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114 黒狐が行く!⑦
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あ、真っ直ぐガードしたとこに来た。
「オゴ!?」
内臓がひしゃげたかと思う程の衝撃が体を突き抜ける。だ、だけど、ガードできた、五体満足! これならイケる!
衝撃に任せて、吹き飛ばされる。好都合よ、接近戦じゃ勝てないのはハッキリした。尾に込めた魔力が殆ど飛んじゃったけど、回復する魔力の全てを尾に集中する。これなら、飛ばされている内に回復できる!
だけど、回復に魔力を廻したせいで踏ん張りが効かない、防御力も皆無になるから、何度も地面に打ち付けながら減速する。お陰で全身傷だらけよ!
だけど準備は整った! 足腰に魔力を廻して、体勢を整える。尾に溜めた魔力を全て絞り出し、一つに纏めながら圧縮していく。轟々と燃え上がる巨大な火球ができ上る、出し惜しみは無しよ!
「ワッフゥ!?」
「吹~き~飛~、べーーー!!」
こちらに向かおうと足を踏みだして居た所へ、でき上った火球をぶん投げる。流石に不味いと思ったのか、驚いた声を上げながら横へと飛びのけるが、そこは犬。多少可動域が広かろうとも、簡単に真横には動けない。
― ~~~~~~~~ォォォォォン!! ―
地面へと衝突し弾けが火球が相手を飲み込み、光と熱を纏った衝撃が、轟音と共に辺りを覆いつくした。
「……フーーーーーー」
魔法特化である私の、全力の一撃よ。流石に少しは効いたでしょう。
体内の魔力を吐き出したお陰で、少し冷静さを取り戻せた。それでもすぐに溜まるでしょけど、今なら狂気化を抑えられるかもしれない……相手が無事でなければだけど。
モクモクと上がる黒煙のせいで、相手の姿が見えない。動いている気配は無いから、まだ居るとは思うけど、中は結構な高温になっているはず。熱への耐性は無かったはずだけど、中に居て平気なのかしら。
それとも既に抜け出してる? 真正面から来るとは限らないし、他の方向から<隠密>で抜け出している可能性も有るか。
警戒しながら周囲を見渡す……込めた魔力の割に、周辺への被害が少ないように思える。私の攻撃って、こんなにしょぼいっけ?
「あれ?」
よく見れば、あるラインを境に、被害が地面に対して直角にくっきりと遮られていた。
何かに妨害された? いや、これじゃ寧ろ、周囲への被害を抑えた感じだ。もしくは力が逃げない様にして、対象への威力を底上げしたともとれる。
周りに、私たち以外の何かが居る。その事実に行きつくと、言い表せない恐怖が全身を駆け巡った。こっちは相手の姿も捉えられていないのに、こちらの全力の攻撃を抑え込める様な存在が近くに居る。ヤバイ、ヤバすぎる! 私、感知とかダメダメなのよ!?
― ゾク -
理由は無い、本能のままに上空へと視線を向ける。
「ドラ、ゴン?」
そこには、空中に滞空する翼を持った蜥蜴が、ドラゴンが居た。
「まったく、先ほどからイチャイチャと、何をして居るのですか」
「イチャイチャ!?」
「あー、居たー!」
突然突風が吹き荒れ、視界を遮っていた黒煙がきれいさっぱり吹き飛ぶ。その中心では、戦狼が然したる変化なく佇んでいた。え、うそでしょ? 無傷!?
「ちょっとルナ、範囲を抑えないでよ! 折角ご主人に梳いて貰った毛が焦げちゃったじゃん!」
「貴方が遊んでいるせいですわ。遊ぶこと自体は良いですが、周りに被害を出さないで下さいまし」
「む~~~」
マズイ、非常にマズイ! 敵の敵は味方方式が成り立たなかった。あいつ等仲間だよ、唯でさえ勝てるか分からない相手が、さらに増えちゃったよ!? どうすんのさこれ、逃げるしか選択肢無いんじゃ無いかな? ……逃げれるかぁ!? よしんば逃げられても、他の子達が死ぬわ!
ゆっくり降りてきたルナと呼ばれたドラゴンは、長いしなやかな尾を地面につけ、椅子の様にしながら優雅に足を組む。なにあのドラゴン、すごい高貴な雰囲気が漂っているんだけど、どこかの令嬢か何か? 逆らったらダメな相手でしょ。
「ま、良いですわ。中々に面白い方の様ですし、お父様から面倒を見る様に言われましたわ。周囲の被害は私達が押さえますので、思う存分暴れなさいな」
え、今私“達”って言わなかった?
「ルナ、速過ぎるよ!」
「後で競争しようぜ!」
「良いですわよ、速度でも私が一番だと証明して見せましょう!」
「あれ? カブトじゃ無くて、ミツルギが来たの?」
「カブトは足が遅い」
ワラワラと森から追加で出て来る、兎に蜥蜴に、蟷螂に……あ、私死んだわ。
いや、まだあきらめるな。相手はかなり理性的な集団だ、落ち着け、<狂気化>で精神が高ぶって仕方が無いけど無理やり落ち着け! さっきから体が熱いのに、内臓が冷え切ってるような、矛盾した感覚がして気持ち悪いけど、とにかく落ち着けぇ!!
「て、提案!」
「ん? 中々に度胸がありますわね、良いですわ、言ってみなさいな」
「い、一対一の戦闘を所望するわ! まさか、寄ってたかって、格下に戦いを挑むわけ無いわよね?」
「あっははははは! その様な事ですか。後にも先にも、戦うのはビャクヤだけ、私達は一切手を出さない事を確約しますわ。勿論、貴方の仲間にも手は出しませんから、安心しなさいな」
よっしゃぁ!! 言質は取ったわよ、縫い糸レベルだけど命が繋がったぞ! しかも連戦も無し、出し惜しみしなくて済む!
「だったら、後はあんたをぶっ倒せば終わりね!」
「うん! こっちだよ、おいで~」
「だぁーーー<限界突破><開魂><狂気化>!!」
―――
私、何してたんだっけ…
「ワッフゥ、起きた?」
ん~~~……フワフワ~、つやつや~、スベスベ~、モフモフゥ~うふふふふふ。
「あぁ、これはダメですわね。魔力欠乏症ですわ、真面な受け答えは無理ですわね」
「どんな感じなの?」
「真面な思考ができなくなる感じだね、戦闘能力皆無だから安全だよ。症状は発症者によって様々。この子は欲望が丸出しになる感じかな?」
「成る程。ビャクヤ、貴方の事が相当お気に入りの様ですし、責任取りなさいな」
「えぇ!?」
「それは、ほら、男の義務だよ」
「モフモフまで!?」
「うんじゃ、俺らは帰るわ。あ、ルナ競争するぞ!」
「良いですわよ、それでは、よーいドンですわ!」
「あぁ!? 卑怯くせぇ!?」
「置いてかないでーーー!?」
「うへへ~、モフモフ~、スリスリ~、臭い付けてやら~」
「うわーん、舐めないで~!?」
―――
何か、途轍もない醜態を晒していたような気がする。
「えっと、平気? ……正気?」
「あ、ハイ、大丈夫です。本当、大丈夫です。きっと大丈夫ですごめんなさい。だからそんな目で見ないでくださいお願いします何でもしますから」
だから、そんな微妙な距離から話しかけないでください。ぐすん、ヤバイ、泣きそう。顔向けできない。このまま死にたい。穴が有ったら入りたい。
「ん? 今何でもするって言ったよね?」
「え?」
「えっとね、君、僕のとこ来る気ない? 他の子も一緒で良いよ」
「??????」
何言っているのかしら、この犬っころは。傾げた首が可愛いわね。
「皆、目ぼしい子を見つけては、自分の配下にしていたりするんだけど。僕は、あんまりそんなことしないからさ、仲間ってあんまりいないんだよね。その辺りはモフモフの得意分野だし」
「モフモフ?」
「白いちっちゃい子」
「あぁ、あのモフモフの兎ね」
あの子も可愛かったな~。モフらせてくれないかしらね~。
「…そう言えば、名前を付けた奴が居るのよね。貴方達より凄い奴って、想像できないのだけど、誰なの?」
「ご主人の事? ご主人はダンジョンマスターだよ」
ダンジョマスター、もしかして、私の知ってる奴かな。だけど、ビャクヤとかモフモフとか、あいつのセンスじゃ無いわよね~。
まぁ、配下云々は良いとして、そのダンジョンマスターには会ってみる価値はあるわね。
「オゴ!?」
内臓がひしゃげたかと思う程の衝撃が体を突き抜ける。だ、だけど、ガードできた、五体満足! これならイケる!
衝撃に任せて、吹き飛ばされる。好都合よ、接近戦じゃ勝てないのはハッキリした。尾に込めた魔力が殆ど飛んじゃったけど、回復する魔力の全てを尾に集中する。これなら、飛ばされている内に回復できる!
だけど、回復に魔力を廻したせいで踏ん張りが効かない、防御力も皆無になるから、何度も地面に打ち付けながら減速する。お陰で全身傷だらけよ!
だけど準備は整った! 足腰に魔力を廻して、体勢を整える。尾に溜めた魔力を全て絞り出し、一つに纏めながら圧縮していく。轟々と燃え上がる巨大な火球ができ上る、出し惜しみは無しよ!
「ワッフゥ!?」
「吹~き~飛~、べーーー!!」
こちらに向かおうと足を踏みだして居た所へ、でき上った火球をぶん投げる。流石に不味いと思ったのか、驚いた声を上げながら横へと飛びのけるが、そこは犬。多少可動域が広かろうとも、簡単に真横には動けない。
― ~~~~~~~~ォォォォォン!! ―
地面へと衝突し弾けが火球が相手を飲み込み、光と熱を纏った衝撃が、轟音と共に辺りを覆いつくした。
「……フーーーーーー」
魔法特化である私の、全力の一撃よ。流石に少しは効いたでしょう。
体内の魔力を吐き出したお陰で、少し冷静さを取り戻せた。それでもすぐに溜まるでしょけど、今なら狂気化を抑えられるかもしれない……相手が無事でなければだけど。
モクモクと上がる黒煙のせいで、相手の姿が見えない。動いている気配は無いから、まだ居るとは思うけど、中は結構な高温になっているはず。熱への耐性は無かったはずだけど、中に居て平気なのかしら。
それとも既に抜け出してる? 真正面から来るとは限らないし、他の方向から<隠密>で抜け出している可能性も有るか。
警戒しながら周囲を見渡す……込めた魔力の割に、周辺への被害が少ないように思える。私の攻撃って、こんなにしょぼいっけ?
「あれ?」
よく見れば、あるラインを境に、被害が地面に対して直角にくっきりと遮られていた。
何かに妨害された? いや、これじゃ寧ろ、周囲への被害を抑えた感じだ。もしくは力が逃げない様にして、対象への威力を底上げしたともとれる。
周りに、私たち以外の何かが居る。その事実に行きつくと、言い表せない恐怖が全身を駆け巡った。こっちは相手の姿も捉えられていないのに、こちらの全力の攻撃を抑え込める様な存在が近くに居る。ヤバイ、ヤバすぎる! 私、感知とかダメダメなのよ!?
― ゾク -
理由は無い、本能のままに上空へと視線を向ける。
「ドラ、ゴン?」
そこには、空中に滞空する翼を持った蜥蜴が、ドラゴンが居た。
「まったく、先ほどからイチャイチャと、何をして居るのですか」
「イチャイチャ!?」
「あー、居たー!」
突然突風が吹き荒れ、視界を遮っていた黒煙がきれいさっぱり吹き飛ぶ。その中心では、戦狼が然したる変化なく佇んでいた。え、うそでしょ? 無傷!?
「ちょっとルナ、範囲を抑えないでよ! 折角ご主人に梳いて貰った毛が焦げちゃったじゃん!」
「貴方が遊んでいるせいですわ。遊ぶこと自体は良いですが、周りに被害を出さないで下さいまし」
「む~~~」
マズイ、非常にマズイ! 敵の敵は味方方式が成り立たなかった。あいつ等仲間だよ、唯でさえ勝てるか分からない相手が、さらに増えちゃったよ!? どうすんのさこれ、逃げるしか選択肢無いんじゃ無いかな? ……逃げれるかぁ!? よしんば逃げられても、他の子達が死ぬわ!
ゆっくり降りてきたルナと呼ばれたドラゴンは、長いしなやかな尾を地面につけ、椅子の様にしながら優雅に足を組む。なにあのドラゴン、すごい高貴な雰囲気が漂っているんだけど、どこかの令嬢か何か? 逆らったらダメな相手でしょ。
「ま、良いですわ。中々に面白い方の様ですし、お父様から面倒を見る様に言われましたわ。周囲の被害は私達が押さえますので、思う存分暴れなさいな」
え、今私“達”って言わなかった?
「ルナ、速過ぎるよ!」
「後で競争しようぜ!」
「良いですわよ、速度でも私が一番だと証明して見せましょう!」
「あれ? カブトじゃ無くて、ミツルギが来たの?」
「カブトは足が遅い」
ワラワラと森から追加で出て来る、兎に蜥蜴に、蟷螂に……あ、私死んだわ。
いや、まだあきらめるな。相手はかなり理性的な集団だ、落ち着け、<狂気化>で精神が高ぶって仕方が無いけど無理やり落ち着け! さっきから体が熱いのに、内臓が冷え切ってるような、矛盾した感覚がして気持ち悪いけど、とにかく落ち着けぇ!!
「て、提案!」
「ん? 中々に度胸がありますわね、良いですわ、言ってみなさいな」
「い、一対一の戦闘を所望するわ! まさか、寄ってたかって、格下に戦いを挑むわけ無いわよね?」
「あっははははは! その様な事ですか。後にも先にも、戦うのはビャクヤだけ、私達は一切手を出さない事を確約しますわ。勿論、貴方の仲間にも手は出しませんから、安心しなさいな」
よっしゃぁ!! 言質は取ったわよ、縫い糸レベルだけど命が繋がったぞ! しかも連戦も無し、出し惜しみしなくて済む!
「だったら、後はあんたをぶっ倒せば終わりね!」
「うん! こっちだよ、おいで~」
「だぁーーー<限界突破><開魂><狂気化>!!」
―――
私、何してたんだっけ…
「ワッフゥ、起きた?」
ん~~~……フワフワ~、つやつや~、スベスベ~、モフモフゥ~うふふふふふ。
「あぁ、これはダメですわね。魔力欠乏症ですわ、真面な受け答えは無理ですわね」
「どんな感じなの?」
「真面な思考ができなくなる感じだね、戦闘能力皆無だから安全だよ。症状は発症者によって様々。この子は欲望が丸出しになる感じかな?」
「成る程。ビャクヤ、貴方の事が相当お気に入りの様ですし、責任取りなさいな」
「えぇ!?」
「それは、ほら、男の義務だよ」
「モフモフまで!?」
「うんじゃ、俺らは帰るわ。あ、ルナ競争するぞ!」
「良いですわよ、それでは、よーいドンですわ!」
「あぁ!? 卑怯くせぇ!?」
「置いてかないでーーー!?」
「うへへ~、モフモフ~、スリスリ~、臭い付けてやら~」
「うわーん、舐めないで~!?」
―――
何か、途轍もない醜態を晒していたような気がする。
「えっと、平気? ……正気?」
「あ、ハイ、大丈夫です。本当、大丈夫です。きっと大丈夫ですごめんなさい。だからそんな目で見ないでくださいお願いします何でもしますから」
だから、そんな微妙な距離から話しかけないでください。ぐすん、ヤバイ、泣きそう。顔向けできない。このまま死にたい。穴が有ったら入りたい。
「ん? 今何でもするって言ったよね?」
「え?」
「えっとね、君、僕のとこ来る気ない? 他の子も一緒で良いよ」
「??????」
何言っているのかしら、この犬っころは。傾げた首が可愛いわね。
「皆、目ぼしい子を見つけては、自分の配下にしていたりするんだけど。僕は、あんまりそんなことしないからさ、仲間ってあんまりいないんだよね。その辺りはモフモフの得意分野だし」
「モフモフ?」
「白いちっちゃい子」
「あぁ、あのモフモフの兎ね」
あの子も可愛かったな~。モフらせてくれないかしらね~。
「…そう言えば、名前を付けた奴が居るのよね。貴方達より凄い奴って、想像できないのだけど、誰なの?」
「ご主人の事? ご主人はダンジョンマスターだよ」
ダンジョマスター、もしかして、私の知ってる奴かな。だけど、ビャクヤとかモフモフとか、あいつのセンスじゃ無いわよね~。
まぁ、配下云々は良いとして、そのダンジョンマスターには会ってみる価値はあるわね。
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