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本編

みんなが欲しい言葉

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翌朝、朝食時にセイバースさんが1通の手紙をパパに渡していた。

「大旦那様からです」

どうやらお爺さまが帰ってくる様だ。
お爺さまは前騎士団団長であり、今はセイバースさんのお父さんと息子さんと一緒に王都や他領に視察に行っていたらしい。

いや、待って。
息子ってどういう事?
セイバースさんは独身だと言っていたが、まさかシングルファザーというやつなのだろうか。

「むちゅこしゃん?」
「私の家は代々、養子をとっているのですよ。次期当主に仕える為に同じ年代の子を養子として育てるのです」

凄い。
血の繋がりは無くても、家族は繋がっていくんだとちょっと感動してしまった。

「セイバースの息子は僕と同い年なんだ。牛の獣人だから身体も大きいよ。帰って来たら僕といる事が増えるからルシーにも紹介するね」

豹の息子が牛。
見た目はきっと全然似てないだろう。
紹介してもらえるのが楽しみだ。

「坊っちゃまのお世話係は私ですからね。息子には譲りません。あの子はまだ未熟ですから、遊び相手としても難しいでしょう」

3歳の子供の遊び相手として10歳が難しい訳がない。
というよりもきっと、いや絶対、遊びたく無いだろう。
お屋敷の使用人さん達が毎日嬉々として遊んでくれるので忘れがちだが、普通は幼児と遊ぶ事は面倒臭い事だと思う。
ギル兄様に仕える為に頑張っているであろう息子さんに、自分の事でわざわざ時間を使ってもらうのは申し訳なさすぎる。
そんな無駄な時間があるなら、是非ともギル兄様の為に使って下さい。

「ぼく、ちぇいばーちゅしゃん、しゅき。おちぇわ、うれちいよぉ」
「坊っちゃま!!」

セイバースさんがとても嬉しそうに笑っているその後ろで、シェフと従僕トリオがハンカチを噛んでいた。
何があった。
鼻歌でも歌いそうな勢いのセイバースさんとは反対にズーンと落ち込む4人。
このまま仕事が出来るのだろうかと心配になるレベルだ。

「大丈夫だ。今日が無理でも明日がある。そうだ!今日はプリンを作ろう」
「…ロウ、ダンスの練習をしよう」
「兄さん、ロウさん、いっそミュージカル風にしませんか?」
「そうしよう。尻尾のブラッシングも毎日の習慣にした方がいいだろうな」

よく分からないが、自分達でなんとか復活した様だ。
その様子を見ながらギル兄様が笑っているので自分も朝から嬉しくなる。

「到着は3日後だ。ファル君に会えるのを楽しみにしているみたいだよ」

確かお爺さまも白熊の獣人だと聞いた覚えがある。
もしパパと同じ趣味なら、なりきりコロポックルでお出迎えしようか迷うところだ。
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