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内戦と魔王の誕生

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ーー  内戦


強くなると人は勘違いをする。
ゼスト王国の国王と宰相らもゼスト王国が、この世界でも脅威となる存在が無いことに勘違いをし始める。
「陛下、ゼスト王国は世界の平和のために広く善政を行うために、従わない国を排除してはいかがでしょうか?」
と国王を唆し始めた。

その一端にファーストが獣人王国を実質的に個人で属国にしたことを知ったことから、自分達も同じ様に他国を支配できると考えた様だ。
当然、その様な考えに反対する高位貴族もいる、両者の立ち率は日増しに目立つ様になりある日とうとう、暗殺未遂という形で爆発した。

ゼスト王国の高位貴族は、
・宰相~メガル公爵
・国務大臣~ルーサー侯爵
・国防大臣~ギガント伯爵
・内政大臣~セシル伯爵
で、ルーサー侯爵を宰相のメガル公爵と国防大臣が結託して暗殺を計画したのだ。
内政大臣は中立派であったがこの事件を機会にどちらかの陣営に入る必要に迫られた。
そこでセシル伯爵は、ファーストに泣きついたのだ。

「スベラート侯爵にお願いがあります。今ゼスト王国が二つに割れております、このままでは内戦となるのは日を見るより明らか、どうかお力をお貸しください。」
ということだった。
俺の力を後ろ盾に他国を属国化しようと考えているのか、馬鹿な奴らだ手を広げても管理できもしないのに。

ファーストは、セシル伯爵に証拠集めを指示した。
そのあとルーサー侯爵に面会し、ある物を貸し与えた。
「これは結界の魔道具だ、これを起動すればドラゴンブレスでも防げる。しばらく家族と共に出歩かない様にしておくことだ。」
と言うとサッサと立ち去った。

その後も暗殺者がルーサー侯爵に向かうが、結界を越えることが出来ず暗殺を遂行することが出来ないばかりか、暗殺者が生きて捉えられ始めた。

これに焦ったのは、依頼者と暗殺集団である。
依頼者の情報を漏らせば暗殺者としての価値を失う暗殺集団は、ファーストに目標を変えることにしたのだ。

ファーストは妹達に
「俺たちを狙って、暗殺者らが来ることが予想される。生きたまま捉えて組織ごと殲滅させる、依頼者もハッキリさせるから協力してくれ。」
と言うと何かを考えている様だ。

強硬派のメガル宰相が、政敵のルーサー侯爵を失脚させるためにありもしない汚職事件をでっち上げて、ギガント伯爵に出撃を命じた。

ルーサー侯爵の屋敷を取り囲む様に5000の王国軍が、陣を敷き投降を呼びかける。
身に覚えのないルーサー侯爵は当然それを拒否する、それをもって王国軍が攻撃し始めた。

いくら矢を射掛けるも結界に阻まれて効果がない、そこでギガント伯爵は、
「魔法部隊、魔法攻撃を行えへ!」
と結界を壊すことを命じた、しかしドラゴンブレスさえ防ぐ結界の防御力を破ることなど無理なこと、魔法師が疲弊するまで攻撃するが全く効果がなかった。

その頃、証拠を集めていたセシル伯爵の元に100からの暗殺者が届けられた。
「これはどう言うものたちでしょうか?」
と問うセシル伯爵に妹達は
「暗殺集団とその構成員です。直ぐにでもしゃべるでしょうから、裏付けを取ったら陛下の下に向かってください。」
と言うと立ち去った。

王都内の3つの暗殺集団の構成員とその代表がそこに居た、セシル伯爵はペラペラ喋りだす暗殺者達に違和感を感じてはいたが、裏付けが取れたとこで陛下の下に向かった。
陛下に面会を求めると、宰相が邪魔をし始める
「陛下は今お忙しい、後にせよ。」
と面会を取り次ごうとしない。
終いには
「セシル伯爵に反逆罪の疑いある、身柄を拘束せよ。」
と兵士を呼び始めた。
「何を・・するのですか?貴方こそゼスト王国の運命を迷わせている張本人ではありませんか。」
と訴えるが、どうにもならず捕らえられると覚悟したその瞬間、雷鳴が轟く。

兵士らが雷撃で倒れ伏す、そこにファースト侯爵が姿を表す。
「宰相よセシル伯爵を連れて王の下に向かおうか。」
と有無をも言わせぬ威圧で2人を連れて謁見の間に連れて行く。

そこには既に真っ青な顔のゼスト国王が座っていた。
ファーストを見つけた国王は慌てて席を立ち下座に移動する。
国王の王座に悠然と座るファーストは、
「これからゼスト王国の運命を決める。」
と言うとこれまでの流れと証拠をセシル伯爵に説明させて、ファーストが
「国王よ、これらはその方も関わっておるのか?返答のいかんでは王国の運命を左右する心して答えよ。」
と言うと国王は
「ワシの不徳とするところ、国王の座を譲り隠居いたします。」
と答えた、そこで宰相に
「お前が唆したことは、証拠が示している。俺に反旗を示すか?」
と直接証拠を突きつけられ弁解のできぬ状況に
「これはこの世界の平和を願っての行動で、個人の考えで行った者では無い。」
と答えると
「言い訳は許さぬ。」
とファーストが言うと宰相の首を切り飛ばした。
「宰相は病に倒れた。暫くはセシル伯爵が代行せよ。国王も体が思わしくない暫く代行はルーサー伯爵が行い次の国王を決めることとする。」
と言うとファーストは王座から降りて王城からルーサー伯爵の居城に飛ぶ。
攻めあぐねるギガント侯爵の前に姿を見せると
「国王と宰相は、病で王座と職を辞した。国防大臣も病にかかっていると見た如何かな?」
と言われたギガント侯爵は、
「こいつを殺せ!」
と兵士に命じた途端、雷鳴が響き、黒焦げになるギガント侯爵。
「国防大臣は、病のため急逝した。王国軍の指揮者はここに」
と命じ騎士団長が姿を見せると
「内戦は収束した。王国軍は速やかに王城に戻りセシル伯爵及びルーサー伯爵の指揮下に入り、ゼスト王国を乱すものを捕らえよ。」
と命じた。
そしてルーサー伯爵の居城に入ると
「国王は退陣した宰相は病で亡くなった。ルーサー伯爵は、新しき国王擁立の準備を行へ。」
と命じて城を後にした。

その後幾つかの捕物はあったが、ファーストの意向を無視できるものはなく新しき国王が立ち、セシル伯爵は侯爵として宰相にルーサー伯爵は同じく侯爵として国防大臣を兼務することになった。

ここに「ゼスト王国の1日天下どり」と言う諺が生まれた内戦が集結した。


ーー 世界大飢饉


ゼスト王国の内乱が速やかに集結したその年、世界は大飢饉の危機に瀕することになる。
ことの始まりは、作物の収穫不良と魔物の大量発生だ。
ファーストの管理する畑以外での作物の生育不良は甚大で、世界中で今後の食糧難が予想されることになった。

さらにわずかな収穫を目前にして田畑が溢れた魔物のために全滅し始めたのだ。

ファーストは、この異常現象に作為的なものを感じながら魔物を狩って行く。
「どうせ食べるものがないのなら、魔物を食べればいいだろう。」
と言いながら大量の魔物を狩り尽くし収納して行く。
さらには海に飛んでいき、海産物を収納する。

この大飢饉で、世界の人口は半減すると考えられていた。

ゼスト王国がそこまでの危機感を感じていないのは、ファーストによる栽培の恩恵で収穫量が減ったといえ、十分な食料を生産することができていた。

それを踏まえてファーストは、飢饉の激しい王国を巡り魔物を狩り尽くすとその肉を分け与えて回った。
その甲斐があって、かなりの数の飢え苦しむものが出たにも関わらず、死者自体は予想の10分の1にも満たなかった。

海産物の流通で、大きな富を得たファーストは、その金を使って何かをしようとしていた。


ーー 世界を滅ぼす集団


邪神というものが存在する世界、当然この世界の滅亡を望むもの達がいてもおかしくはない。
「邪神信仰」「邪神教」と呼ばれる集団がいる。
彼らは、滅亡し邪神の元に旅立つことが幸せだと説く者たちの集まりである。

邪神はそのもの達に、人を殺すための力を授ける。
今回は植物を枯らす呪いの品を与えたのだった。
それは黒々として禍々しい魔石の様な石。
その石を土に埋めると半径10kmの土地の生命力が吸われて無くなるのだ。
その数1000個の呪いの石を与えれた、邪神教の者達は寝食を忘れて各地に散らばり石を埋めて行く。

この石の存在に気づいたのは、ファーストだ。
不審な集団を見つけ後をつけると、何か禍々しい物を土に埋めていたのだ。
堀奥して鑑定すると
「邪神の呪いの石」とあり、効果は土地の生命力を奪う。
であった、そこでファーストはその石を回収し始めるが、ゼスト王国以外では獣人王国やファーストが直接関与できる場所に限られた。
そのため食糧の生産が急速に落ち込むことを防ぐことはできなかった。

回収できない理由に普通のものでは、石に触れればその者の生命力自体が吸い取られることが大きな理由だった。
ただこの石は、十分に生命力を吸収するとただの石に変わる様で、3年もすれば元の生産力は戻ると考えられた。
ただし肥料などを与えた場合の話である。
ファーストの農耕のノウハウを受けようとしない王国は、その後急激に衰退することになる。

このため、邪神教の者達の目的の半分は達成されたと思える。
何故邪神がその様な石を与えたのかはその時は謎であった。

その後もファーストは、世界中の王国に邪神教の目的と石の排除の方法を伝え必要があれば、大地の回復の方法を教えるとして、世界の半分がファーストの教えを受けることになった。


ファースト以外のものが集めた邪神の石が、ある日奪われる事件が頻発する。


ーー 魔王の誕生


邪神は魔王を誕生させ、さらなる邪神への贄を求めていた。
「この世界の半分の命を我に捧げよ!さすれば我は顕現する。」
と言う言葉を最後に邪神は沈黙を守り始めた。

邪神教徒達は、邪神復活のための活動を命をかけて行い始める。
邪神の石に触れれば当然教徒達といえども命を失う。
それさえ方部の様に教徒達は、命を捧げる。

当初予定の半分ほどの石が集められたところで、魔法陣が光り始めた。
魔王の誕生である。

この時誕生した魔王は、猪の様な顔をした魔王であった。
その両手には禍々しい魔剣が握られており、この魔王が自ら人々を襲うことがわかった。

魔王は次に眷属を生み出し始めた、
・ワイバーンの変異種
・ミノタウルスの変異種
・バンパイアの始祖
・魔蛇の変異種
の4匹を生み出し四天王として使い始めた。

ーー 魔王軍の侵攻 1


魔王と魔王軍が生まれた場所は、ゴードン王国の西側で、ほとんど人の住んでいない険しい山脈が連なる場所であった。
その先には魔族領があり魔族領には魔族領の魔王が存在する。
しかし魔族領の魔王は、豊かになった魔族領の魔王であり人に害する必要もなかったため、新魔王の誕生にも全く動じることも協同することもなかった。

そのため、猪の頭の魔王は、魔王軍を早急に作る必要に迫られ、南のサハラ王国に進軍しながら仲間を増やし始めた。

魔物を従えつつ大きくなる魔王軍に危機感を持った、サハラ王国の国王はファーストに助けを求めた。

「なるほど、このためにあの石を使ったのか。」
邪神の呪いの石の使い先が新しい魔王の誕生と知り、フファーストはサハラ王国に飛んだ。

総勢1万の魔物の群れを目前にしてファーストは笑っていた。
「食料が我が元に集まってきた。」
と言いながら風魔法と雷魔法を駆使して、食糧として収納して行く。
この群れを率いるのは、四天王の1人魔蛇のメデューサ。

次々に配下を狩られて怒りに達したメデューサは、ファーストに戦いを挑む。
「我の魔眼を受けて石と成り下がれ!」
メデューサが絶対の自信を持って、魔眼をファーストに向けるが全く聞いた気配がない。
「何故も前は我の魔眼が効かないのだ。」
と言うメデューサにファーストは
「そんな程度の低い魔眼が俺に効くものか。」
と吐き捨てると、メデューサの首を切り飛ばした。

これで第一陣の魔王軍の侵攻はファーストに防がれた。
その後魔物の肉を売り飛ばす、ファーストの高笑いが聞こえた。


ーー 魔王軍第二四天王ミノタウルス


メデューサが討伐されたことから魔王は、ミノタウルスのミケランジェロとワイバーンのネイサンに支持を与える。
「敵はかなり強うそうだ、だが1人の様だ。二手に分かれてサハラ王国を蹂躙せよ。」
と。

かくして魔王軍の第二陣が四天王2人を先頭に二手に分かれて、侵攻し始めた。
ファーストは、妹にそれぞれをあてがった。
当然のようにミノタウルス軍とワイバーン軍の前に妹達が敵として現れる。
その報告を受けた魔王がバンパイア始祖のブラッドリーに命ずる。
「今こそお前に出番だ。」
ブラッドリーは、配下を連れて夜のサハラ王国へ向かう。

ブラッドリーの配下はバンパイアのため、本人以外は夜にしか活動できないのだ。
空を覆うような蝙蝠の群れ、ブラッドリーの配下たちだがもう少しでサハラ王国の王都と言うところで、突然燃え始めた。
「何が起きてるのだ。」
ブラッドリーは、燃え尽きる配下を見ながら敵を探すとさらに上空に1人の男を見つけた。
「お前が敵か!許さぬ。」
襲いかかるブラッドリーの攻撃をいなしながら、バインド魔法で拘束したファーストは、その胸にミスリルの杭を打ち込み聖気の魔力を注ぎ込む。

「グアアああああ。」
苦しみ悶えるブラッドリー、次第に体が燃え始めて行く。
消し炭になり存在が消えたのを確認したファーストは、ブラッドリーらが飛んできた場所を確認して転移する。

猪頭の魔王の目の前に転移したファーストに驚く魔王。
「お前が我が四天王を滅ぼした敵か?」
と言うと、鋭い動きで切り掛かってきた。

身体に似合わず鋭い攻撃をする魔王、その手に持つ魔剣からはあの石と同じ禍々しい気配を感じることができる。

「その剣は邪神の石でできているようだな。」
と呟きながら自作した剣を取り出す。
「なんだその剣は!お前の剣こそ邪悪な剣ではないか。」
魔王はファーストが取り出した真っ黒な剣を恐れ出した。
ファーストが振り、魔王に剣の切っ先が触れるたびに魔王の体が小さくなる。
「なんと凶悪な剣だ、お前は勇者ではないな。何者だ!」
と最後の力を振り絞り、魔王が問う。
「俺か?俺はファーストそれ以外何者でもない。」
と言うと剣で猪首の魔王を切り裂いた。

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