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第八話 テーラル目線 ~オレは悪くない~ *ざまぁ回
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「失礼します」
お父さまの部屋に入る。
一応挨拶は敬語にした。
「おい、テーラル。俺はソフィアを連れ戻せといったはずだ。なぜシニストラ王国の王妃に目をつけられて帰ってくる」
「おっお父さま、誤解です! ソフィアが悪いのです! ソフィアが被害者ぶって王妃に泣きつき、王妃がオレの話を聞いてくれなかったのだ」
そうだ。
オレは悪くない。
「それならなぜシニストラ王国からこの手紙が届いているか説明できるか?」
「手紙とは……?」
「今、要約して読み上げる」
「わかりました」
どんな内容なのだろう。
お父さまは手紙を広げ、要約して読み始めた。
「テーラルがソフィアを連れ戻そうとして、宿に迷惑をかけた。テーラルが火を放ったがソフィアの結界のおかげでけが人は出なかった。罰は現国王に任せます。だそうだ」
は?
確かに火を放ったのは悪かったといえば悪かったが、けが人どころか被害は何もなかったはずだ。
「不思議そうな顔をしているな」
「だって、被害が出なかったのでしょう? だからオレが罰せられることなど……」
「そもそも他国で犯罪行為を王子がおこなったというのが問題なのだ。そこで俺は罰を決めた」
なっ、罰を決めた、だと。
ありえない。
オレは王子なのだぞ。
「お父さま! 待ってください!」
「待たぬ。テーラル、おまえは結界の維持をしろ。魔力だけは多いからな。結界に魔力を流し続けろ。期限は新たな聖女がここに来るまでだ」
はああぁぁ!?
何でオレがそんな面倒くさいことをしなくてはならないのだ。
カミラを愛でる時間も足りなくなってしまう。
「お父さま! なぜオレがそんな仕事をしないといけないのですか!」
「これでもかなり罰を軽くしたのだ。本当だったら追放してもよかったのだ。文句をいわずにやれ!」
「はっはいぃ!」
怒鳴ったお父さまに驚いてついつい返事をしてしまった。
だが、追放せずにやり直す機会を与えるというお父さまの考えは素晴らしい。
「さあ、今から神殿に行こう。もうお前が行くことはいってあるからな。行くぞ」
「なっ、先にカミラにこのことを告げなくては」
「ダメだ」
「なぜですか!」
「いいから行くぞ!」
お父さまにむりやり神殿に連れていかれる。
「やめろ!」「はなせ!」といっても、暴れても無駄だった。
オレは神殿の中に放り込まれた。
「国のために頑張るんだな、テーラル」
お父さまはそれだけいうと出ていった。
周りの視線が痛い。
だが、オレは王子だ。
お父さまはオレの王位継承権を破棄しなかった。
ということはここで成果をだせばオレは国王になれるのだ。
やってやろうじゃないか。
「おい、お前ら! このオレが来たからには結界はもう平気だ! 全員、仕事に戻れ!」
オレのやることは、こいつらがサボらないように見張ることだ。
だからオレはそう、大きな声で命令した。
バシンッ。
左頬、それもソフィアに叩かれた場所の近くに強い痛みが走った。
一瞬なにをされたのかわからなかった。
「テーラル様! いや、テーラル! お前に命令する権利はない! 魔力を流すのだ! わかったか!」
「おい! オレを呼び捨てにするな!」
「お前なんか呼び捨てで十分だ! いいか、ここでの仕事は休憩が大事なんだ。休憩をせずに仕事を続ければやがて魔力が枯渇し、最悪死に至る。わかったか!」
は? 死ぬ?
確かに魔力が枯渇すると危険と学園で習った。
だが、ここにいるやつらは自称優秀なのだろう?
なぜ、仕事を続けるだけで死ぬのだ?
「テーラル、お前はここで魔力を流せ。安心しろ、休憩は交代で取っている。休憩までの時間、魔力を流す。それがお前に与えられた仕事だ」
「オレに命令するな!」
「これは国王様からの命令だ。もしテーラルがサボり続けていた場合、罰の内容を変え、追放するとも聞いている」
追放だけはされたくない。
そうなるとオレは魔力を結界に流すしかないのか……?
「なっ、じゃあオレはここで魔力を流す以外の選択肢がないのか?」
「ああ、だが安心しろ。飯は王宮のシェフが作るものだからな。さあ、やるぞ」
オレは周りに見はられながら、魔力を結界に流し始めた。
だが、思っていたよりどんどん魔力が消えていく。
これを毎日やるとなるとため息がでる。
「そうそう、テーラル、お前の最初の休憩は今から五時間後だ。それまでは耐えるのだな」
「なっ……。これを五時間だと! それではオレが死んでしまうではないか!」
「いえ、死にませんよ。作業時間はその人の持っている魔力量によって変わります。あなたの魔力量は多いのですよ」
オレの魔力はそんなに多いのか。
なるほど。
こいつら、バカだがオレの価値は理解しているらしい。
それならここのトップに上り詰めるまで頑張ってやろうじゃないか。
そして、オレの地獄の日々が始まった。
・*・*・*・*・*・*・
一か月後。
ここに来た時点でいた魔導士の半分ほどが消えた。
死んだものと逃亡したものだ。
そして、今日。
ついに結界が砕け散った。
パラパラと綺麗な破片が宙を漂っている。
オレは力が抜け、地面に膝をついた。
結界を維持する魔力が足りなくなったのではない。
不安定な結界だったため、魔獣の群れによる攻撃を耐えられなかったのだ。
「終わりだ……。この国はもう終わりだ……」
結界が解かれてしまったら、この国は終わる。
なぜかって?
回復術師も、魔導士ももうあまりいないのだ。
騎士はいるにはいるが人数が少ない。
この国を守ることの出来る人がほとんどいないのだ。
・*・*・*・*・*・*・
そして、一週間後。
王宮にも魔獣がやってきた。
抵抗する力などもう残っていなくて、次々魔獣に襲われていく。
この日、ノルデン王国は長い歴史に幕を閉じた。
お父さまの部屋に入る。
一応挨拶は敬語にした。
「おい、テーラル。俺はソフィアを連れ戻せといったはずだ。なぜシニストラ王国の王妃に目をつけられて帰ってくる」
「おっお父さま、誤解です! ソフィアが悪いのです! ソフィアが被害者ぶって王妃に泣きつき、王妃がオレの話を聞いてくれなかったのだ」
そうだ。
オレは悪くない。
「それならなぜシニストラ王国からこの手紙が届いているか説明できるか?」
「手紙とは……?」
「今、要約して読み上げる」
「わかりました」
どんな内容なのだろう。
お父さまは手紙を広げ、要約して読み始めた。
「テーラルがソフィアを連れ戻そうとして、宿に迷惑をかけた。テーラルが火を放ったがソフィアの結界のおかげでけが人は出なかった。罰は現国王に任せます。だそうだ」
は?
確かに火を放ったのは悪かったといえば悪かったが、けが人どころか被害は何もなかったはずだ。
「不思議そうな顔をしているな」
「だって、被害が出なかったのでしょう? だからオレが罰せられることなど……」
「そもそも他国で犯罪行為を王子がおこなったというのが問題なのだ。そこで俺は罰を決めた」
なっ、罰を決めた、だと。
ありえない。
オレは王子なのだぞ。
「お父さま! 待ってください!」
「待たぬ。テーラル、おまえは結界の維持をしろ。魔力だけは多いからな。結界に魔力を流し続けろ。期限は新たな聖女がここに来るまでだ」
はああぁぁ!?
何でオレがそんな面倒くさいことをしなくてはならないのだ。
カミラを愛でる時間も足りなくなってしまう。
「お父さま! なぜオレがそんな仕事をしないといけないのですか!」
「これでもかなり罰を軽くしたのだ。本当だったら追放してもよかったのだ。文句をいわずにやれ!」
「はっはいぃ!」
怒鳴ったお父さまに驚いてついつい返事をしてしまった。
だが、追放せずにやり直す機会を与えるというお父さまの考えは素晴らしい。
「さあ、今から神殿に行こう。もうお前が行くことはいってあるからな。行くぞ」
「なっ、先にカミラにこのことを告げなくては」
「ダメだ」
「なぜですか!」
「いいから行くぞ!」
お父さまにむりやり神殿に連れていかれる。
「やめろ!」「はなせ!」といっても、暴れても無駄だった。
オレは神殿の中に放り込まれた。
「国のために頑張るんだな、テーラル」
お父さまはそれだけいうと出ていった。
周りの視線が痛い。
だが、オレは王子だ。
お父さまはオレの王位継承権を破棄しなかった。
ということはここで成果をだせばオレは国王になれるのだ。
やってやろうじゃないか。
「おい、お前ら! このオレが来たからには結界はもう平気だ! 全員、仕事に戻れ!」
オレのやることは、こいつらがサボらないように見張ることだ。
だからオレはそう、大きな声で命令した。
バシンッ。
左頬、それもソフィアに叩かれた場所の近くに強い痛みが走った。
一瞬なにをされたのかわからなかった。
「テーラル様! いや、テーラル! お前に命令する権利はない! 魔力を流すのだ! わかったか!」
「おい! オレを呼び捨てにするな!」
「お前なんか呼び捨てで十分だ! いいか、ここでの仕事は休憩が大事なんだ。休憩をせずに仕事を続ければやがて魔力が枯渇し、最悪死に至る。わかったか!」
は? 死ぬ?
確かに魔力が枯渇すると危険と学園で習った。
だが、ここにいるやつらは自称優秀なのだろう?
なぜ、仕事を続けるだけで死ぬのだ?
「テーラル、お前はここで魔力を流せ。安心しろ、休憩は交代で取っている。休憩までの時間、魔力を流す。それがお前に与えられた仕事だ」
「オレに命令するな!」
「これは国王様からの命令だ。もしテーラルがサボり続けていた場合、罰の内容を変え、追放するとも聞いている」
追放だけはされたくない。
そうなるとオレは魔力を結界に流すしかないのか……?
「なっ、じゃあオレはここで魔力を流す以外の選択肢がないのか?」
「ああ、だが安心しろ。飯は王宮のシェフが作るものだからな。さあ、やるぞ」
オレは周りに見はられながら、魔力を結界に流し始めた。
だが、思っていたよりどんどん魔力が消えていく。
これを毎日やるとなるとため息がでる。
「そうそう、テーラル、お前の最初の休憩は今から五時間後だ。それまでは耐えるのだな」
「なっ……。これを五時間だと! それではオレが死んでしまうではないか!」
「いえ、死にませんよ。作業時間はその人の持っている魔力量によって変わります。あなたの魔力量は多いのですよ」
オレの魔力はそんなに多いのか。
なるほど。
こいつら、バカだがオレの価値は理解しているらしい。
それならここのトップに上り詰めるまで頑張ってやろうじゃないか。
そして、オレの地獄の日々が始まった。
・*・*・*・*・*・*・
一か月後。
ここに来た時点でいた魔導士の半分ほどが消えた。
死んだものと逃亡したものだ。
そして、今日。
ついに結界が砕け散った。
パラパラと綺麗な破片が宙を漂っている。
オレは力が抜け、地面に膝をついた。
結界を維持する魔力が足りなくなったのではない。
不安定な結界だったため、魔獣の群れによる攻撃を耐えられなかったのだ。
「終わりだ……。この国はもう終わりだ……」
結界が解かれてしまったら、この国は終わる。
なぜかって?
回復術師も、魔導士ももうあまりいないのだ。
騎士はいるにはいるが人数が少ない。
この国を守ることの出来る人がほとんどいないのだ。
・*・*・*・*・*・*・
そして、一週間後。
王宮にも魔獣がやってきた。
抵抗する力などもう残っていなくて、次々魔獣に襲われていく。
この日、ノルデン王国は長い歴史に幕を閉じた。
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