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旅に出よう、そして王都

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ーー 旅に出よう。

次の日、開拓村へ向かって馬車は進む。
昼頃には開拓村についた。
荷がないのでかなり早く着いた。

村長に盗賊らの話をした。
「今後は冒険者を雇うとするよ。」
と言う村長が
「お前はもう何処かに出ていくんじゃないか。」
と聞いてきた。
「ああそうだな。もうそろそろ他の世界を見てみたい。」
と言うと「そうだろうな」と村長は言いながら離れて行った。

俺は魔クモのティムは諦めたが子供を卵から孵して、人が餌を与えて世話をすると大人しく飼われることを知った。
これから先もこの村ではあの絹のような布を生産できるだろう。

夜になり俺はセレナ親子に
「もうすぐ俺はこの村を出てこの世界を旅して回ろうと思う。長い間世話になった。」
と言うとセレナは
「うん、分かってた。貴方にとってここは狭すぎるわ。貴方ならどこに行っても立派に生きられるでしょう。でも寂しくなったらここに帰ってきてね。」
と目を真っ赤にして言うと自分の部屋に駆け込んでいった。


5日後俺は村を後にした。
馬車にはあの布などが積み込まれている、餞別のつもりなんだろう。
セレナは顔を見せなかった。

俺は馬車を走らせながら、最初の街ウエスタンへ向かった。

街に着き宿を探して泊まるが風呂がない、残念だ。
冒険者ギルドで収納している魔物を買取に出して、他の街への依頼を探す。
5日後に[センタータークという街に向かう依頼があった。募集は10人ほどのようだ。]

受付に依頼が受けられるか尋ねると
「貴方はDランク方ですね、大丈夫ですこちらから連絡しておくので、3日後の昼にここに来てください。顔合わせがあります。」
と言われた。

3日後の昼前、ギルドに向かい受付に尋ねると
「二階のA 会議室で待っていてください。」
と言われた。

会議室に入ると既に5人が来ていた。
頭を下げながら中に入り空いてる椅子に座る。
30分ほどで、以来の商人も来たが残りの冒険者はまだ来ない。
「遅くなりますので、今から話を始めますね。」
商人はそういうと商隊の規模と目的地、途中の立ち寄る村や街の予定を話して。
後は報酬や途中の食事や宿泊時の補助を伝えた。
その時になって少し酔ったような男達が現れた。
「もう始めてるのか?俺たちがいなきゃ始まらんだろうが。」
かなり高圧的な男達のようだがちっとも強うそうには見えない。
商人が
「私たちの商売上、時間を守れない冒険者を雇うと気はありません。貴方達は必要ありません。」
と毅然と断った、すると男の1人がイキリ出して
「D ランクの俺たちがいなきゃあ、旅も特にできねえぞ。」
と脅し始めたので
「Dランクがそんなに偉いなら、俺がいれば問題ないだろう。仕事前に酒を飲んでくるようなものはこっちから願い下げだ。」
と言えば他の男らも俺に向かってこようとしたが、俺が殺気を浴びせるとガクガクと震えながらその場に崩れるように座り込んだ。
「邪魔だ!どこかに消えろ。」
と静かにいうと這うように逃げて行った。

「ありがとうございます。貴方がギルドが言っていたDランクのタケヒロさんですね。よろしくお願いします。」
と言われた、その後残りの5人の冒険者パーティーとも挨拶を交わしその場を解散した。


  2日後。


馬車10台の商隊である。それに俺の馬車が1台加わってそれなりの規模の商隊が東に向かって出発する。

あの時のDランク冒険者パーティーは、悪い噂の者達で商人も他にDランクが入れば断りたいと考えていたようだ。

旅は順調に進む、3日後に最初の立ち寄り先の村についた。
商隊は村や街で商品を交換するように商売をして移動するようだ。
商人とも仲良くなり、夜などは同じ食事をすることが多くなった。
当然俺の持っている魔熊の肉がメインだ。
「しかしどれだけ魔熊を狩られたのですか?ウエスタンの街に最近豊富に出回るようになったけど、全部貴方が狩ったものでしょ?」
「確かに開拓村の先の森にはいくらでもいるからね。」
「開拓村といえば、珍しい布地を作ると聞きましたが、今回手に入れられなかったんです。残念です。」
「あの布なら少しばかりなら俺も持っていますよ。」
と言うと、
「お願いです見るだけでもいいので見せてくれませんか?」
と言う商人に一巻きの布地を見せた。
「これは凄いものです。これ一つで金貨100枚は硬いでしょうね。」
と言う商人に俺は
「それなら次は誰か開拓村に行かせるべきですね。かなり安い値で卸してるので。」
と教えてやった後、
「これ一つなら譲りますよ。」
と言うと大いに喜んで金貨100枚を差し出すのを、半分だけ受け取り
「少しでも高く買い取ってあげてください。」
と言葉を添えた。


ーー  風呂が欲しい。

次の街に立ち寄った際、俺は持ち運びできる風呂を作る事にした。
「どうせ収納するんだ、いい材料で作るか。」
と言いながら俺は、街の木工所に立ち寄り風呂桶を注文した。
その後魔道具屋に立ち寄ると、
「水かお湯を作れる魔道具はないか?」
と聞いたら
「水を出す魔道具はありますが、かなり魔力がいるので売れずに埃をかぶっています。」
と言われた、それを使ってみるとかなりの水量が出るので買う事にした。
「金貨100枚です。」
と言われその場で支払った。
金はまだ金貨500枚は残っている、余裕だ。

夕方には出来上がった風呂桶を受取、内側を謎金属でコーティングする。
ほかに壁となる板塀やスノコも購入している。

薪は腐るほど収納しているので問題無い、しかしどれだけ収納出来るんだろう。

次の日の朝街を出る、次の目的地まではおよそ4日ほど。

問題なく移動を続ける、野営の場所で適当なところを選んで土台を取り出し、その上に浴槽を据えると。
周りを板塀で囲み簀を置いて、焚き口に薪を準備する。
周りで商人らが何をしているのか興味を持って見ている。
水を出す魔道具を風呂桶の横に据えて魔力を流し、風呂桶に水を溜める。
薪に火をつけ風呂を沸かし出したところで、みんなが騒ぎ出す。
「何だ!これだけの水をあの短時間で溜めるなんて!」
「いやそれ以上に収納魔法だよ、商人の憧れじゃないか。」
と騒いでいたが、商人の責任者が俺に話しかけてきた。
「タケヒロ殿は、いろいろな魔法も使えるのですか?」
「いや俺は魔法を習ったことはない。これはスキルだよ。」
と答えた。

風呂が沸きゆっくり入る俺、風呂から出ると
数人の商人が後学のために風呂に入らせてほしいと願い出た。
お湯を抜こうかと考えていたので、それで良いならと言えば。
みんなで入り出したので途中で水を足して、沸かし直した。

その後もちょくちょく風呂を出して、夜空を見ながら露天風呂を楽しんだ。
しかしその時商人頭の男は、気づいていた。
内側にコーティングされている金属が非常に珍しく高価なものであることを。


ーー 初めての大都会?それでもこの程度。


目的地のセンタータークの街に着いた、ここはセンターターク王国の王都である。
いわゆる大都会だ。
立派な城が見えてきた、期待が持てるな。

商業地の中でも大きな商会の前に止まった、ここが目的地のようだ。
「イエズ商会か。」
呟く俺に商人頭の男性が、
「寄っていきませんか?」
と声をかけた、頷き後をついていくと商会の中に
「誰かお客さまにお茶を持ってきておくれ。」
と声をかけ商談用の部屋に案内してくれた。

「ここがうちの商会の本店です。私は商会長のスマイル=イエズと言います。今回の旅はとてもためになりました。是非これからも親しくお付き合いしてほしいものです。」
と言いながらスマイルと名乗った商人頭は、一枚のカードを差し出した
「入り用なものがありましたら、是非うちにお寄りください。この王都でも品数と品質では自信があります。」
と言うので俺は
「ここには、マットレスはありますか?ベッドの上に敷くものです。」
「聞いたことがありません。」
「では羽毛布団はどうですか?水鳥の羽を詰め込んだものです。」
「それも聞いたことがありません。」
「冷蔵庫はどうですか?食材などを低温で保存するものです。」
「・・それも初めて聞きます。」
「では、火を使わず調理ができる魔道具か何かはありませんか?」
「申し訳ありません。そんなものが存在するのでしょうか?」
と最後は申し訳ない顔で聞いてきた。
「この世界にそれらがあるか私は知りませんが、有ればとても便利だとは思いませんか?他にお湯をいつでも作ることができる魔道具、部屋の空調を整えて快適にする魔道具、トイレを快適に過ごせるようにする魔道具、食材の水分を抜く事によって保存と味を長持ちさせる技術は、旅を楽にしてくれるでしょう。他にも便利なものは想像できますが、この世界の人たちは何故求めないのでしょうか?俺には理解できません。先ほどいくつかのものがあるか聞きましたが、あれは貴方から品揃えに自信が有ると感じたからですが、そでも俺の求めるもの一つすら無いのです。この世界は文化水準が低すぎます。」
と一気に言うと、頭を下げて
「実現不可能なことを言ったことでは無いのです、求めれば必ず遠く無い時期に手に入れられる物ばかりなのです。」
「俺の欲しいものが店に並んだら買いにきますね。」
と言って俺は商会を後にした。

その足で冒険者ギルドに向かい、依頼完了の報告をして報酬を受け取った。
「ここで風呂のある宿を教えてほしい。」
と受付嬢に尋ねいくつかの宿を聞いた後、俺は宿に向かった。


  スマイル=イエズ


私は今日ほど自分が自惚れていたと、実感したことはなかった。
今まで40年間寝食を削って働いてきて、商会を大きくしてきた。
この王都でも1・2位を競う商会になったと自負していた。
しかし先ほど僅か16歳ほどの少年と言える者から、幾つかの商品があるかと聞かれた。
どれも聞いたことも考えたこともなかった。
それだけなら、出鱈目を言ったまたは夢を語ったと言える。
しかし彼は、それが実際にあり使っていたと思えることを言ったのだ。
いかに優れた冒険者だと言えども僅かな年で・・・信じられなかったが。
彼が取り出した浴槽の金属はミスリルだった。
あれだけ高価で希少な金属を、風呂のコーティングに使うなど予想もしない。
多分他にも彼は予想すらできないものを持っているにだろうし、作ることができるのだろう。
欲しい・・彼の作る商品が。

スマイルはその後ことある事に、タケヒロを指名依頼して繋がりを持ち続けるのだった。
そしてふと先ほどの言葉に中に商品のヒントがある事に気づいた。
「水鳥の羽を詰めた、羽毛布団。これなら作ることができる、しかも最高級の布地がこの手の中にある。作って見せよう。」
スマイルは彼から金貨50枚で買い取った布地を手に、決心した。
もう一度夢を掴むと。
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