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74 竜の調査隊、迷宮に潜る⑤
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「お前はダメだ!」
ルナと名乗った幼竜の発言を、コクガ殿が一蹴する。
「何故ですの!?」
「お前ついさっき、こいつのどてっ腹に大穴開けて、殺しかけたばっかりだろ!?」
「そ、その事については申し訳なかったと思っていますわ! でも、仕方がないでは無いですか! 余りにも情けない姿にイラっと来たんですわ!」
「言いたいことは分かるがな……見るのも修行と思え、な?」
「む~……分かりましたわ。エレン様でしたわね、勉強させていただきますわ!」
「え、えぇ」
そう言って、元居た高台……には戻らず、途中で方向転換し、シスタの方へと飛んで行った……綺麗に飛ぶわね。
話し相手になってくれるなら有り難いわ、少しでも気晴らしになれば良いのだけど……あんな可愛い子となんて、ちょっと羨ましいわね。
「まさか、竜族まで居るなんて、でも見たことのない種類ね、何竜かしら?」
「ルナは、主が創った竜だからな。今はまだ、世界に一匹だけなんじゃねぇか?」
ここの異常さは散々見てきた。今更驚くだけ無駄ね! ははは……はは…はぁ~。
「エレン? ……エレン! エレン!!」
音の発信源を向くと、情けない姿のまま、恐怖と怯えに濁った眼で、糞虫がこっちを見ていた。戦闘に向けて上がっていた興奮が、冷めていくのが分かる。心が冷え、全身を不快感が支配する。
「エレン! 何してやがる、助けろ!」
糞虫が、出鱈目に暴れながらこっちへ向かって来る。情けない、を通り越して醜いわね。本当に糞だわ、コイツ。
おぉ、周りに居る魔物たちは、完全に間合いを把握して避けている。見事ね、掠りもしない。しかも
「遅い」
糞虫の横を、影が通り過ぎたかと思えば、手足から血が噴き出しながら糞虫が倒れ伏す。
確か、マンティアでしたっけ? あの一瞬で手足の腱を切った様だ。
「ガーーーーーー!!!!????」
「やっぱ弱ぇな、こいつ。これ位避けろよ……」
「エレン! エレンエレンエレン!! お、お前は! 俺の“番”になる女だろが!?さっさと助けろ! 愚図がーーー!!」
「……ア˝ァ˝?」
体中の不快感が、スッと引いたと思ったら、頭の中で弾け思考が停止する。
「へ?」
気付けば私は、その不愉快極まりない顔を、全力で殴り飛ばしていた。
骨が砕ける音と共に、牙が数本宙を舞う。私は、妙に冷静になった頭で、キレた自分を観察していた。
「エ˝、エベラ……なんべ?」
「……退け、糞虫」
「くぞ……!?」
「おーいタラント~、ビールト~、こいつ持っててくれ~」
糸で雁字搦めにされながら糞虫は、元腰巾着たちの元へと引きずられて行った。
―――
「片付いたし、早速やろうか!」
「……えぇ」
あー、モヤモヤする! 何もかも、あいつのせいだ! 何が番よ!? 未だに寒気がががが!!!
「始める前にさ~、これ飲むと良いよ~♪」
クロカゲ殿が運んで来たプルプルした宝石の様なものが、これまた宝石の様な球体を吐き出してきた。これは?
「スライムボールって言って、スライム達の体内にある物が詰まってる。ちなみに中身は回復薬ね~♪」
「スライム……これも魔物だったのですね」
「やるからには、お互い全力を出してもらいたいからね~♪」
全力……か。竜の谷では、誰かと戦うなんてことしませんからね。
周りに居る生き物は、私達の姿を見れば逃げ出すだけ、狩りをしても、戦うことは殆どない。同じ竜族では、上位の竜の立ち合いが無ければ戦闘は禁止されている。周りの地形が変わってもおかしくないからだ。
その為、結界等で周りに影響が出ないようにする必要がある。最近の竜族は経験が圧倒的に不足している理由の一つね。あの糞虫共がいい例だ。
……他にも理由は有るけど、本当に最近の竜族の堕落ぶりは目に余るのよね。
だからこそこの私闘は、私としても望むところだったのだ。戦闘経験を積むことができるうえ、相手の実力も肌で感じることができ、一石二鳥だ!
渡されたスライムボール? を、迷いなく飲み込む。今更、彼らを疑う気はない……あら、美味しい。
飲んですぐ、体の奥から力が、魔力が溢れ、体の隅々にまで満ちていくのが分かる。
凄いわね、この薬!? 普段以上に調子が良い気がする!
― ドクン ―
殺気とも、敵意とも違う何かを向けられる
「準備はいいかぁ!? あんなゴミじゃねぇ! 本物の竜族の力、見せてもらうぞ!!」
……あぁ、これは覇気か。あぁ、ヤバイ。自然に口角が上がってしまう。こんな感覚、久しぶりだ!
「……クフ。私が、竜族の代表をするのもどうかと思いますが……」
炉(体内の魔石)に火を入れる。
魔力を生み出し、頭の先から、爪の先、翼から尾の先に至るまで、魔力回路を開き、体の端まで巡らせる。
体の中で魔力を回す、回し回し回し続け、一段階、二段階、と圧を限界まで上げていく……そして、限界まで達した時、全身の魔孔を開き、体に滾る力を吐き出す!
「ガーーーーーー!!!!」
「!?」
これが竜族の戦闘形態。体内の魔力圧が高いほど身体能力が、噴き出す魔力量が多ければ魔法への抵抗力が跳ね上がる。
竜気法
これができて、初めて竜は本当の竜を名乗れる。それ以外はただの蜥蜴だ!
「私だって、竜族の端くれだ! 見せてやるよ、本物の竜の姿をなぁ!!」
私だって竜だ! こんな覇気向けられて、抑えられる訳無いじゃない!? 手加減なんて考え、簡単に吹き飛んだわ!
「ククク! アッハハハハハハ!! そっちが素か? 良いね、あんた! 最ッ高だー!」
「来い!」
「行くぞ! おらぁ!!」
その頃には、不快感も、原因の糞虫の事も、頭の中から消えていた。今は目の前に居る戦士に、全力を出す事のみ!
此方も試させてもらうぞ!? そちらの実力と、今の私の全力をなぁ!!
ルナと名乗った幼竜の発言を、コクガ殿が一蹴する。
「何故ですの!?」
「お前ついさっき、こいつのどてっ腹に大穴開けて、殺しかけたばっかりだろ!?」
「そ、その事については申し訳なかったと思っていますわ! でも、仕方がないでは無いですか! 余りにも情けない姿にイラっと来たんですわ!」
「言いたいことは分かるがな……見るのも修行と思え、な?」
「む~……分かりましたわ。エレン様でしたわね、勉強させていただきますわ!」
「え、えぇ」
そう言って、元居た高台……には戻らず、途中で方向転換し、シスタの方へと飛んで行った……綺麗に飛ぶわね。
話し相手になってくれるなら有り難いわ、少しでも気晴らしになれば良いのだけど……あんな可愛い子となんて、ちょっと羨ましいわね。
「まさか、竜族まで居るなんて、でも見たことのない種類ね、何竜かしら?」
「ルナは、主が創った竜だからな。今はまだ、世界に一匹だけなんじゃねぇか?」
ここの異常さは散々見てきた。今更驚くだけ無駄ね! ははは……はは…はぁ~。
「エレン? ……エレン! エレン!!」
音の発信源を向くと、情けない姿のまま、恐怖と怯えに濁った眼で、糞虫がこっちを見ていた。戦闘に向けて上がっていた興奮が、冷めていくのが分かる。心が冷え、全身を不快感が支配する。
「エレン! 何してやがる、助けろ!」
糞虫が、出鱈目に暴れながらこっちへ向かって来る。情けない、を通り越して醜いわね。本当に糞だわ、コイツ。
おぉ、周りに居る魔物たちは、完全に間合いを把握して避けている。見事ね、掠りもしない。しかも
「遅い」
糞虫の横を、影が通り過ぎたかと思えば、手足から血が噴き出しながら糞虫が倒れ伏す。
確か、マンティアでしたっけ? あの一瞬で手足の腱を切った様だ。
「ガーーーーーー!!!!????」
「やっぱ弱ぇな、こいつ。これ位避けろよ……」
「エレン! エレンエレンエレン!! お、お前は! 俺の“番”になる女だろが!?さっさと助けろ! 愚図がーーー!!」
「……ア˝ァ˝?」
体中の不快感が、スッと引いたと思ったら、頭の中で弾け思考が停止する。
「へ?」
気付けば私は、その不愉快極まりない顔を、全力で殴り飛ばしていた。
骨が砕ける音と共に、牙が数本宙を舞う。私は、妙に冷静になった頭で、キレた自分を観察していた。
「エ˝、エベラ……なんべ?」
「……退け、糞虫」
「くぞ……!?」
「おーいタラント~、ビールト~、こいつ持っててくれ~」
糸で雁字搦めにされながら糞虫は、元腰巾着たちの元へと引きずられて行った。
―――
「片付いたし、早速やろうか!」
「……えぇ」
あー、モヤモヤする! 何もかも、あいつのせいだ! 何が番よ!? 未だに寒気がががが!!!
「始める前にさ~、これ飲むと良いよ~♪」
クロカゲ殿が運んで来たプルプルした宝石の様なものが、これまた宝石の様な球体を吐き出してきた。これは?
「スライムボールって言って、スライム達の体内にある物が詰まってる。ちなみに中身は回復薬ね~♪」
「スライム……これも魔物だったのですね」
「やるからには、お互い全力を出してもらいたいからね~♪」
全力……か。竜の谷では、誰かと戦うなんてことしませんからね。
周りに居る生き物は、私達の姿を見れば逃げ出すだけ、狩りをしても、戦うことは殆どない。同じ竜族では、上位の竜の立ち合いが無ければ戦闘は禁止されている。周りの地形が変わってもおかしくないからだ。
その為、結界等で周りに影響が出ないようにする必要がある。最近の竜族は経験が圧倒的に不足している理由の一つね。あの糞虫共がいい例だ。
……他にも理由は有るけど、本当に最近の竜族の堕落ぶりは目に余るのよね。
だからこそこの私闘は、私としても望むところだったのだ。戦闘経験を積むことができるうえ、相手の実力も肌で感じることができ、一石二鳥だ!
渡されたスライムボール? を、迷いなく飲み込む。今更、彼らを疑う気はない……あら、美味しい。
飲んですぐ、体の奥から力が、魔力が溢れ、体の隅々にまで満ちていくのが分かる。
凄いわね、この薬!? 普段以上に調子が良い気がする!
― ドクン ―
殺気とも、敵意とも違う何かを向けられる
「準備はいいかぁ!? あんなゴミじゃねぇ! 本物の竜族の力、見せてもらうぞ!!」
……あぁ、これは覇気か。あぁ、ヤバイ。自然に口角が上がってしまう。こんな感覚、久しぶりだ!
「……クフ。私が、竜族の代表をするのもどうかと思いますが……」
炉(体内の魔石)に火を入れる。
魔力を生み出し、頭の先から、爪の先、翼から尾の先に至るまで、魔力回路を開き、体の端まで巡らせる。
体の中で魔力を回す、回し回し回し続け、一段階、二段階、と圧を限界まで上げていく……そして、限界まで達した時、全身の魔孔を開き、体に滾る力を吐き出す!
「ガーーーーーー!!!!」
「!?」
これが竜族の戦闘形態。体内の魔力圧が高いほど身体能力が、噴き出す魔力量が多ければ魔法への抵抗力が跳ね上がる。
竜気法
これができて、初めて竜は本当の竜を名乗れる。それ以外はただの蜥蜴だ!
「私だって、竜族の端くれだ! 見せてやるよ、本物の竜の姿をなぁ!!」
私だって竜だ! こんな覇気向けられて、抑えられる訳無いじゃない!? 手加減なんて考え、簡単に吹き飛んだわ!
「ククク! アッハハハハハハ!! そっちが素か? 良いね、あんた! 最ッ高だー!」
「来い!」
「行くぞ! おらぁ!!」
その頃には、不快感も、原因の糞虫の事も、頭の中から消えていた。今は目の前に居る戦士に、全力を出す事のみ!
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