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別視点
それぞれの演習 side情報統括隊長④
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そして迎えた演習日。
『貴様、いつから知っていた?』
何故か途轍もなく怒り狂っているカルファ。
俺は何も知らない。
今日はファルシュター君に会えるはずだから機嫌が悪くなる事は無いと思っていたのに。
『あの子は今日、来ないそうだな』
嘘だろう。
ファルシュター君が来てくれなかったら、カルファは絶対に空を駆けてくれない。
「知らない!団長に聞いてくる!」
慌てて団長を探す。
周りを見ると、やる気を失った獣とヤル気で溢れている獣を必死に宥めている団員達が目に付いた。
どうしてこんな事に…。
「団長!ファルシュター君が今日は見学に来ないって本当ですか?」
「ああ。あの子は今日は留守番だよ」
「体調が悪いんですか?」
「違うよ。ファル君が見てるとみんな張り切っちゃって連携が取れないだろうからね」
そんな…。
今更、ファルシュター君が来ないとわかる方が連携なんて取れないだろう。
決まっていた事なら先に教えておいて欲しかった。
俺は今日、家族まで呼んでしまっている。
こんな事なら演習がある事など絶対に言わなかったのに…。
怒り狂っていたカルファを思い出して身震いが止まらない。
もういっそ、やる気を失ってくれればいい。
空どころか陸地だって駆けなくていい。
始末書ぐらいいくらでも書こう。
だからどうか、俺を無事に帰らせてくれ。
そんな願いは演習が開始されると同時に儚くも砕け散った。
カルファは俺を背に乗せ空を駆けてくれた。
家族はそんなカルファを見て興奮し手を振っている。
だが俺は手を振り返す余裕もなく鞍と手綱にしがみつき、必死に謝り続けていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。明日、必ずファルシュター君に会える様にします。お願いします。降ろして下さい」
『良いだろう』
安心したのも束の間、カルファは上空から俺を振り落とした。
違う。
降りたかったけど、この方法は望んでない。
「うわーー!!」
魔法で守られている為、死ぬ事はないだろうが壮絶な痛みと粉砕骨折は免れないだろう。
だがカルファは地面に落ちる前になんと助けてくれたのだ。
さすが相棒。
やはりカルファは優しいのだ。
しかし本当の地獄はここから始まった。
『空を駆ける姿を見せたかったのだろう』
カルファは何度も何度も空を駆け、その度に上空から俺を振り落とし続けた。
見学者は皆、余興だと思っているのか笑顔だが、俺は恐怖で叫ぶ事しか出来なかった。
正直、漏らさなかったのが奇跡だと思う。
気付けば医療隊の詰所で温かいお茶を飲んでいた。
どうやら恐慌状態に陥った俺は、同じように相棒の被害にあった同僚を高笑いをしたまま医療隊の詰所まで運んでいたそうだ。
家族は俺がカルファの勇姿を見せれた事が嬉しくて笑っているのだと思っていたらしい。
そして俺は心に誓った。
二度とファルシュター君関係でカルファに隠し事や嘘は吐かないと。
だが今回の様に俺の知らない間に事件が起きてしまう事もあるだろう。
その為にも俺は、ファルシュター君と仲良くなろうと思う。
ファルシュター君から直接、情報をもらい事細かにカルファに伝えるのだ。
俺は情報統括隊の隊長だ。
情報の重要性は誰よりも理解している。
ファルシュター君、君に出会わなければ俺はこんな気持ちを知る事はなかっただろう。
自分の命惜しさにストーカー(周囲にのみ過激派)に情報を売るとんでもなくクズなスパイの気持ちなんて、知りたくなかった。
『貴様、いつから知っていた?』
何故か途轍もなく怒り狂っているカルファ。
俺は何も知らない。
今日はファルシュター君に会えるはずだから機嫌が悪くなる事は無いと思っていたのに。
『あの子は今日、来ないそうだな』
嘘だろう。
ファルシュター君が来てくれなかったら、カルファは絶対に空を駆けてくれない。
「知らない!団長に聞いてくる!」
慌てて団長を探す。
周りを見ると、やる気を失った獣とヤル気で溢れている獣を必死に宥めている団員達が目に付いた。
どうしてこんな事に…。
「団長!ファルシュター君が今日は見学に来ないって本当ですか?」
「ああ。あの子は今日は留守番だよ」
「体調が悪いんですか?」
「違うよ。ファル君が見てるとみんな張り切っちゃって連携が取れないだろうからね」
そんな…。
今更、ファルシュター君が来ないとわかる方が連携なんて取れないだろう。
決まっていた事なら先に教えておいて欲しかった。
俺は今日、家族まで呼んでしまっている。
こんな事なら演習がある事など絶対に言わなかったのに…。
怒り狂っていたカルファを思い出して身震いが止まらない。
もういっそ、やる気を失ってくれればいい。
空どころか陸地だって駆けなくていい。
始末書ぐらいいくらでも書こう。
だからどうか、俺を無事に帰らせてくれ。
そんな願いは演習が開始されると同時に儚くも砕け散った。
カルファは俺を背に乗せ空を駆けてくれた。
家族はそんなカルファを見て興奮し手を振っている。
だが俺は手を振り返す余裕もなく鞍と手綱にしがみつき、必死に謝り続けていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。明日、必ずファルシュター君に会える様にします。お願いします。降ろして下さい」
『良いだろう』
安心したのも束の間、カルファは上空から俺を振り落とした。
違う。
降りたかったけど、この方法は望んでない。
「うわーー!!」
魔法で守られている為、死ぬ事はないだろうが壮絶な痛みと粉砕骨折は免れないだろう。
だがカルファは地面に落ちる前になんと助けてくれたのだ。
さすが相棒。
やはりカルファは優しいのだ。
しかし本当の地獄はここから始まった。
『空を駆ける姿を見せたかったのだろう』
カルファは何度も何度も空を駆け、その度に上空から俺を振り落とし続けた。
見学者は皆、余興だと思っているのか笑顔だが、俺は恐怖で叫ぶ事しか出来なかった。
正直、漏らさなかったのが奇跡だと思う。
気付けば医療隊の詰所で温かいお茶を飲んでいた。
どうやら恐慌状態に陥った俺は、同じように相棒の被害にあった同僚を高笑いをしたまま医療隊の詰所まで運んでいたそうだ。
家族は俺がカルファの勇姿を見せれた事が嬉しくて笑っているのだと思っていたらしい。
そして俺は心に誓った。
二度とファルシュター君関係でカルファに隠し事や嘘は吐かないと。
だが今回の様に俺の知らない間に事件が起きてしまう事もあるだろう。
その為にも俺は、ファルシュター君と仲良くなろうと思う。
ファルシュター君から直接、情報をもらい事細かにカルファに伝えるのだ。
俺は情報統括隊の隊長だ。
情報の重要性は誰よりも理解している。
ファルシュター君、君に出会わなければ俺はこんな気持ちを知る事はなかっただろう。
自分の命惜しさにストーカー(周囲にのみ過激派)に情報を売るとんでもなくクズなスパイの気持ちなんて、知りたくなかった。
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