」

 うんうんと頷いて、彼女の大きな瞳が閉じる。
 サングラス越しでもわかるが、彼女は表情が豊かだった。謎の色に関する問答に答えながらそう思った。

 しかし、彼女の柔らかな空気に当てられて忘れていたが、僕は人を怖がらせてしまう見た目であることを思い出した。

「ぼ、僕のこと怖くない…?」
「え、さっきも言ったけど怖くないよ?」
「…身長大きいし茶髪だし」
「茶髪?あぁ、リュウくん茶髪なんだ!そっか、茶色…それはわからなかったなぁ」

 おぉ!と言った驚きの表情。見ればわかるだろうに、と思った。


 不思議を抱えて空に目を向けると、雨上がりの青い空に綺麗な虹が掛かっていた。
 7色に輝く光。とても幻想的に見えた。

「…綺麗」
「え!?」

 僕が虹を見てそう呟くと、彼女はまた一つ驚き姿勢を糺す。

「意外と大胆だね。いきなり綺麗だ、なんて言われると照れる!」
「え?いや…」

 盛大な勘違い。

「えーっと、虹のことだったんだけど…」

 言うかどうか悩んだが、ナンパしていると思われたくないので傷つけない程度にやんわりと答える。


「…虹!?虹が出てるの!?」

 しかし僕の気遣いは杞憂だったようで、彼女は虹と聞いて目を光らせる。

「ほら、あそこ…」

 見えていないのだろうか?
 僕が指さして彼女を見ると…彼女は指の先ではなく僕のことを見ていた。

「…え?」
「今日の虹も7色なの!?」
「…いつも7色だけど」
「綺麗!?」
「う、うん」

 気になるのなら、僕に聞かずに見ればいいのに。


「あそこにあるけど、見えない?」

 虹は光の反射だから角度によったら見えないかも。そう思って尋ねてみた。
 すると彼女はサングラスの奥からまっすぐ僕を見て─

「うん、見えないよ!たぶん一生!」

 底抜けに明るい、太陽のような笑顔で答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜

赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。 これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。 友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

【ショートショート】星・月のおはなし

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇用、朗読用台本になりますが普通に読んで頂いても楽しめる作品になっています。 声劇用だと1分半〜5分ほど、黙読だと1分〜3分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

処理中です...