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聖戦の行方、女神よお前が一番悪いだろう。
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ーー 災害復興と災害に強い国造り。
水が引き、泥だらけの街並みと日照りでひび割れた田畑を見ながら、私は領主らに
「今はこのような状態ですが、来年はきっと元通りの実りがみれるでしょう。その為にみなさんの力が必要です、特に衛生面に気を配って下さい。
病気が流行したりするのがこのような時です。」
と注意しながら復興を指導する。
今回は王国の三分の一ほどが被害にあったため、私1人では手が足らないのだ。
するべき事を説明しながらやってみせ、私にしかできない事以外は領主達の力でやってもらうことにした。
先ずは食糧の問題は解決しているので、街や村の片付けと衛生管理。
私は河川の堤防整備と農業用溜池の製作だ。
ついでに上下水道ようの溜池も作り綺麗な水を街や村に通して行って、暑い赤の季節が駆け足で過ぎ黄の休みももう終わりの頃。
おおよその復興は終了した。
その後私は、国王に災害に強い国造りの献策を行った。
白の季節の頃には、その責任者と指名され王国各地を飛びように回ると、幾つかの備えを施した。
ーー 黄の季節。
黄金色に実った作物が目の前いっぱいに広がる姿はとても良いものだ。
この世界もこれから先は地球のように神のご都合主義でなく、自然の猛威に恐れ対応して生きてゆく必要があるようだ。
そんな事を考えて領地を見ていた私とは別に悲鳴を上げていた者がいた。
「どうしてこんなことに?あの地方はあんなに実りが多いと言うのに。田畑が荒れ病に多くの私の子供らが苦しんでいる。何故なの?」
どこかの場所で、自分の手抜きを未だ自覚していないダメ女神はそう呟いた後。
「あの地方にももう1人か2人連れてきたらいいのかしら。」
と独り言を漏らしていた。
ーー 神々の会議
多くの神々が集まり開かれる会議がある。
議題の多くは、「管理する世界」の状況報告や支援要請だ。
「お願いがあります。私の世界が・・急な災害で滅びに瀕しています。何方か支援をお願いします。」
といつものダメ女神が願いを告げると、地球の女神がすかさず
「あなたの世界には私の世界から不法に魂を攫って行ったではないですか、これ以上私の世界は支援できませんわ。」
とピシャリと拒否した。
ダメ女神はその他の神に懇願し何とか2つの魂を分けてもらえることになった。
「これで何とかなるわ、でも時間が足りないわ大人の状態で連れてゆきましょう。」
とまたルール違反を口にするダメ女神。
神々のルールとしてと言うと、世界の影響を考えると赤ん坊からの転生はコントロールし易いし影響が少ない。しかし大人の状態の転移は、その力と考えの違いで世界に大きな影響を与えることがあるため、禁止されていたのだ。
そのルールさえも守ろうとしないダメ女神の様子を見ていた、地球の女神はエストニアに神社を通して警告するのだった。
そしてそんな様子を見守る、大神がいた。
ーー 天啓と言うか地球の神様からの大事な情報。
実りの一部を丘の上の神社にお供えに向かったエストニア。
「今年も豊作でした、これは今年の新酒です。お口に合えば良いにですが。」
と手を合わせてその場をさろうとした時に、自分が違う空間にいるのに気づいた。
「・・ここは、お久しぶりです。地球の神様。」
と挨拶する私に、地球の女神は
「よく頑張っているようで嬉しいです。そこで一つ情報です、またあのバカがいらぬ事をしました。ここではない王国に2人の異世界人を大人の状態で転移させたようです。多分大きな問題が起こるでしょう、その者達は地球の者ではないので性質がわかりません、準備しておいて悪くはないと思いますよ。」
と言う情報だった。
お礼を言いながら、デザートなどを差し上げた後私は元の世界に戻されていた。
ーー 戦争に備えよう。
私は神からの情報を検討していた。
「大人の状態で招かれた2人者が、災害のあった状況を見てどう反応するかと言うことだ。
「神の使徒」と言うべき立場で存在すれば、その言葉や行動は国を動かすことは簡単であろう。
手っ取り早く被害を回復する手段は、他所から奪うことだ。
最悪戦争や侵略が行われると考えて備えておこう。」
と独り言を言いながら、私は大きくなったシロの背を撫でていた。
◇
「ケンドール公爵様、重要なお話があります。」
と実家を訪れた私はお父様に面会を申し込んだ。
「何事があった。」
私の只事ではない雰囲気に、お父様は硬い口調で問う
「はい。先日この世界の神ではない神より天啓をいただきました。」
と言うと
「ここではないよその神から?」
不審そうなお父様
「その天啓で、この世界に大きな動乱がある可能性を知りました。その為我が王国も戦に備える必要ができました。」
と言うと
「戦が起こると言うのか?」
「起こるかどうかはわかりませんが、我が王国と同じように大きな被害を受けた他の王国に、神の使徒が降り立った可能性があります。ただその使徒は平和を望むものとは限らないそうです。その為の備えです。」
と答える私の話を聞いたお父様は
「何故そのような使徒を使わしたのか?」
とこの世界の神の心を図りかねていた。
「私が言うのはどうかと思いますが、この世界の管理者たる女神はダメ女神ですよ。使徒を遣わせば問題が簡単に解決するとでも思ったのでしょう。そんな女神ですあれは。」
と言う言葉に
「お前は女神様にあったことがあるのか?」
と聞いてきた、そこで私は
「実は私は別の世界で生きていたのを攫われて、この世界に送り込まれた魂を持っております。」
と答えた。
「そうか、そんなことが・・・しかしお前はわしらの子供で間違いない、これからも。」
と言ってくださった。
ありがたいことだ。
その後私らは、今後の備えについて話し合った。
ーー 武器を作ろう
もし転移してきた神の使徒らが交戦的で、ここにはない武器を持ち込んで攻めてきた時に王国民を守る為に、私のできるとこはしておこう。
情報では地球人ではないと言うことだ、すると魔法が存在する世界であれば想像以上の魔法攻撃も考えておく必要がある。
可能な限りの手段を講じておこう。
先ず私はこれまで秘匿していた火薬を大々的に開発することにした。
すでに打ち上げ花火を作る際に、ある程度の技術は完成させていたがより威力の高いものを作っておく必要があるだろう。
それとそれを使った、武器の製作だ。
小銃から機関砲そして大砲と製作し、ロケット砲については、魔道具との抱き合わせで考えていこう。
防御については、既に魔道具で結界5を張り巡らせることが可能なので、動力としての魔石を準備しておこう。
兵士の装備については、個人的な防御結界の魔道具を取り付けた防具を作り、付与することにしよう。
武器は切れ味や不壊の付与をつけた魔剣を作成しておけば・・・手が足りないな。
食糧の備蓄は奪われないようにしておき、城壁や堀を魔物から対人に効果のあるものに変更しておこう。
白の季節が迫っていた。
私はもう直ぐ雪の季節を感じながら準備を整えて行った。
ーー エデン王国 side
「何!女神の使徒と名乗る者が現れたと申すか。」
エデン国王は問いただした。
「はい陛下その通りでございます。腕に女神の刻印がございます。」
と答える側近。
この国の歴史で以前この国に遣わされた女神に使徒には、身体の一部にある刻印がると伝わっていた。
そしてその刻印がある者が現れたのである。
王国は先頃の異常気象で、食糧不足と伝染病が蔓延していた。
この状況を救う為に女神が使徒様を使わされたと喜んだ、王国関係者。
しかしその使徒を名乗る男は、
「病気を治す、食料を作る?どれもこの世界のものが努力するべきことであろう。俺はこの世界を統一し俺の世界にする為に来たのだ、先ずはこの国から俺に差し出せ!」
と国王を目の前に要求したのだ。
「どうした事なの?何故この世界の者の為に力を尽くさないの?何か間違った?」
狼狽するような声が空の彼方で悲鳴のように聞こえた。
ーー ミセール王国 side
セガール王国の東、中央大森林を隔てた場所にミセール王国が存在する。
海を持つこの国は、食糧危機を海の幸で凌いでいた為そこまで窮してはいなかった。
その国に女神の使徒を名乗る女が訪れていた。
「私は女神様からの依頼でこの世界に来た者です。この世界に私の世界の宗教を広めに来ました。先ずは国王様から改宗して貰います。」
と言いながらその女性は、変わった形の教会の建設を求め出した。
「何故なの?私の世界で私以外を祀るなんてどうしてそんなことが?」
また空のどこかで情けない声をあげるダメ女神の声が響いていた。
ーー 戦争の足音。
エデンに現れた使徒と名乗る男の名は
ブラック=デーモン 300歳
魔族の系統に属する男で、魔力がこの世界の人間の5倍ほどあった、威力の強い攻撃魔法も使えた為、隣国トーラル王国を5分の1ほどわずかな時間で略奪していた。
そのおかげで食糧難にあったエデン国王は一息つけたのも事実で、その後はブラックの言うがままに戦争の戦火を広げていた。
セガール王国の重鎮会議
国王を中心にエデン国王の侵略戦争に対応する会議が始まった。
トーラル王国は元々平和を尊ぶ王国で、共和国の滅亡の時もその為に動いていた。
しかし今回は突然蜂起したエデン王国兵が、侵攻してきた為避難を優先して領民を守ったのだが、これ以上は戦争を回避できないとセガール王国に支援を要請してきたのだ。
今まで手に入れた情報では、エデン王国にある日突然女神の使徒を名乗る男が現れて、この世界を統一すると宣言した。
男はとても強く、魔法の威力も規格外で止めるものがおらず、かえってその指揮に従い出したと言うことだ。
ケンドール公爵は国王に発言を求めた
「何か有るのか?」
「はい陛下。数ヶ月前にエストニア伯爵がある情報を伝えてきました。
その情報は不確かなものでしたので報告には至りませんでしたが、今回の話を聞いて確信しました。
女神は2人の異世界の者をこの世界に連れてきて、今回の災害から人々を助けようとしたようですが、稚拙な方法に出たらしく危険性があると言う警告を他の神から、息子は天啓を受けたそうです。
その為、息子エストニア伯爵は事前に準備をしておくと言っておりました。
今回のトーラル王国の支援エストニア伯爵に任せてもらえませんでしょうか。」
と言う話であった。
「良かろう、エストニア伯爵に我が王国の代表としてトーラル王国に派遣をすることにする。」
と国王が決断した。
◇
3日後。
私は国王の命を受けてトーラル王国に支援という目的で遠征した。
率いる兵は5000、どちらかと言うと領民の避難と食料及び怪我人の手当てが1番の目的の構成と装備である。
それから5日後。
トーラル王国の国王と謁見する。
「セガール王国国王の命で駆けつけました。食料及び薬などの入薬品など十分な量をお持ちしました。」
と申し上げると
「かたじけない。ただ戦況が思わしくない、戦力的な支援の方はどうなっておるのか?」
と言う問いに
「戦力支援については私エストニア伯爵が微力ながら支援させて貰います。」
と答えると
「何、その方がエストニア伯爵か。話はこのトーラル王国にまで聞こえておる、その力民のためにお借り致す。」
と答えたら国王であった。
ーー 開戦、初めての戦い。
私は今回女神の使徒と戦うにあたり、いくつかの作戦を考えていた。
先ずは敵の戦力の確認と個人としての戦力だ。
エデン王国軍は、総勢10万で攻め入ってきている。
エデン王国側に食料がないためか、略奪が目的の侵攻に見える。
敵将は異性界から来たと言う魔族らしい男。
数回魔法攻撃と武威を見たがそこそこ使えるようだが、レベルとしてはマッケンジー伯爵と同じくらいのようだ。
空腹な軍の足を止めれば当然食糧難に喘ぎ出す、それ以上の進行はできないはずと見た私は、道が限られた谷で進行方向に長大な城壁を作り出した。
ここでしばらく足止めをすれば、エデン王国軍は崩れるだろう。
その後は使徒を倒せばいいと、方針を決め実行に移る私。
そこにエデン王国軍は現れた。
目の前の城壁を見て
「あの様な城壁の情報はなかったはず。」
「見せかけばかりのハリボテであろう、突き崩せ!」
と言う檄を受け、1万ほどの兵が城壁に攻撃を仕掛けるが歯が立たない。
後続を1日待ち、2万の兵で再度攻撃するがそれでも歯が立たず撤退する。
さらに3日を要して5万の兵で攻城攻撃を行うエデン王国軍は、その城壁の丈夫さに舌を巻く。
「全く歯が立ちませね。」
「ブラック使徒様に打開策をお願いしよう。」
と言う話になり、ブラックが前線に呼ばれた。
「あの様な塀如きに何を手こずっておる、俺が手本を見せてやる良く見ておけよ。」
と言うと城壁の前に姿を現した。
城壁の前に1人の男が歩いてきた、
「トーラル王国軍に告ぐ。降伏をすれば傘下に入れてやろう、拒否するのであれば、叩き潰すのみ。」
と言うと魔力を練り上げ城壁へ攻撃魔法を叩きつけ始めた。
しかし結界5で防御している城壁はびくともしない。
膠着した状況が5日ほど続いた、10万からの兵を食べさせる食量を持っていないエデン王国軍は、次第に士気が下がり国元へ逃げ帰る兵が出始めた。
これに計画を潰されてたまるかと考えた使徒ブラックが、単騎で城壁を越えてやってきた。
「これは何だ!兵がいないではないか。逃げるための城壁であったか。」
と呟くと
「それは少し違うな。この城壁はお前と2人で闘うためのものだ。」
と言う声が聞こえ、空から若い男が舞い降りてきた。
「お前がトーラル王国の戦士か、女神の使徒たる俺に敵うと思うとは笑止千万。消し炭にしてやろう。」
と言うと攻撃魔法を打ち出しながら、剣で攻撃をしてきた。
打ち出された火魔法は結界5の防御で無効化、振り下ろされる剣を軽く弾き返すと、剣を突きつけ
「降参すれば命までは取らずに済ませよう。」
と言う私の言葉に激昂した使徒は、最大魔法を私に放ってきた。
しかし業火の魔法は結界5を突き破ることはできず、反対に私の雷撃を喰らい瀕死の状況に陥る。
「まだやるか?それとも降参か?」
と今一度問えば力なく
「俺の負けだ。」
と答えた、そこで私は空に向かってこう呼びかけた
「この世界を管理する女神よ、この者を元の世界に還したまえ。」
と、すると2人の周囲が真っ白な空間に変わった。
「わかりました、その者は元の世界に送り返しましょう。」
と言う女性のような声が響くと、ブラックの姿は消えた。
そして
「この度は迷惑をかけた、今1人いるがその者は私の方で対処するので心配は無用じゃ。」
と聞こえるといつの間にか元の場所に戻っていた。
水が引き、泥だらけの街並みと日照りでひび割れた田畑を見ながら、私は領主らに
「今はこのような状態ですが、来年はきっと元通りの実りがみれるでしょう。その為にみなさんの力が必要です、特に衛生面に気を配って下さい。
病気が流行したりするのがこのような時です。」
と注意しながら復興を指導する。
今回は王国の三分の一ほどが被害にあったため、私1人では手が足らないのだ。
するべき事を説明しながらやってみせ、私にしかできない事以外は領主達の力でやってもらうことにした。
先ずは食糧の問題は解決しているので、街や村の片付けと衛生管理。
私は河川の堤防整備と農業用溜池の製作だ。
ついでに上下水道ようの溜池も作り綺麗な水を街や村に通して行って、暑い赤の季節が駆け足で過ぎ黄の休みももう終わりの頃。
おおよその復興は終了した。
その後私は、国王に災害に強い国造りの献策を行った。
白の季節の頃には、その責任者と指名され王国各地を飛びように回ると、幾つかの備えを施した。
ーー 黄の季節。
黄金色に実った作物が目の前いっぱいに広がる姿はとても良いものだ。
この世界もこれから先は地球のように神のご都合主義でなく、自然の猛威に恐れ対応して生きてゆく必要があるようだ。
そんな事を考えて領地を見ていた私とは別に悲鳴を上げていた者がいた。
「どうしてこんなことに?あの地方はあんなに実りが多いと言うのに。田畑が荒れ病に多くの私の子供らが苦しんでいる。何故なの?」
どこかの場所で、自分の手抜きを未だ自覚していないダメ女神はそう呟いた後。
「あの地方にももう1人か2人連れてきたらいいのかしら。」
と独り言を漏らしていた。
ーー 神々の会議
多くの神々が集まり開かれる会議がある。
議題の多くは、「管理する世界」の状況報告や支援要請だ。
「お願いがあります。私の世界が・・急な災害で滅びに瀕しています。何方か支援をお願いします。」
といつものダメ女神が願いを告げると、地球の女神がすかさず
「あなたの世界には私の世界から不法に魂を攫って行ったではないですか、これ以上私の世界は支援できませんわ。」
とピシャリと拒否した。
ダメ女神はその他の神に懇願し何とか2つの魂を分けてもらえることになった。
「これで何とかなるわ、でも時間が足りないわ大人の状態で連れてゆきましょう。」
とまたルール違反を口にするダメ女神。
神々のルールとしてと言うと、世界の影響を考えると赤ん坊からの転生はコントロールし易いし影響が少ない。しかし大人の状態の転移は、その力と考えの違いで世界に大きな影響を与えることがあるため、禁止されていたのだ。
そのルールさえも守ろうとしないダメ女神の様子を見ていた、地球の女神はエストニアに神社を通して警告するのだった。
そしてそんな様子を見守る、大神がいた。
ーー 天啓と言うか地球の神様からの大事な情報。
実りの一部を丘の上の神社にお供えに向かったエストニア。
「今年も豊作でした、これは今年の新酒です。お口に合えば良いにですが。」
と手を合わせてその場をさろうとした時に、自分が違う空間にいるのに気づいた。
「・・ここは、お久しぶりです。地球の神様。」
と挨拶する私に、地球の女神は
「よく頑張っているようで嬉しいです。そこで一つ情報です、またあのバカがいらぬ事をしました。ここではない王国に2人の異世界人を大人の状態で転移させたようです。多分大きな問題が起こるでしょう、その者達は地球の者ではないので性質がわかりません、準備しておいて悪くはないと思いますよ。」
と言う情報だった。
お礼を言いながら、デザートなどを差し上げた後私は元の世界に戻されていた。
ーー 戦争に備えよう。
私は神からの情報を検討していた。
「大人の状態で招かれた2人者が、災害のあった状況を見てどう反応するかと言うことだ。
「神の使徒」と言うべき立場で存在すれば、その言葉や行動は国を動かすことは簡単であろう。
手っ取り早く被害を回復する手段は、他所から奪うことだ。
最悪戦争や侵略が行われると考えて備えておこう。」
と独り言を言いながら、私は大きくなったシロの背を撫でていた。
◇
「ケンドール公爵様、重要なお話があります。」
と実家を訪れた私はお父様に面会を申し込んだ。
「何事があった。」
私の只事ではない雰囲気に、お父様は硬い口調で問う
「はい。先日この世界の神ではない神より天啓をいただきました。」
と言うと
「ここではないよその神から?」
不審そうなお父様
「その天啓で、この世界に大きな動乱がある可能性を知りました。その為我が王国も戦に備える必要ができました。」
と言うと
「戦が起こると言うのか?」
「起こるかどうかはわかりませんが、我が王国と同じように大きな被害を受けた他の王国に、神の使徒が降り立った可能性があります。ただその使徒は平和を望むものとは限らないそうです。その為の備えです。」
と答える私の話を聞いたお父様は
「何故そのような使徒を使わしたのか?」
とこの世界の神の心を図りかねていた。
「私が言うのはどうかと思いますが、この世界の管理者たる女神はダメ女神ですよ。使徒を遣わせば問題が簡単に解決するとでも思ったのでしょう。そんな女神ですあれは。」
と言う言葉に
「お前は女神様にあったことがあるのか?」
と聞いてきた、そこで私は
「実は私は別の世界で生きていたのを攫われて、この世界に送り込まれた魂を持っております。」
と答えた。
「そうか、そんなことが・・・しかしお前はわしらの子供で間違いない、これからも。」
と言ってくださった。
ありがたいことだ。
その後私らは、今後の備えについて話し合った。
ーー 武器を作ろう
もし転移してきた神の使徒らが交戦的で、ここにはない武器を持ち込んで攻めてきた時に王国民を守る為に、私のできるとこはしておこう。
情報では地球人ではないと言うことだ、すると魔法が存在する世界であれば想像以上の魔法攻撃も考えておく必要がある。
可能な限りの手段を講じておこう。
先ず私はこれまで秘匿していた火薬を大々的に開発することにした。
すでに打ち上げ花火を作る際に、ある程度の技術は完成させていたがより威力の高いものを作っておく必要があるだろう。
それとそれを使った、武器の製作だ。
小銃から機関砲そして大砲と製作し、ロケット砲については、魔道具との抱き合わせで考えていこう。
防御については、既に魔道具で結界5を張り巡らせることが可能なので、動力としての魔石を準備しておこう。
兵士の装備については、個人的な防御結界の魔道具を取り付けた防具を作り、付与することにしよう。
武器は切れ味や不壊の付与をつけた魔剣を作成しておけば・・・手が足りないな。
食糧の備蓄は奪われないようにしておき、城壁や堀を魔物から対人に効果のあるものに変更しておこう。
白の季節が迫っていた。
私はもう直ぐ雪の季節を感じながら準備を整えて行った。
ーー エデン王国 side
「何!女神の使徒と名乗る者が現れたと申すか。」
エデン国王は問いただした。
「はい陛下その通りでございます。腕に女神の刻印がございます。」
と答える側近。
この国の歴史で以前この国に遣わされた女神に使徒には、身体の一部にある刻印がると伝わっていた。
そしてその刻印がある者が現れたのである。
王国は先頃の異常気象で、食糧不足と伝染病が蔓延していた。
この状況を救う為に女神が使徒様を使わされたと喜んだ、王国関係者。
しかしその使徒を名乗る男は、
「病気を治す、食料を作る?どれもこの世界のものが努力するべきことであろう。俺はこの世界を統一し俺の世界にする為に来たのだ、先ずはこの国から俺に差し出せ!」
と国王を目の前に要求したのだ。
「どうした事なの?何故この世界の者の為に力を尽くさないの?何か間違った?」
狼狽するような声が空の彼方で悲鳴のように聞こえた。
ーー ミセール王国 side
セガール王国の東、中央大森林を隔てた場所にミセール王国が存在する。
海を持つこの国は、食糧危機を海の幸で凌いでいた為そこまで窮してはいなかった。
その国に女神の使徒を名乗る女が訪れていた。
「私は女神様からの依頼でこの世界に来た者です。この世界に私の世界の宗教を広めに来ました。先ずは国王様から改宗して貰います。」
と言いながらその女性は、変わった形の教会の建設を求め出した。
「何故なの?私の世界で私以外を祀るなんてどうしてそんなことが?」
また空のどこかで情けない声をあげるダメ女神の声が響いていた。
ーー 戦争の足音。
エデンに現れた使徒と名乗る男の名は
ブラック=デーモン 300歳
魔族の系統に属する男で、魔力がこの世界の人間の5倍ほどあった、威力の強い攻撃魔法も使えた為、隣国トーラル王国を5分の1ほどわずかな時間で略奪していた。
そのおかげで食糧難にあったエデン国王は一息つけたのも事実で、その後はブラックの言うがままに戦争の戦火を広げていた。
セガール王国の重鎮会議
国王を中心にエデン国王の侵略戦争に対応する会議が始まった。
トーラル王国は元々平和を尊ぶ王国で、共和国の滅亡の時もその為に動いていた。
しかし今回は突然蜂起したエデン王国兵が、侵攻してきた為避難を優先して領民を守ったのだが、これ以上は戦争を回避できないとセガール王国に支援を要請してきたのだ。
今まで手に入れた情報では、エデン王国にある日突然女神の使徒を名乗る男が現れて、この世界を統一すると宣言した。
男はとても強く、魔法の威力も規格外で止めるものがおらず、かえってその指揮に従い出したと言うことだ。
ケンドール公爵は国王に発言を求めた
「何か有るのか?」
「はい陛下。数ヶ月前にエストニア伯爵がある情報を伝えてきました。
その情報は不確かなものでしたので報告には至りませんでしたが、今回の話を聞いて確信しました。
女神は2人の異世界の者をこの世界に連れてきて、今回の災害から人々を助けようとしたようですが、稚拙な方法に出たらしく危険性があると言う警告を他の神から、息子は天啓を受けたそうです。
その為、息子エストニア伯爵は事前に準備をしておくと言っておりました。
今回のトーラル王国の支援エストニア伯爵に任せてもらえませんでしょうか。」
と言う話であった。
「良かろう、エストニア伯爵に我が王国の代表としてトーラル王国に派遣をすることにする。」
と国王が決断した。
◇
3日後。
私は国王の命を受けてトーラル王国に支援という目的で遠征した。
率いる兵は5000、どちらかと言うと領民の避難と食料及び怪我人の手当てが1番の目的の構成と装備である。
それから5日後。
トーラル王国の国王と謁見する。
「セガール王国国王の命で駆けつけました。食料及び薬などの入薬品など十分な量をお持ちしました。」
と申し上げると
「かたじけない。ただ戦況が思わしくない、戦力的な支援の方はどうなっておるのか?」
と言う問いに
「戦力支援については私エストニア伯爵が微力ながら支援させて貰います。」
と答えると
「何、その方がエストニア伯爵か。話はこのトーラル王国にまで聞こえておる、その力民のためにお借り致す。」
と答えたら国王であった。
ーー 開戦、初めての戦い。
私は今回女神の使徒と戦うにあたり、いくつかの作戦を考えていた。
先ずは敵の戦力の確認と個人としての戦力だ。
エデン王国軍は、総勢10万で攻め入ってきている。
エデン王国側に食料がないためか、略奪が目的の侵攻に見える。
敵将は異性界から来たと言う魔族らしい男。
数回魔法攻撃と武威を見たがそこそこ使えるようだが、レベルとしてはマッケンジー伯爵と同じくらいのようだ。
空腹な軍の足を止めれば当然食糧難に喘ぎ出す、それ以上の進行はできないはずと見た私は、道が限られた谷で進行方向に長大な城壁を作り出した。
ここでしばらく足止めをすれば、エデン王国軍は崩れるだろう。
その後は使徒を倒せばいいと、方針を決め実行に移る私。
そこにエデン王国軍は現れた。
目の前の城壁を見て
「あの様な城壁の情報はなかったはず。」
「見せかけばかりのハリボテであろう、突き崩せ!」
と言う檄を受け、1万ほどの兵が城壁に攻撃を仕掛けるが歯が立たない。
後続を1日待ち、2万の兵で再度攻撃するがそれでも歯が立たず撤退する。
さらに3日を要して5万の兵で攻城攻撃を行うエデン王国軍は、その城壁の丈夫さに舌を巻く。
「全く歯が立ちませね。」
「ブラック使徒様に打開策をお願いしよう。」
と言う話になり、ブラックが前線に呼ばれた。
「あの様な塀如きに何を手こずっておる、俺が手本を見せてやる良く見ておけよ。」
と言うと城壁の前に姿を現した。
城壁の前に1人の男が歩いてきた、
「トーラル王国軍に告ぐ。降伏をすれば傘下に入れてやろう、拒否するのであれば、叩き潰すのみ。」
と言うと魔力を練り上げ城壁へ攻撃魔法を叩きつけ始めた。
しかし結界5で防御している城壁はびくともしない。
膠着した状況が5日ほど続いた、10万からの兵を食べさせる食量を持っていないエデン王国軍は、次第に士気が下がり国元へ逃げ帰る兵が出始めた。
これに計画を潰されてたまるかと考えた使徒ブラックが、単騎で城壁を越えてやってきた。
「これは何だ!兵がいないではないか。逃げるための城壁であったか。」
と呟くと
「それは少し違うな。この城壁はお前と2人で闘うためのものだ。」
と言う声が聞こえ、空から若い男が舞い降りてきた。
「お前がトーラル王国の戦士か、女神の使徒たる俺に敵うと思うとは笑止千万。消し炭にしてやろう。」
と言うと攻撃魔法を打ち出しながら、剣で攻撃をしてきた。
打ち出された火魔法は結界5の防御で無効化、振り下ろされる剣を軽く弾き返すと、剣を突きつけ
「降参すれば命までは取らずに済ませよう。」
と言う私の言葉に激昂した使徒は、最大魔法を私に放ってきた。
しかし業火の魔法は結界5を突き破ることはできず、反対に私の雷撃を喰らい瀕死の状況に陥る。
「まだやるか?それとも降参か?」
と今一度問えば力なく
「俺の負けだ。」
と答えた、そこで私は空に向かってこう呼びかけた
「この世界を管理する女神よ、この者を元の世界に還したまえ。」
と、すると2人の周囲が真っ白な空間に変わった。
「わかりました、その者は元の世界に送り返しましょう。」
と言う女性のような声が響くと、ブラックの姿は消えた。
そして
「この度は迷惑をかけた、今1人いるがその者は私の方で対処するので心配は無用じゃ。」
と聞こえるといつの間にか元の場所に戻っていた。
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それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
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※小説家になろう様でも掲載しております。
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