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2度目のドラゴンスレイヤー

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ーー それぞれの思惑

国王の執務室。

「国王様、また新たな報告がまいりました。」
と宰相が執務室を訪れて報告する。
「今度はどうした?またワイバーンでも狩ったか。」
と答える国王に
「此度は地竜です。」
と答える宰相。
「何!地竜だと。小物か?」
「いえ、30m程の成竜です。しかも単独で討伐し今度のオークションで出品するようです。」
と答える。

「確認ができたらドラゴンスレイヤーとして、伯爵か。」
と呟く国王。
「王国で買取できそうか?」
「難しいと思われます。ケンドール公爵によると、息子は物足りなかったようでまたドラゴンを狩ってきそうだとお言葉がありました。」
「30m級の地竜ではもの足らんのか。」

ため息を吐く二人、その側で話を聞いていた王子が
「父上。怪我も完治して元の様に動けるようになりました。出来るなら私の剣の先生にエストニア子爵様をお付けください。」
と頼み込んできた。すると何か思い付いたか国王が
「分かったお前もドラゴンスレイヤーになるまで修行を諦めぬ様に。」
と許しを出した。
そばの宰相が
「王子がドラゴンスレイヤー。良いですね。」
と笑った。



ーー ケンドール公爵家

「公爵夫人。またご子息のエストニア子爵様がご活躍とお聞きしましたわ。」
と王都のパーティー会場で誉め殺しに遭う公爵夫人。
「大したことではありませんわ。小物だったと息子も申しておりましたし。」
と、謙遜しながら人の顔を確認する公爵夫人。

そこにウエスト男爵の男爵夫人が恐る恐る近づき
「公爵夫人にお礼申し上げます。先日娘二人の結婚式にエストニア子爵様から多大なお祝いをいただきました。公爵夫人からも感謝していたとお伝えください。」
とやっとの思いで口にした男爵夫人を公爵夫人は優しくエスコートして
「息子エストニアが認めたのですもの。ウエスト男爵家は、勿論エストニア子爵の寄子として活躍してくださるのでしょう。」
と言うと周りから
「まー。上手くおやりになって。」
「本当、男爵家風情が。」
と言う言葉が聞こえてきたが、公爵夫人は
「気にしなくて良いのよ。息子は爵位で人を見ないの、ダメなら伯爵でも潰しかねない性格だから。最後まで尽くすだけで良いのよ。」
と言いながらポシェットから一つの箱を取り出し
「男爵家夫人この中から一つのプレゼント致しましょう。どうぞ。」
とアクセサリーの入った箱を差し出され、一つを手に取った。
「それで良いのね。これはミスリル製のアクセサリーよ。大切にこの様なパーティーでは身につけてちょうだいね、私の派閥ですから。」
と言うと周りのご婦人型の態度が豹変した。

「ウエスト男爵夫人あちらでお話ししませんか?跡取りはお幾つですか?」
と言いながらもてなし始めた。


「あの子は見てない様で良い縁を掴むのよね。あの男爵家も何かあると思うわ。」
と公爵夫人は呟きながら次のターゲットを探した。


ーー ドルトミン=セガール公爵家


「何だ?新たな情報か?」
セガール公爵が、ギルドの副ギルマスの甥っ子に話しかけた。
「はい。エストニア子爵様がまたやらかしました。」
「今度は何をしたんだ。」
「ドラゴン、地竜を狩って来ました。」
「子供か?」
「本人は若いと不満の様ですが、30m級の成竜です。」
「何と。それで王家で買い取るのかそれともギルドか?」
「いいえ、オークションで売り出す予定です。あちらの公爵がやる気を出されています。」
「それでは私が買い取ることにしよう、恩には報いなければ。」
「そうおっしゃると思っていました。」
と副ギルマスは納得の笑顔を見せる。



ーー カムイル子爵の二女サーシャ


私は、学園の行軍訓練で魔物に襲われ生きているのが不思議なほどの怪我を負いました。
当然生きていたのがやっとで、貴族以前に女としても生きる希望を絶たれていました。
そんな絶望の私の光を当ててくださったのが、エストニア子爵様です。
まだ私と同じ8歳と言う年に関わらず、ドラゴンスレイヤーになられたとか。
当然のお話です。
私は自分の一生をかけてあの方に尽くす所存です。先ずは公爵夫人にこの思いを伝えなければ。
連日、お母様に無理言って公爵夫人が出られるパーティーに参加していますが。先日とうとうお声をかけてもらいました。
「貴方は、息子が治療したカムイル子爵の御令嬢ですね。この中から一つの好きなものを選びなさい。そして、私と息子に忠誠を誓うのです。」
と言われ、天にも登る気持ちでした。
「これをいただきます。」
と一つのアクセサリーをいただくと公爵夫人が
「これはね、息子が作ってくれたミスルル製のアクセサリーです。これを身につけている者は皆私の傘下です。困ったことがあったらおっしゃてください、力になります。」
と言ってくださったのです。


ーー 青の休日


青の休日がやってきました。

酒の出来が気になり始めました。
ほぼ40年ものの出来です。瓶詰めして収納です。

今回の休みは、僕の拝領した領地経営に使うことにしました。
元々王家が所有していた領地で、広くはないが利便性のいい領地と聞いている。

確かに馬車で1日の距離にある。
交易の通過地点で、宿場町の様な場所だ。

僕は領地全体を見て回り、計画を練る。
地質を確認すると、地下に温泉の水脈とミスリル鉱床を見つけた。
土地も肥沃で農業にも適している様だ。

僕はここを公爵領の食糧庫であり且つ温泉のある美容に特出した、施設を作ることにした。

先ずは資金となる、ミスリル鉱床からミスリルを半分ほど掘り出す。
所有している倍以上に量を確保できた。
一部を売って開発の資金とした。

農業従事者を集め、5年間は無税で土地を貸し出した。
大勢の移民が訪れ活気が爆上がりした。
温泉の掘削は、魔法ならではの簡単さで。数日で湯量豊富な源泉を掘り当てた。
僕が設計図を引き、温泉施設の建築を豊富な資金で行うと。
休み中に出来上がったのには驚いた。
専用の宿もいくつか作り出し、完成した分で簡単なパーティーを催ししたら予想以上の参加者が殺到したので、数回に分けて実施した。

この時に役に立ったのは、公爵領で育てていた子供たちだ。
立派になって各施設をうまく回してくれた。
目玉はお母様の名前を冠した、美容棟である。
この前、ドラゴンを倒してまた魔力が上がった僕の作る美容液の効果が数段上がったのだ。

お母様をお姉様と思わず呼んでしまうほどの効果があります。
最近お母様のそばにはお若い人が増えてきたが・・考えない様にしましょう。

お母様の開催するパーティーは、半分はここで開催することにした。


休み明けには最後の学園行事、ダンジョン探索がある。
今のうちに力をつける必要がある。
頑張ろう。


ーー 王子が押しかけてきた

「エストニア子爵。この私に修行をつけてください。」
僕の目の前に王子のベストニア様が頭を下げている。
「分かりました。頭を上げてください。」
と言うと嬉しそうに顔を上げた。
怪我はすっかり良くなったそうで、強い国王を目指したい様だ。

ちょうどいいので、魔物を狩ってレベル上げを一緒にしてもらおう。

先ずは武器の作成から。
ミスリルが豊富にあるので、魔剣を製作する。
魔道具もミスリルで作ると小さくて効果の高いものができると分かった。
王子に渡しているが、収納の腕輪がそれだ。
かなりの容量があるのに魔力は少なくて済む。
「これは国宝級ではないか?」
と聞かれたが
「僕が作っているのが国宝級なら自宅が国宝になりますよ。」
とジョークをかまして他の魔道具も作る。

防御用と攻撃用の魔道具だ。
昔の(地球の)知識でバリアをイメージした結界防御。
それに誘導ミサイルをイメージした攻撃魔法の魔道具。
どちらも魔力を流し込むだけで発動できる。

これを王子に装着しておく。
森に入り、大物の魔物を狩り始める。
最終的には火竜を狩る予定だ。


           ◇

「来ますよ!構えて。」
僕の指示に素直に従う王子。目の前にオークが現れる。
「負けるか!」
気合を入れた王子の剣がオークの分厚い胸板を右から左に抜ける。
「グオオオオ」
オークが痛みに叫び声を上げる。

「攻撃を交わして、首を狙う!」
僕の指示に素早くオークの攻撃を交わした王子の剣が左下から右斜めに走る。
「スパッツ」
鋭い音がした後、皮一枚残ったオークの首が垂れ下がり後ろに倒れる。
オークの血を浴びて息の荒い王子を洗浄魔法で洗い流すと。
「単独で倒せる様になりましたね。」
と健闘を讃える。
「まあそうだな。エストニア子爵には敵わぬが、私も上達したと言うことだろう。」
まんざらでもない顔で仕留めた獲物を収納袋に収める。

魔道具の補助はあるものの王子はなかなかセンスがある。
僕の場合は相手の動きが遅く見えるし相手より早く動けることで、楽に討伐しているが・・これはスキルなのか?

こう言う調子で3日森の中で狩りをしていると、王子の身体に異変が。
「体の節々が痛く身体中が熱いのだが。これは毒でも受けたのか?」
王子が心配顔で訴える。

結界の魔道具で安全地帯を作り、テントを出して休ませる。
しばらく様子を見よう。


            ◇

2日後。
テントから出てきた王子を見て驚いた。
王子の身体が2回りほど大きく成長していたのだ。

「王子。大きく成長しいてますが、皆んなそんなに成長するのですか?」
「馬鹿なことを言うな。これは急激なレベルアップによる成長だ、珍しくもないと聞いたことがある。」
と答える王子は、自分の体を確認しながら嬉しそうだった。

その日からの魔物狩りは、それまでが嘘の様なほど快調だった特に王子が。
「レベルアップと言うのは効果があるな。」
一人ごとを言いながらビッグボアを葬る王子。
この後狩りは終盤を迎える。

            ◇

さらに3日後。
「王子。探していたヤツが居ました。」
僕の言葉に緊張する王子。

そいつは500mほど先の岩場で休んでいる様だ。

「あれが火竜か!大きいぞ。」
王子の呟きに恐怖が滲む。
「大丈夫ですよ。作戦通り行きましょう。」

王子の魔剣に風の魔力が加わる、切れ味とスピードを上げたのだ。
「アブソリュート・ゼロ!」
僕の魔法が火竜を中心に広がる。
異変を感じた火竜が飛び立とうとするが、既に手足が凍りついてうまく動けないまま体の自由も奪われつつある。
火竜は身の危険を感じ、炎のブレスを吐こうと身構える。
すかさず僕は
「結界レベル5発動!」
と言いながら火竜の首から上を中心に結界で覆う。
レベル5というのは、結界の強固さを表した僕独自のもので最大のものが5になる。

「ゴオー。ギャアアアー!」
自分で吐いた炎のブレスが自分に返ってきて苦しむ火竜。
ダメージを受けたところで、さらに凍り付く火竜。
「王子今です!」
僕は声をかける。待っていたとばかりに王子が火竜の左後ろから大きく跳躍して、剣を振り下ろす。
「シューツ!」
火竜の首が半分ほど切り裂かれる、そこに
「エアー・カッターレベル5」
と言いながら僕が攻撃すると、火竜の首が切り落とされて地面に落ちる。
「やったぞ!火竜を倒した!」
興奮した王子。
僕は火竜の大きな体を収納魔法で収納すると王子に
「王子首は王子の収納袋に。」
と指示をした。


ーー 狩りの成果と王子の成長

森から戻った僕らは、国王の前に立っている。
城に戻ってきた僕らを見つけた宰相が王子の成長に目を見開き、「しばし王の間で待て。」と言ってどこかに行ったのだ。

王子と王の間で待っていると、そこに宰相を後ろに引き連れた国王が入室してきた。慌てて礼を尽くす僕。
「固くならずも良い。楽にいたせ。」
国王の声に顔を上げる僕と横で自信に溢れる顔を見せる王子。

「ベストニアよ、身体も心も成長した様だな。」
と問う国王に王子は
「はい。見事大望であるドラゴンスレイヤーに成りました。」
と答える王子に
「して獲物はどこじゃ?」
という国王に
「それではこちらに」
と王子は中庭に移動すると、火竜の首を取り出した。
「おおこれは・・火竜の首か!かなり大物のようだ。」
国王も興奮気味に呟く。
身体は中庭では出しきれないからね。


ーー 国王ナポレオン  side

宰相が慌てて飛び込んできた。
「王よ。王子が成長して戻ってきましたぞ!」
話を聞くと、身体も大きくなり顔には自信と威厳が漂っていたと。
「やったのか。直ぐに会おう。」

ということで冒頭の謁見になるのだが、予想以上の火竜の大きさに国王も
思わず。
「エストニア子爵に褒美を遣わす。」
と宰相に相談することなく発言してしまった。
宰相は仕方ないという顔をしていたが改まった態度で。
「エストニア子爵に事の詳細を求める。報告を待つ。」
とその場を終わらせた。


ーー ケンドール公爵 side

また息子が大願を成就した様だ。
国王から王子の修行を言い付けられた息子は、森にドラゴン退治に向かったが。
10日ほど帰らなかった、心配していた頃に情報が。
何でも大きく成長した王子を連れて城に戻ったと、そこで大きな火竜の頭を見せたとか。

確定ではないが多分、ドラゴンスレイヤーとなった王子がレベルアップによる体の成長。それと討伐したドラゴンの首を持ち帰ったのだろう。
首だけ・・中庭で・・、そうかそれほど大物か。

オークションに予約をさせよう。
軽い足取りで執務室を出る公爵は、いかにも楽しそうだった。


ーー 王女メアリースクイブ side


「狡いですわ。お兄様は。」
ご機嫌斜めな王女。
兄妹揃ってエストニア子爵が大好きな上、一人残された形の王女が機嫌が悪いのも納得出来る。
「お母様に言って、今度は私が・・・。嫌だわ。」
想像して悶える王女を見ぬふりをしている侍女が微笑む。

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