155 / 330
147 迷宮テスト
しおりを挟む
~ピピピ・ピピピ・ピピピ~
~おはようございます、マスター~
~領域より18,500 DPを回収しました~
~侵入者を撃退し、36,859 DPを取得しました~
~所持DPの端数を利用し、世界樹に対して<成長>を執行します~
~迷宮化が終了しております~
~領域拡張が終了しております~
「あ~、あ~……うん、大丈夫でしょうかね?」
「おはようなの! 元に戻ったなの!」
「おはようございます。うん、世界樹さんが言うなら大丈夫かな」
肉体から魂が離れすぎると、精神状態が魂側に引っ張られでもするのか……昨日は感覚がおかしかったかですからね、戻ってよかった。勢いと感覚だけで行動している姿は、精霊族の方達のそれでしたからね、また同様の事が起きないとも限りませんし、何か対策でも考えましょうか。
まぁ、それは後でやるとして、手始めに確認と行きましょうかね。ちょっと予想外な呼び出しが有ったせいで、色々と滞っていますし、本気で処理しましょう。
「コアさん、情報処理モード」
~ 了解。魂の回路を拡張、情報処理モードを起動します ~
使うスキルは、<思考加速><平行思考><思考分立><思考統制><念話><集中>その他もろもろ。これを一度に処理できるコアさん、ほんと凄いですわ。
そして、それを受ける俺の方は、長時間の使用に耐えられないので、ぱっぱと処理しちゃいましょう!
先ず現状の確認だが、俺が眠りについてから7日程経っていた。
本来はもう少し早く済むはずだったらしいが、どうやらコアさんと空間の繋がりを一度切ってしまった為に、少しずれて仕舞ったらしい、ぐぬぬ。
その間に、ダンジョンに潜入してきたのは、いつもの魔物のみ。因みにその全てが、外の世界からやって来た駆除対象だった。駆除対象については、後で全員に通達しないといけないですね。
次に…ゴトーさんからの報告で、人の国の方で動きがあったらしい。エスタール帝国から、探索第二陣の準備が進められているっぽい。第一陣が結構早く来たから、もっと動きが速い可能性を考えていましたが、まぁ国が動くならこんなもんなのかもしれないですね。寧ろ、第一陣が速すぎるんですよ、全く。
それよりもヤバいのが、南西のカッターナ王国の方だ。此方にもゴトーさんが赴いており、情報収集に努めてくれていたらしい。フットワーク軽いな~。
結果だけ上げると、カッターナのハンターギルドが、近々こちらに向かって来る可能性大との事。
……ハンターって、冒険者からの情報を得て、狩りや収集を行う国や地方が運営する機関の俗称じゃ無かったでしたっけ? 情報も無いのに、何でもう来るので?
なになに……資源不足? 森が無くて、燃料の木材が確保できないから? 確かカッターナって、巨大な鉱山を所有する国でしたね、それの製錬に使うのか。エスタールよりも近いですし、来るならカッターナの方が速いでしょうが、少々無謀過ぎるのでは無いでしょうか? それとも、そんな事を気にする余裕が無い程、切羽詰まっているんでしょうかね?
獣人さん方の話を聞くに、余りいい印象が無いので、関わるのは最小限にしたいんですがね~。災害時の備蓄や対策がされて居ないって事は、それだけ先が見えていないって事でしょう? 嫌だな~~~まともに交渉できますかね~。
まぁそんな訳で、情報をよこせと、冒険者ギルドもせっつかれている様ですが、ギルドとしては慎重に行動したいらしく、受注依頼の形で全国のギルドにて掲示(ある意味国の情報をリーク)。それを見たエスタール帝国から、無用な刺激を掛けて状態が悪化したら困るって事で、抗議が行っているらしい。
え? カッターナがエスタールに、抜け駆けを狙っていると逆に抗議? そのせいで、エスタール側の第二調査隊の編成が遅れている? ……調査と採掘は一緒じゃ無いでしょうに。遅れるのは有り難いですが。
獣人さん方は、【魔吸石】が設置され、魔力濃度が低い所に案内してくれたのか、それぞれの部族に分かれて定住してくれたご様子。魔吸石の結晶体を中心に、簡素な家がチラホラできていた。まだ復興とはいかないが、生活自体はできている様ですね。本格的な建築は、まだまだ先になりそうだ。
世界樹さんを中心に、基本は西北の森の中、一部北の草原と西の湿地帯に分布している。流石に、東北の火山地帯や東の山脈地帯、南の雪原地帯には居ない。元が森に棲んでいた方々ですからね、この結果は必然でしょう。
大体こんなもんでしょうかね? 領域拡張が予定よりも進んでしまい、山の向こうにまで行ってしまいましたが、問題なし! 取り敢えず、円形拡張に切り替えて貰った。
山の要塞化も順調に進んでいる。領域が到着した為、内部の詳細も見る事ができた。
何と言うか、うん、まさに要塞だった。
立体的な迷路の様に伸びた、複雑に枝分かれした通路に、各地扉や隠し通路。地表への出入り口は現在作成中なのか、地中から掘り出した石を積み上げて、防壁の様に仕上げている最中だった。
確かに、警告の意味を込めて、異様さを出そうって案は出ていましたけど、まんま要塞をイメージして造りましたか。これなら完全に人工物ですし、警告の体を成すでしょうね。
あ、要塞に成っている場所の南側、山の麓に水溜まりってか、泥だまりができている。属性の偏りから、元から湿地帯ぽい性質がありましたが、とうとう沼になって仕舞いましたか。ですが、未だに植物の成長が間に合っていませんね。お陰で、水属性過多になって、属性に乱れができてしまっている様子。河水の終着点でもありますし、道中の湿地帯で、安定した沼地は既にあります。
……水生の魔物たちの住処を増やしていきたいですし、ここは湖にでもして仕舞いましょうか、後で相談ですね。
今までは砂地ばかりで、水なんて殆ど保持できませんでしたしね。泥になった土については、要塞づくりの際に出た土が原因っぽい? よく掘ったもんですわ。領域も追いつきましたし、一部迷宮化して、倉庫に入れられるようにしておきましょう。
因みにショタ神様ですが、就任直後って事も有って、こっちの事情を全く把握していなかった。細かい事を見るのも大変みたいですしね、こればっかりは仕方がない。時間の感覚も違うでしょうしね~。
現状はこんなもんです。では、本命の獣人さん方の方に戻りましょうかね。
「「「連れて来たー」」」
ちょうど代表者たちの御迎えも終わり、世界樹さんの元に集合完了。本当は、俺の方から訪れるのが一番なんでしょうが、流石に止められたのでこれで妥協となった。話の途中で抜けたのは俺の方な分、いたたまれない。
―――
(すいませんね~、話の途中で離脱してしまって。何か問題は起きていますか?)
「いや、今のところ何もない。つい先ほどまで、そちらに所属している魔物が護衛に付いていた、感謝する」
代表として、鼠人のチェットさんが話をするようですが……皆さん、そんな事をしていたんですか。え? 折角引き入れたのに、俺がいない間に死なれたら困るから?
まぁ被害が出過ぎると、こちらとしても目覚めが悪いですが、彼等だって結構強いですし、<幹部>ならともかく野生の魔物に対して一方的になる事は、無いと思いますけどね。
「分かれていた仲間も、無事に引き入れる事ができた。死人もほとんどおらず、怪我人も道中で治療してもらった。今は、他の部族と協力して拠点の建造を急いでいる」
「迷宮の主ダンマスよ、他の部族を代表して、感謝の言葉を述べさせてくれ。ありがとう、お陰で血を絶やさずに済んだ」
どうやら、捜索隊達が到着する前に飛竜の群れに見つかり、何人か死亡者が出て仕舞っていたらしい。その代わり、ルナさんが到着してからは、被害が無かったのは不幸中の幸いと言ったところでしょうか、皆さんには後でお礼をしておきましょう。
……ルナさんの名前が出た途端、怯え出す人がチラホラ見られるのですが、一体何があったんでしょう?
「そう言えば、儂らに頼みたいことが有ったようじゃったが、何だったのかのぅ? 確か、魔道具が何とか言っとったが…」
ん? おぉ、エルフ爺さん、覚えていてくれていましたか。ありがたや、ありがたや。
(ダンジョンに所属している魔道具職人が居るのですが、その者が作った魔道具の評価テストをお願いしたかったんですよ)
「テスト……」
あれ? 何故か皆さん引いているんですが、何故でしょう?
「それは、我々の中から、実験体を出せ…という事だろうか?」
(んん? ……いやいやいや、違いますよ? 魔道具を使った感想や、評価をお願いしたいだけです。人種から見て、どの程度のモノなのか評価して欲しいのです)
人体実験とか、なんで最初に出る考えがそれなんですか。発想が怖いですね~もう。敵でないなら、そんな事をしたりしませんよ。
「敵だったら、やるんかのぅ……」
エルフ爺さん、シャラップです。
―――
点在する獣人達の集落の中心辺り。何もないそこに、事前に設計して置いておいた、ダンジョンを創る。
入り口として、四方に入り口が開け放たれた、石造りの小さな塔が現れる。地下の方は、石造りにしたせいで、置き換えに時間が掛かっている感じですね、スポーンによる魔物精製諸共、少々お待ちを。
「……この中に?」
(はい、ついでですから、ダンジョンの性能テストも兼ねてって事で、低レベルダンジョンの中に置いてみました。ダンジョンのレベルに合っているかも評価お願い致します)
ダンジョン:エリア【ガラクタ置き場】 魔物レベルE~F
入り口には魔吸石の結晶体が設置されているので、低階層程中の魔力濃度が少なく、敵の能力も低く罠も殆どない。脅威となるのは、低レベルの魔物と……報酬になる魔道具位かな? 暴発はしないけど、扱いを間違えて自爆は有り得ますしね。
「ダンジョンって事は、手に入れた魔道具は好きにしていいのか?」
(構いませんよ、むしろそれが報酬と考えて下さい)
「「「む~~~」」」
皆さん、相当渋い顔をされて居らっしゃる。何が問題なのでしょう?
「魔道具が報酬とは、かなりの高難度を想定する必要がありそうじゃのぅ」
「うむ、強制はできんな。有志を募り、挑むしか無かろう」
「俺は行くぜ、牛人長として、前線に立たない訳にはいかねぇ」
……なんか、相当真剣に捉えられているのですが、なぜ?
「迷宮産の魔道具、迷宮具は、ダンジョンからの収穫としては、最高級だ。それこそ、金銀財宝なんて、目でもねぇ」
あぁ、そう言えばエンバーでも、魔道具が一般に普及している様な感じが無かったですね。やはり高級品扱いでしたか。ですが迷宮の名前の通り、この中に有るのは家の職人たちが作った中でも、何らかの欠点を持った失敗作なんですよね~。なので、迷宮具? ではなく、欠陥魔道具が置いてあると考えた方が、正しいですかね?
(なので、そんなにマジにならなくても良いですよ。この森で生きていける時点で、魔物に負けることは無いでしょうしね)
「……つまり、迷宮で生み出したのではなく、魔道具を自作したのか?」
(まぁ、そうですね。その為の性能評価テストです。それに、自作した方がコストが掛かりませんし、楽しいですよ?)
俺もちょくちょく顔を出して、自作したりしていましたからね、プログラミングとかパズルみたいな感覚で、これが結構楽しいんですよ。
……魔術の式自体を報酬にするのもアリかも知れないですね、どの様な効果が有るかも記しておけば、世界規模の自爆も起きないでしょうし。そもそも、どんな式を組んだら世界規模の自爆何て起きるのでしょうか? 自爆自体は家のマッドな職人たちが良くしていますが、あれは魔力の過剰供給による、キャパオーバーが主ですしね~。後で、通信テストも兼ねて聞いてみますか。
~おはようございます、マスター~
~領域より18,500 DPを回収しました~
~侵入者を撃退し、36,859 DPを取得しました~
~所持DPの端数を利用し、世界樹に対して<成長>を執行します~
~迷宮化が終了しております~
~領域拡張が終了しております~
「あ~、あ~……うん、大丈夫でしょうかね?」
「おはようなの! 元に戻ったなの!」
「おはようございます。うん、世界樹さんが言うなら大丈夫かな」
肉体から魂が離れすぎると、精神状態が魂側に引っ張られでもするのか……昨日は感覚がおかしかったかですからね、戻ってよかった。勢いと感覚だけで行動している姿は、精霊族の方達のそれでしたからね、また同様の事が起きないとも限りませんし、何か対策でも考えましょうか。
まぁ、それは後でやるとして、手始めに確認と行きましょうかね。ちょっと予想外な呼び出しが有ったせいで、色々と滞っていますし、本気で処理しましょう。
「コアさん、情報処理モード」
~ 了解。魂の回路を拡張、情報処理モードを起動します ~
使うスキルは、<思考加速><平行思考><思考分立><思考統制><念話><集中>その他もろもろ。これを一度に処理できるコアさん、ほんと凄いですわ。
そして、それを受ける俺の方は、長時間の使用に耐えられないので、ぱっぱと処理しちゃいましょう!
先ず現状の確認だが、俺が眠りについてから7日程経っていた。
本来はもう少し早く済むはずだったらしいが、どうやらコアさんと空間の繋がりを一度切ってしまった為に、少しずれて仕舞ったらしい、ぐぬぬ。
その間に、ダンジョンに潜入してきたのは、いつもの魔物のみ。因みにその全てが、外の世界からやって来た駆除対象だった。駆除対象については、後で全員に通達しないといけないですね。
次に…ゴトーさんからの報告で、人の国の方で動きがあったらしい。エスタール帝国から、探索第二陣の準備が進められているっぽい。第一陣が結構早く来たから、もっと動きが速い可能性を考えていましたが、まぁ国が動くならこんなもんなのかもしれないですね。寧ろ、第一陣が速すぎるんですよ、全く。
それよりもヤバいのが、南西のカッターナ王国の方だ。此方にもゴトーさんが赴いており、情報収集に努めてくれていたらしい。フットワーク軽いな~。
結果だけ上げると、カッターナのハンターギルドが、近々こちらに向かって来る可能性大との事。
……ハンターって、冒険者からの情報を得て、狩りや収集を行う国や地方が運営する機関の俗称じゃ無かったでしたっけ? 情報も無いのに、何でもう来るので?
なになに……資源不足? 森が無くて、燃料の木材が確保できないから? 確かカッターナって、巨大な鉱山を所有する国でしたね、それの製錬に使うのか。エスタールよりも近いですし、来るならカッターナの方が速いでしょうが、少々無謀過ぎるのでは無いでしょうか? それとも、そんな事を気にする余裕が無い程、切羽詰まっているんでしょうかね?
獣人さん方の話を聞くに、余りいい印象が無いので、関わるのは最小限にしたいんですがね~。災害時の備蓄や対策がされて居ないって事は、それだけ先が見えていないって事でしょう? 嫌だな~~~まともに交渉できますかね~。
まぁそんな訳で、情報をよこせと、冒険者ギルドもせっつかれている様ですが、ギルドとしては慎重に行動したいらしく、受注依頼の形で全国のギルドにて掲示(ある意味国の情報をリーク)。それを見たエスタール帝国から、無用な刺激を掛けて状態が悪化したら困るって事で、抗議が行っているらしい。
え? カッターナがエスタールに、抜け駆けを狙っていると逆に抗議? そのせいで、エスタール側の第二調査隊の編成が遅れている? ……調査と採掘は一緒じゃ無いでしょうに。遅れるのは有り難いですが。
獣人さん方は、【魔吸石】が設置され、魔力濃度が低い所に案内してくれたのか、それぞれの部族に分かれて定住してくれたご様子。魔吸石の結晶体を中心に、簡素な家がチラホラできていた。まだ復興とはいかないが、生活自体はできている様ですね。本格的な建築は、まだまだ先になりそうだ。
世界樹さんを中心に、基本は西北の森の中、一部北の草原と西の湿地帯に分布している。流石に、東北の火山地帯や東の山脈地帯、南の雪原地帯には居ない。元が森に棲んでいた方々ですからね、この結果は必然でしょう。
大体こんなもんでしょうかね? 領域拡張が予定よりも進んでしまい、山の向こうにまで行ってしまいましたが、問題なし! 取り敢えず、円形拡張に切り替えて貰った。
山の要塞化も順調に進んでいる。領域が到着した為、内部の詳細も見る事ができた。
何と言うか、うん、まさに要塞だった。
立体的な迷路の様に伸びた、複雑に枝分かれした通路に、各地扉や隠し通路。地表への出入り口は現在作成中なのか、地中から掘り出した石を積み上げて、防壁の様に仕上げている最中だった。
確かに、警告の意味を込めて、異様さを出そうって案は出ていましたけど、まんま要塞をイメージして造りましたか。これなら完全に人工物ですし、警告の体を成すでしょうね。
あ、要塞に成っている場所の南側、山の麓に水溜まりってか、泥だまりができている。属性の偏りから、元から湿地帯ぽい性質がありましたが、とうとう沼になって仕舞いましたか。ですが、未だに植物の成長が間に合っていませんね。お陰で、水属性過多になって、属性に乱れができてしまっている様子。河水の終着点でもありますし、道中の湿地帯で、安定した沼地は既にあります。
……水生の魔物たちの住処を増やしていきたいですし、ここは湖にでもして仕舞いましょうか、後で相談ですね。
今までは砂地ばかりで、水なんて殆ど保持できませんでしたしね。泥になった土については、要塞づくりの際に出た土が原因っぽい? よく掘ったもんですわ。領域も追いつきましたし、一部迷宮化して、倉庫に入れられるようにしておきましょう。
因みにショタ神様ですが、就任直後って事も有って、こっちの事情を全く把握していなかった。細かい事を見るのも大変みたいですしね、こればっかりは仕方がない。時間の感覚も違うでしょうしね~。
現状はこんなもんです。では、本命の獣人さん方の方に戻りましょうかね。
「「「連れて来たー」」」
ちょうど代表者たちの御迎えも終わり、世界樹さんの元に集合完了。本当は、俺の方から訪れるのが一番なんでしょうが、流石に止められたのでこれで妥協となった。話の途中で抜けたのは俺の方な分、いたたまれない。
―――
(すいませんね~、話の途中で離脱してしまって。何か問題は起きていますか?)
「いや、今のところ何もない。つい先ほどまで、そちらに所属している魔物が護衛に付いていた、感謝する」
代表として、鼠人のチェットさんが話をするようですが……皆さん、そんな事をしていたんですか。え? 折角引き入れたのに、俺がいない間に死なれたら困るから?
まぁ被害が出過ぎると、こちらとしても目覚めが悪いですが、彼等だって結構強いですし、<幹部>ならともかく野生の魔物に対して一方的になる事は、無いと思いますけどね。
「分かれていた仲間も、無事に引き入れる事ができた。死人もほとんどおらず、怪我人も道中で治療してもらった。今は、他の部族と協力して拠点の建造を急いでいる」
「迷宮の主ダンマスよ、他の部族を代表して、感謝の言葉を述べさせてくれ。ありがとう、お陰で血を絶やさずに済んだ」
どうやら、捜索隊達が到着する前に飛竜の群れに見つかり、何人か死亡者が出て仕舞っていたらしい。その代わり、ルナさんが到着してからは、被害が無かったのは不幸中の幸いと言ったところでしょうか、皆さんには後でお礼をしておきましょう。
……ルナさんの名前が出た途端、怯え出す人がチラホラ見られるのですが、一体何があったんでしょう?
「そう言えば、儂らに頼みたいことが有ったようじゃったが、何だったのかのぅ? 確か、魔道具が何とか言っとったが…」
ん? おぉ、エルフ爺さん、覚えていてくれていましたか。ありがたや、ありがたや。
(ダンジョンに所属している魔道具職人が居るのですが、その者が作った魔道具の評価テストをお願いしたかったんですよ)
「テスト……」
あれ? 何故か皆さん引いているんですが、何故でしょう?
「それは、我々の中から、実験体を出せ…という事だろうか?」
(んん? ……いやいやいや、違いますよ? 魔道具を使った感想や、評価をお願いしたいだけです。人種から見て、どの程度のモノなのか評価して欲しいのです)
人体実験とか、なんで最初に出る考えがそれなんですか。発想が怖いですね~もう。敵でないなら、そんな事をしたりしませんよ。
「敵だったら、やるんかのぅ……」
エルフ爺さん、シャラップです。
―――
点在する獣人達の集落の中心辺り。何もないそこに、事前に設計して置いておいた、ダンジョンを創る。
入り口として、四方に入り口が開け放たれた、石造りの小さな塔が現れる。地下の方は、石造りにしたせいで、置き換えに時間が掛かっている感じですね、スポーンによる魔物精製諸共、少々お待ちを。
「……この中に?」
(はい、ついでですから、ダンジョンの性能テストも兼ねてって事で、低レベルダンジョンの中に置いてみました。ダンジョンのレベルに合っているかも評価お願い致します)
ダンジョン:エリア【ガラクタ置き場】 魔物レベルE~F
入り口には魔吸石の結晶体が設置されているので、低階層程中の魔力濃度が少なく、敵の能力も低く罠も殆どない。脅威となるのは、低レベルの魔物と……報酬になる魔道具位かな? 暴発はしないけど、扱いを間違えて自爆は有り得ますしね。
「ダンジョンって事は、手に入れた魔道具は好きにしていいのか?」
(構いませんよ、むしろそれが報酬と考えて下さい)
「「「む~~~」」」
皆さん、相当渋い顔をされて居らっしゃる。何が問題なのでしょう?
「魔道具が報酬とは、かなりの高難度を想定する必要がありそうじゃのぅ」
「うむ、強制はできんな。有志を募り、挑むしか無かろう」
「俺は行くぜ、牛人長として、前線に立たない訳にはいかねぇ」
……なんか、相当真剣に捉えられているのですが、なぜ?
「迷宮産の魔道具、迷宮具は、ダンジョンからの収穫としては、最高級だ。それこそ、金銀財宝なんて、目でもねぇ」
あぁ、そう言えばエンバーでも、魔道具が一般に普及している様な感じが無かったですね。やはり高級品扱いでしたか。ですが迷宮の名前の通り、この中に有るのは家の職人たちが作った中でも、何らかの欠点を持った失敗作なんですよね~。なので、迷宮具? ではなく、欠陥魔道具が置いてあると考えた方が、正しいですかね?
(なので、そんなにマジにならなくても良いですよ。この森で生きていける時点で、魔物に負けることは無いでしょうしね)
「……つまり、迷宮で生み出したのではなく、魔道具を自作したのか?」
(まぁ、そうですね。その為の性能評価テストです。それに、自作した方がコストが掛かりませんし、楽しいですよ?)
俺もちょくちょく顔を出して、自作したりしていましたからね、プログラミングとかパズルみたいな感覚で、これが結構楽しいんですよ。
……魔術の式自体を報酬にするのもアリかも知れないですね、どの様な効果が有るかも記しておけば、世界規模の自爆も起きないでしょうし。そもそも、どんな式を組んだら世界規模の自爆何て起きるのでしょうか? 自爆自体は家のマッドな職人たちが良くしていますが、あれは魔力の過剰供給による、キャパオーバーが主ですしね~。後で、通信テストも兼ねて聞いてみますか。
22
お気に入りに追加
5,428
あなたにおすすめの小説
転生したら死にそうな孤児だった
佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。
保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。
やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。
悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。
世界は、意外と優しいのです。
伯爵令嬢に婚約破棄されたので、人間やめました
えながゆうき
ファンタジー
うー、ダイエット、ダイエットー!
子爵家の庭を必死に走っている俺は、丸々太った、豚のような子爵令息のテオドール十五歳。つい先日、婚約者の伯爵令嬢にフラれたばっかりの、胸に大きな傷を負った漆黒の堕天使さ。髪はブロンド、瞳はブルーだけど。
貴族としてあるまじき醜態はすぐに社交界に広がり、お茶会に参加しても、いつも俺についてのヒソヒソ話をされて後ろからバッサリだ。どっちも、どっちも!
そんなわけで、俺は少しでも痩せるために庭を毎日走っている。でも、全然痩せないんだよね、何でだろう?
そんなことを考えながら走っていると、庭の片隅に見慣れない黒い猫が。
うは、可愛らしい黒猫。
俺がそう思って見つめていると、黒い猫は俺の方へと近づいてきた!
「人間をやめないかい?」
「いいですとも! 俺は人間をやめるぞー!!」
と、その場の空気に飲まれて返事をしたのは良いけれど、もしかして、本気なの!? あ、まずい。あの目は本気でヤる目をしている。
俺は一体どうなってしまうんだー!! それ以前に、この黒い猫は一体何者なんだー!!
え? 守護精霊? あのおとぎ話の? ハハハ、こやつめ。
……え、マジなの!? もしかして俺、本当に人間やめちゃいました!?
え? 魔境の森にドラゴンが現れた? やってみるさ!
え? 娘を嫁にもらってくれ? ずいぶんと地味な子だけど、大丈夫?
え? 元婚約者が別のイケメン男爵令息と婚約した? そう、関係ないね。
え? マンドラゴラが仲間になりたそうな目でこちらを見てる? ノーサンキュー!
え? 魔石が堅くて壊せない? 指先一つで壊してやるよ!
え? イケメン男爵令息が魔族だった? 殺せ!
何でわざわざ俺に相談しに来るんですかねー。俺は嫁とイチャイチャしたいだけなのに。あ、ミケ、もちろんミケともイチャイチャしたいよー?
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる