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別視点
side ギルバート②
しおりを挟む『しっかり勉強しろ。この地を守る為の知識はどれだけあっても足りない』
『鍛錬の時間だ。着いて来い。お前は竜人だ。魔力、体力、筋力全てを鍛えろ。瞬発力、判断力もだ』
『嫌なら付き合わなければいい。他人と無駄な時間を共有するより力をつけろ』
『…もう少し笑え。我らの愛しい子が来た時その能面の様な顔では我まで嫌われそうだ』
あの日から毎日色々言われていたが、最後のはいつまで経っても意味がわからなかった。
3年間、勉強も鍛錬も少しでも高みに昇れるよう必死で食らいついた。
そして去年、騎士団に入団した。
騎士団には獣人族も人族もいるが、各々の相棒の個性が強すぎる為か、誰も僕に鱗やツノがあっても気にした様子がなかった。
純粋に力だけで評価してくれる事が嬉しい。
入団から1年後。
運命の日。
僕は天使に会った。
父上と副団長のルイさんが揃って楽園に来る事自体珍しいのだが、もう1人小さなお客様がいた。
この森に団員以外が入るには面倒な手続きが必要となる。
だから元々、一般の人が来る事は少ないし、僕が森にいる時は団員でさえ遠慮してくれているのか遭遇する事がない。
その森へ2人がわざわざお客様をつれてきたのだ。
何か急用かもしれない。
僕はソラとシーザーと訓練中だった。
シーザーは父上の相棒だが僕が産まれた時から一緒に暮らしている為、僕の鍛錬にも付き合ってくれる優しい熊だ。
「シーちゃん!」
呼ばれた瞬間にシーザーは走り出していた。
巨大な熊に全く恐れる事なく抱きついている小さな子供。
シーザーも嬉しそうに幼子の顔中を舐めている。
あり得ない光景だった。
「あぁ我らの愛しい子だ。会いたかった。早く我も名を呼ばれたい」
ソラも興奮しているのがわかる。
とりあえず父上に声をかけた。
幼子と目が合った。
泣かれてしまうかもしれない。
僕は化け物だから。
幼子は目が合った瞬間、僕に向かって必死に走っているのだがトテトテと音がしそうな程、ゆっくりだ。
それでも全力で僕に向かって走ってくる幼子が可愛かった。
泣かせたくないな。
こんなにも自分の化け物じみた容姿を悔やんだ事はないだろう。
「はじめまして!」
キラキラした瞳のまま、僕と目を合わせて元気に挨拶してくれた。
泣き出す事もなく、嫌悪感も見当たらない。
それどころか信じられないくらい嬉しそうにニコニコと笑ってくれる。
「お兄ちゃん、キラキラ。カッコいい」
僕のツノも鱗もかっこいいという幼子。
お揃いが欲しいとまで言ってくれる。
その言葉に嘘も誤魔化しも一切見られない。
只々、純粋な好意。
僕を好きだと全身で訴えてくれているのが誰の目から見てもわかるだろう。
僕と手を繋ぎたいと両手を上げているのもとても可愛い。
「僕が怖くない?」
問いかけると不思議そうに首を傾げる。
「気持ち悪いだろう?」
幼子の目の前に両手を出し鱗を見せる。
他人にこんなにも近くで鱗を見せたのは初めてで緊張してしまう。
「触っても、いいんですか!?」
にぱっと花が咲いた様に笑うと、何故か自分の手を上着でゴシゴシと拭っている。
どうしよう。
本当に可愛い。
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