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本編

さよなら、きのこ

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そんな自分を笑顔で見つめながら、ギル兄様は髪を纏めていた紐をスルスルと解いた。
神々しさが格段にグレードアップした。
緩く纏められていた御髪も素敵だったが、長めの銀髪がサラサラと流れる様には言葉が出てこない。

さすが美の化身、神様である。

そんな神様は御自身が使用されていた尊い紐で、キノコの妖怪の前髪を結んで下さった。
ただし、前髪はぱっつんなので中央に短いちょんまげが立っただけだ。

しかし、やはり神様はそのままでは終わらなかった。
小さめの花と何かのキレイな羽で飾りを作って下さったのだ。
キノコの妖怪は無事に浄化された。

「今はこれしか出来ないけど、これからは毎日リボンや飾りで可愛く纏めてあげる。髪の毛なんかすぐ伸びるからね。可愛い僕のルシー、大好きだよ」

流れる様に抱っこされ、むき出しになった額にキスしてもらう。
下ろした髪を耳にかける仕草が10歳とは思えない色っぽさでドキドキしてしまった。
今でこれなら大人になったギル兄様の破壊力は凄まじい事になってしまうのではないだろうか。
今でも老若男女を魅了する美少年なのに、セクシーやワイルドまで加わった美青年になると今以上に近付きにくい存在になってしまう。
人垣に囲まれるギル兄様が容易に想像できた。

「にいしゃま、ぼくも、だいちゅき」

義弟ポジションをこのままキープし続け、隣もしくは斜め後ろぐらいに控えているのが普通という認識を作っていこう。

「こんなに可愛いルシーとこれから毎日一緒にいられるなんて嬉しいよ」
「私だってファル君の父親になれて本当に嬉しい」
「この屋敷で働いている全員が坊っちゃまが来てくださって嬉しく思っています。早く紹介されたくてウズウズしているはずです」

確かに外見がキノコの妖怪でも、みんな可愛いと言ってくれていた。
美的感覚を不思議に思うが、好意は素直に嬉しいので嫌われない様に言うことをちゃんと聞いて良い子になろうと思う。

「ワッハッハ!キノコって!ファルの髪型は似合っていて可愛いのにな。本人は気に入らないのか!」
「ぶぅー。ルイしゃ、これ、にあう、ちがうのぉ」
「ルアンも可愛いって大絶賛だぞ。自信持てって!」

キノコの妖怪に自信を持つ必要はないだろうが小さくなっている熊と虎も頷いているので、どうやら此処では自分くらいの年齢がキノコカットにされる事は普通なのかもしれない。
大笑いしているルイに頬を膨らませて抗議するが、ギル兄様にその頬を突いて遊ばれてしまう。

「さあ、みんな待ってるよ。可愛いルシーをお披露目しなきゃね」

得意の一発芸なりきりコロポックル(自己紹介)が出来ないので、何か皆様の心を鷲掴みにする方法を考えなければいけない。
フードを被るとせっかくギル兄様が作って下さったちょんまげがとれてしまうので、子豹にもなれないがとりあえず笑顔を絶やさない様にはしようと思う。

そして、ギル兄様から離れない様にしがみついていよう。

神様が側にいてくれれば、大抵の事は何とかなるのだ。
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