21 / 25
獣人王国を打ち倒す
しおりを挟む
ーー 武術大会への参加
ファーストはある日、獣人王国内で行われている武術大会のことを耳にすると妹たちを連れて大会に参加することにした。
「お兄さん方、観覧かい?」
入国の際に獣人の門番に聞かれ
「いや、3人とも武術大会の参加するのさ。」
とファーストが答えれば、大袈裟に反応した門番が
「へー、参加者かい。まー怪我をしない様に頑張りな。」
とエールを送ってくれた。
獣人国は力のみが正義という考え方がある。
身体能力的に劣る、人種であっても大会に挑戦すると言えば、それなりに尊重してくれる様だ。
大会の行われる街に着いた、獣人国は王都と言うものが存在しない。
それは獣人国の国王が力で決まるからだ、そのため種族や出身地がまちまちで王都を作ることができないのだ。
ただ国王が出た種族は、しばらく大きな顔をできるのがそのお恩恵だ。
街の名は「ケインズ」人口5万の大きな街で、獅子族が治める街だ。
受付で大会出場の届出を書くと、直ぐに裏の運動場でどの大会に出られるかテストされる。
大会は、
・未成年大会
・武術混合大会
・無手種族混合大会
の上位32人が本戦に出場し、何でもありの大会で今年の優勝者を決めたあと、国王と戦うのだ。
裏の運動場で的に対して攻撃をして、ある一定上のダメージを与えれば出場が認められる。
妹2人は、武術混合にエントリー、ファーストは無手種族混合に出ることとなった。
予選会開始当日。
参加者は全国から集まった腕自慢ばかりが、総勢1000人ほど集まった。
ソーニャは短剣、ルシファーは槍での参加でそれぞれのクラスで勝ち抜けば本線に出られる。
ソーニャは持ち前のスピードを生かして、相手を翻弄しあぶげなく勝ち上がった。
ルシファーは、見事な槍使いで豪快に勝ち上がり2人とも本戦出場の権利を得た。
問題はファーストの出場する無手種族混合だ。
多くの獣人族が参加してくるが、これぞ強き者の大会ということで、選手が皆興奮状態で手加減や寸止めができず、重症者続出の大会となる。
ーー 無手種族混合
参加者500人余りの予選。
熱戦というか興奮状態の男女が血飛沫を上げて殴り合うのだ。
「続いて人族からのエントリー、ファースト選手と獣人族若手のホープ、ベンガリ選手。」
「「「ワーッ!!」」」
会場が一際興奮状態になる。
身長2.5mガッチリとした虎族の若者に対するファーストは、身長1.8mにスリムな体型だ。
試合が始まると人族を舐めていることが分かるほど、相手の獣人が隙だらけになる。
「お前それで負けて言い訳すんなよ。」
と声をかけるファーストにベンガリはニヤニヤしながら
「好きに打たせてやるよ」
と挑発するとファーストは、見えないスピードで間合いを詰めると
腹に軽くパンチを叩き込む。
「ドーン!」
軽い動きのパンチが恐ろしい音をたてた。
「グッ!」
余の威力に胃の中をぶちまけて、床で転げ回るベンガリ。
「弱い奴が相手の力量もわからず、試合に出るなど獣人も大したことないな。」
と漏らしたファーストの言葉に、会場は興奮。
「奴を叩きのめせ!」
と言う声と
「油断しすぎだろ」
と相手の獣人を責める言葉が会場を埋めた。
その後もファーストも相手をする獣人の選手が、まともに戦いもできずに床に這いつくばる。
次第に観客の興奮が変わってきた
「あの人種、強すぎないか?」
「ファースト?聞いた気がする様な名だが?」
と言う声がで始めた。
予選最終戦、これで勝てば本戦出場が決まる。
ファーストの相手は、優勝候補の1人熊人のベアーズ。
身長3.5mの大男だ。
「俺はお前を舐めたりしない、全力でいかせてもらいぜ。」
と言うと猛烈な突進で鋭いパンチを繰り出した。
観客の皆が、これで決まった。と思った。
しかし会場にはベアーズのパンチを片手で受け止めたファーストが、反対の拳でベアーズを殴りつけるのが見えた気がした。
あまりに速さに腕が消えて見えるのだ。
吹き飛ぶベアーズ選手、よろけながらも立ち上がると再度突っ込む。
「ドガーン!」
ものすごい音と膝から崩れるベアーズの姿を見た観客は、何が起こったか分からなかった。
大きな魔道具のモニターにその瞬間がスローで再生された。
両手パンチのベアーズ選手の両手を外側に流しながら左右のパンチをベアーズの顎に振り抜くファーストのパンチの残像がやっと見える。
「スゲー!」
誰かがそう言った、すると大きな拍手が会場を埋めた。
勝ち名乗りを上げたファーストが右手を上げて会場を後にする。
ーー 本戦前夜。
「此度の無手種族混合の結果をどう見る?」
大会関係者が揃って名簿を見ながら頭を抱えていた。
「この人族のファーストというのは何者だ?我が獣人族の優勝候補が喰われて脱落するのは問題だ。」
と1人が言えば
「何をいう、強い者が残るのが当然だ」
と1人が、すると
「もしこの者が優勝して、我が国王との手合わせになった場合、どうするのだ?」
獣人王国で獣人以外が優勝したことはないが、もしその様なことが起これば歴史が変わってしまう。
「我ら獣人が人族の下など決して許すことはできん。」
と1人が言えば皆が頷く。
「今宵は満月、血のたぎった獣人が暴れてもおかしくないな。」
と1人が言えば、
「そうじゃの、選手候補などが喧嘩に巻き込まれることなど日常茶飯事じゃ。怪我をしてもしょうがなかろう。」
という言葉で無言で部屋を後にする大会関係者。
夕食どきになりファースト達は、宿を出て料理店を探し始める。
「ん!馬鹿な奴らが。俺だけではなく妹達にも暴れさせてやる、後悔するがいい。」
と呟くと2人に
「明日の大会は手心を加える必要はない、好きなだけ暴れよ。」
と言うと食事を楽しみ2人を先に帰した。
1人フラフラと街中を歩いているファーストに30人ほどの獣人らが、酔ったふりして絡んできた。
「おいお前、大きな顔で道を歩くなよ。ここは獣人王国だぜ。」
と絡む獣人に
「何だここでは弱い者が大きな顔をするルールなのか?」
と惚けたことを言うファーストに怒り狂った獣人らが、殴りかかる。
一瞬にして闘技場のようになった通り、しかし直ぐに落ち着く。
獣人30人が全て瀕死の状態で地面に転がっている。
そこのタイミングよく兵士が駆けつける
「お前、何を騒ぎを起こしている。逮捕する縛に付け!」
とファーストを一方的に捕まえようとした。
「何だ獣人王国では、強い者が正義ではなかったのか?弱い獣人が正義なのか?」
と大声で言えば周囲から
「そうだ、絡んだ獣人が弱いだけだろうが。」
と言う声が場を占め始め、兵士も手が出せづらくなった。
しかしこれでは使命が果たせぬと思った兵士の1人が、ファーストに殴りかかった。
軽く殴られて倒れた兵士を見て兵士の隊長が
「兵士の手を上げたあいつを捕まえよ!」
と叫ぶと50人の兵士が、ファーストに駆け寄るがまたしても叩く伏せられた。
「弱い、弱い。これでも獣人か?名前を弱人に改名せよ!」
と言い残して立ち去るファースト。
ーー 大会当日。
昨夜の騒ぎは当然、大会関係者に伝わる。
「昨日の騒ぎを理由に出場停止にしてはどうか?」
「いや、昨日の騒ぎであいつは我らを弱人と言いやがった。許せぬ、出場させよう。」
「そして殺せ!」
と言う雰囲気になった。
ファーストが会場に立つと、相手選手の装備が如何にも物々しいものに変わってるのがわかる。
「そっがその気ならいいぜ、殺し合おうか。」
そうファーストが独り言を漏らす。
試合が始まると目の色を変えた獣人の選手が凶悪な武器で襲いかかるが、全てワンパンチで再起不能にするファースト。
試合が進むに従い、焦り出したのは大会関係者。
優勝候補の選手に凶悪な武器を持たせて戦わせているのに、全く勝てないどころか再起不能にされ続けた。
「おい、獣人と言うには強いんじゃなかったのか?あの人種にワンパンで倒させ続けているじゃねえか。」
観戦の旅行客がそう噂し始めると、その話は会場中に広まる。
「獣人は弱い。」
それを証明する様に、2人の妹達も試合相手の獣人をコテンパンに叩き伏せる。
最後の8人にファーストと妹2人が立っていた。
「おいあの人種の男は別として、あの女達も強すぎだろ、1人は獣人、1人は有翼種の様だぜ。」
と言う話で持ちきりだ。
その後ベスト4で、ルシファーがファースト相手に棄権、準決勝でソーニャがファースト相手に棄権をして、決勝は獣人ライアンとファーストに決まった。
ーー 決勝
「絶対獣人として優勝を勝ち取れ、どんな手を使っても構わん。」
相手側の関係者が選手に発破をかける。
~「本日の決勝戦、選手は獅子族のライアン選手と初参加人種のファースト選手です。正々堂々と戦ってもらいましょう。」~
と言うアナウンスと共に2人が会場に立つ。
ライアン選手は、凶悪なハンドグローブを付けているが、ファーストは素手だ。
試合開始のゴングが鳴る。
素早い動きでラッシュをかけるライアン、観客からは一方的にやられている様に見えている。
大盛り上がりの会場。
しじゃし直ぐに静寂が会場を支配する。
一瞬で間合いをとったファーストが、右手を高く上げると次に瞬間、姿が消える。
姿が見えた時、ファーストはライアン選手の立っていた場所に、ライアン選手は高々と空に舞い上がっていた。
「ドーン」
闘技場に叩きつけられる様に落ちてきたライアン選手は、ピクリともしない。
審判が何とかライアン選手を起こそうとするが、全く反応しない棄権な状態だ。
その頃会場の大きな魔道スクリーンに決定的な瞬間がスローで流れていた。
これでは反則などといちゃもんをつけることすらできない。
「・・勝者・ファースト選手」
と言う言葉でどっと会場が湧いた。
その後獣人王国の国王が会場に立つ。
「俺に挑戦するのはお前か」
悠然と見つめる国王にファーストが、威圧をかける。
余りの威圧に国王は、震える身体を隠すことがやっとだった。
国王との試合が始まる。
普通ならここに立ち挑戦者は、満身創痍の状態がほとんどなのだが、ファーストは汗さえかいていない。
冷や汗の国王、腹を決めて武器を手に対峙する。
素手での戦いでは敵わないと分かっていたからだ。
試合が始まる。
次々に攻撃を仕掛ける国王、さすが国王というだけはある。
重く鋭い攻撃が波状的に襲い掛かるが、ファーストに軽々と交わされいなされる。
そしてファーストが動き出す。
ゆっくりとした動きだが、間合いをとることができない。
重いパンチを軽く当てられる、たちまち国王の動きが鈍り出す。
5発ほどパンチをもらい、膝をついた国王。
「ワーッ」と会場に歓声が溢れる。
国王は決死の思いで必殺技を繰り出す、決して大会で使う様のない凶悪な必殺技を。
「狂乱」のスキルを使うと理性が飛び相手を殺すまでその効力は消えなく、身体能力は3倍になる。
これで国王は以前ドラゴンを倒したことがあるのだ。
しかし相手は、ドラゴンなど足元も及ばぬ力を持つ男、3倍の身体能力で立ち向かおうとも全く歯が立たず、ワンパンで床に転がった。
大会が大番狂わせで終わった武術大会、獣人王国は色々な意味で大騒ぎになった。
次の日の晩餐会に呼ばれたファーストと妹達。
国王が現れ
「ファースト殿貴方の強さに私は完敗であった。」
と素直に負けを認めた。
そしてソーニャに対し
「是非我が王国にて一家をなしてください。」
と引き抜きにかかったが
「私より強い男は、ファーストお兄様だけなのになぜ?弱く卑怯なものが大きな顔をするこの国に住む必要があると言うのですか?」
と答えたら
「何と無礼な女か、猫族如きが!」
と怒りの言葉を吐く国王にファーストが
「おい、負け犬が何を吠えている。お前はソーニャにすら敵わぬ弱者である。これ以上俺を怒らせるならここ国ごと潰すぞ!」
と怒りの威圧を振りまく。
会場の妹ふ達を除く皆が、震えてうずくまる。
そこで国王は気づいた
「お前・・いや、貴方はファースト様。その怒りはどうして?」
とファーストの正体に気づいたがその怒りがわからなかった。
「大会に出場させない為に、30人の獣人の後50人の兵士に俺を捕らえさせようとした、しかも戦闘用の武器を大会で使ったんだ、もう獣人が強いとは言えないだろう。獣人は心も身体も弱すぎる。」
と言うと会場から立ち去った。
そのあと国王以下主な獣人が集まり、今後の対応を話し合い始める。
「宿を包囲しております。生きて帰しては、獣人王国の歴史に汚点を残しますぞ。」
「しかし、勝てるのかあのファーストに。」
「5000人の兵士と選手を集めました。これで負けるなら我が王国自体の存亡の危機でしょう。」
と言う男の言葉に皆が頷き
「やれ」
と言う国王の言葉で始まった。
獣人王国とファーストの戦いが。
しかし彼らはファーストを甘くみすぎていた。
周囲を囲んだ獣人5000人に空から隕石が降り注ぐ。
「ズドドドー。」
獣人王国を震わせる隕石の振動、舞い上がる砂埃が収まると立っている獣人は僅かのみ、そこにファーストが現れてワンパンチで叩き伏せながら、国王に居城に歩いて向かう。
その情報を聞いた残りの兵士らが、ファーストに襲い掛かるが全くその歩みを止めることができないまま、国王に前にファーストを通してしまう。
「また会ったな、弱い獣人ども。頭まで弱いとはこの国はもういらぬと見た。俺が貰い受ける。」
そう言うと国王の首を切り飛ばした。
強き者が頂点時立つ獣人王国に新たな支配者が現れた。
人種の男、ファーストである。
獣人王国内におふれを出す、
~我と思う者は、10日後に集まれ。俺を倒した者が次に国王だ。~
と言うものを。
ーー 獣人王国の国王決め
10日後。
大会会場にまたしても多くのものが集まった。
そしてファーストが、妹2人をそこに向かわせ
「どちらかに勝てた者と戦う。」
と言えば、2人に群がる様に襲いかかる獣人ら、しかし誰1人として2人に勝つ者はいなかった。
そして獣人王国は、ファースト個人の属国と成り下がった。
その日から王国に住まう獣人らは打倒ファーストを目標に、爪を研ぐことになる。
こうして多くの強者を失った獣人王国は、他国を侵攻する考えを捨て去りひたすら独立することを願うのであった。
ファーストはある日、獣人王国内で行われている武術大会のことを耳にすると妹たちを連れて大会に参加することにした。
「お兄さん方、観覧かい?」
入国の際に獣人の門番に聞かれ
「いや、3人とも武術大会の参加するのさ。」
とファーストが答えれば、大袈裟に反応した門番が
「へー、参加者かい。まー怪我をしない様に頑張りな。」
とエールを送ってくれた。
獣人国は力のみが正義という考え方がある。
身体能力的に劣る、人種であっても大会に挑戦すると言えば、それなりに尊重してくれる様だ。
大会の行われる街に着いた、獣人国は王都と言うものが存在しない。
それは獣人国の国王が力で決まるからだ、そのため種族や出身地がまちまちで王都を作ることができないのだ。
ただ国王が出た種族は、しばらく大きな顔をできるのがそのお恩恵だ。
街の名は「ケインズ」人口5万の大きな街で、獅子族が治める街だ。
受付で大会出場の届出を書くと、直ぐに裏の運動場でどの大会に出られるかテストされる。
大会は、
・未成年大会
・武術混合大会
・無手種族混合大会
の上位32人が本戦に出場し、何でもありの大会で今年の優勝者を決めたあと、国王と戦うのだ。
裏の運動場で的に対して攻撃をして、ある一定上のダメージを与えれば出場が認められる。
妹2人は、武術混合にエントリー、ファーストは無手種族混合に出ることとなった。
予選会開始当日。
参加者は全国から集まった腕自慢ばかりが、総勢1000人ほど集まった。
ソーニャは短剣、ルシファーは槍での参加でそれぞれのクラスで勝ち抜けば本線に出られる。
ソーニャは持ち前のスピードを生かして、相手を翻弄しあぶげなく勝ち上がった。
ルシファーは、見事な槍使いで豪快に勝ち上がり2人とも本戦出場の権利を得た。
問題はファーストの出場する無手種族混合だ。
多くの獣人族が参加してくるが、これぞ強き者の大会ということで、選手が皆興奮状態で手加減や寸止めができず、重症者続出の大会となる。
ーー 無手種族混合
参加者500人余りの予選。
熱戦というか興奮状態の男女が血飛沫を上げて殴り合うのだ。
「続いて人族からのエントリー、ファースト選手と獣人族若手のホープ、ベンガリ選手。」
「「「ワーッ!!」」」
会場が一際興奮状態になる。
身長2.5mガッチリとした虎族の若者に対するファーストは、身長1.8mにスリムな体型だ。
試合が始まると人族を舐めていることが分かるほど、相手の獣人が隙だらけになる。
「お前それで負けて言い訳すんなよ。」
と声をかけるファーストにベンガリはニヤニヤしながら
「好きに打たせてやるよ」
と挑発するとファーストは、見えないスピードで間合いを詰めると
腹に軽くパンチを叩き込む。
「ドーン!」
軽い動きのパンチが恐ろしい音をたてた。
「グッ!」
余の威力に胃の中をぶちまけて、床で転げ回るベンガリ。
「弱い奴が相手の力量もわからず、試合に出るなど獣人も大したことないな。」
と漏らしたファーストの言葉に、会場は興奮。
「奴を叩きのめせ!」
と言う声と
「油断しすぎだろ」
と相手の獣人を責める言葉が会場を埋めた。
その後もファーストも相手をする獣人の選手が、まともに戦いもできずに床に這いつくばる。
次第に観客の興奮が変わってきた
「あの人種、強すぎないか?」
「ファースト?聞いた気がする様な名だが?」
と言う声がで始めた。
予選最終戦、これで勝てば本戦出場が決まる。
ファーストの相手は、優勝候補の1人熊人のベアーズ。
身長3.5mの大男だ。
「俺はお前を舐めたりしない、全力でいかせてもらいぜ。」
と言うと猛烈な突進で鋭いパンチを繰り出した。
観客の皆が、これで決まった。と思った。
しかし会場にはベアーズのパンチを片手で受け止めたファーストが、反対の拳でベアーズを殴りつけるのが見えた気がした。
あまりに速さに腕が消えて見えるのだ。
吹き飛ぶベアーズ選手、よろけながらも立ち上がると再度突っ込む。
「ドガーン!」
ものすごい音と膝から崩れるベアーズの姿を見た観客は、何が起こったか分からなかった。
大きな魔道具のモニターにその瞬間がスローで再生された。
両手パンチのベアーズ選手の両手を外側に流しながら左右のパンチをベアーズの顎に振り抜くファーストのパンチの残像がやっと見える。
「スゲー!」
誰かがそう言った、すると大きな拍手が会場を埋めた。
勝ち名乗りを上げたファーストが右手を上げて会場を後にする。
ーー 本戦前夜。
「此度の無手種族混合の結果をどう見る?」
大会関係者が揃って名簿を見ながら頭を抱えていた。
「この人族のファーストというのは何者だ?我が獣人族の優勝候補が喰われて脱落するのは問題だ。」
と1人が言えば
「何をいう、強い者が残るのが当然だ」
と1人が、すると
「もしこの者が優勝して、我が国王との手合わせになった場合、どうするのだ?」
獣人王国で獣人以外が優勝したことはないが、もしその様なことが起これば歴史が変わってしまう。
「我ら獣人が人族の下など決して許すことはできん。」
と1人が言えば皆が頷く。
「今宵は満月、血のたぎった獣人が暴れてもおかしくないな。」
と1人が言えば、
「そうじゃの、選手候補などが喧嘩に巻き込まれることなど日常茶飯事じゃ。怪我をしてもしょうがなかろう。」
という言葉で無言で部屋を後にする大会関係者。
夕食どきになりファースト達は、宿を出て料理店を探し始める。
「ん!馬鹿な奴らが。俺だけではなく妹達にも暴れさせてやる、後悔するがいい。」
と呟くと2人に
「明日の大会は手心を加える必要はない、好きなだけ暴れよ。」
と言うと食事を楽しみ2人を先に帰した。
1人フラフラと街中を歩いているファーストに30人ほどの獣人らが、酔ったふりして絡んできた。
「おいお前、大きな顔で道を歩くなよ。ここは獣人王国だぜ。」
と絡む獣人に
「何だここでは弱い者が大きな顔をするルールなのか?」
と惚けたことを言うファーストに怒り狂った獣人らが、殴りかかる。
一瞬にして闘技場のようになった通り、しかし直ぐに落ち着く。
獣人30人が全て瀕死の状態で地面に転がっている。
そこのタイミングよく兵士が駆けつける
「お前、何を騒ぎを起こしている。逮捕する縛に付け!」
とファーストを一方的に捕まえようとした。
「何だ獣人王国では、強い者が正義ではなかったのか?弱い獣人が正義なのか?」
と大声で言えば周囲から
「そうだ、絡んだ獣人が弱いだけだろうが。」
と言う声が場を占め始め、兵士も手が出せづらくなった。
しかしこれでは使命が果たせぬと思った兵士の1人が、ファーストに殴りかかった。
軽く殴られて倒れた兵士を見て兵士の隊長が
「兵士の手を上げたあいつを捕まえよ!」
と叫ぶと50人の兵士が、ファーストに駆け寄るがまたしても叩く伏せられた。
「弱い、弱い。これでも獣人か?名前を弱人に改名せよ!」
と言い残して立ち去るファースト。
ーー 大会当日。
昨夜の騒ぎは当然、大会関係者に伝わる。
「昨日の騒ぎを理由に出場停止にしてはどうか?」
「いや、昨日の騒ぎであいつは我らを弱人と言いやがった。許せぬ、出場させよう。」
「そして殺せ!」
と言う雰囲気になった。
ファーストが会場に立つと、相手選手の装備が如何にも物々しいものに変わってるのがわかる。
「そっがその気ならいいぜ、殺し合おうか。」
そうファーストが独り言を漏らす。
試合が始まると目の色を変えた獣人の選手が凶悪な武器で襲いかかるが、全てワンパンチで再起不能にするファースト。
試合が進むに従い、焦り出したのは大会関係者。
優勝候補の選手に凶悪な武器を持たせて戦わせているのに、全く勝てないどころか再起不能にされ続けた。
「おい、獣人と言うには強いんじゃなかったのか?あの人種にワンパンで倒させ続けているじゃねえか。」
観戦の旅行客がそう噂し始めると、その話は会場中に広まる。
「獣人は弱い。」
それを証明する様に、2人の妹達も試合相手の獣人をコテンパンに叩き伏せる。
最後の8人にファーストと妹2人が立っていた。
「おいあの人種の男は別として、あの女達も強すぎだろ、1人は獣人、1人は有翼種の様だぜ。」
と言う話で持ちきりだ。
その後ベスト4で、ルシファーがファースト相手に棄権、準決勝でソーニャがファースト相手に棄権をして、決勝は獣人ライアンとファーストに決まった。
ーー 決勝
「絶対獣人として優勝を勝ち取れ、どんな手を使っても構わん。」
相手側の関係者が選手に発破をかける。
~「本日の決勝戦、選手は獅子族のライアン選手と初参加人種のファースト選手です。正々堂々と戦ってもらいましょう。」~
と言うアナウンスと共に2人が会場に立つ。
ライアン選手は、凶悪なハンドグローブを付けているが、ファーストは素手だ。
試合開始のゴングが鳴る。
素早い動きでラッシュをかけるライアン、観客からは一方的にやられている様に見えている。
大盛り上がりの会場。
しじゃし直ぐに静寂が会場を支配する。
一瞬で間合いをとったファーストが、右手を高く上げると次に瞬間、姿が消える。
姿が見えた時、ファーストはライアン選手の立っていた場所に、ライアン選手は高々と空に舞い上がっていた。
「ドーン」
闘技場に叩きつけられる様に落ちてきたライアン選手は、ピクリともしない。
審判が何とかライアン選手を起こそうとするが、全く反応しない棄権な状態だ。
その頃会場の大きな魔道スクリーンに決定的な瞬間がスローで流れていた。
これでは反則などといちゃもんをつけることすらできない。
「・・勝者・ファースト選手」
と言う言葉でどっと会場が湧いた。
その後獣人王国の国王が会場に立つ。
「俺に挑戦するのはお前か」
悠然と見つめる国王にファーストが、威圧をかける。
余りの威圧に国王は、震える身体を隠すことがやっとだった。
国王との試合が始まる。
普通ならここに立ち挑戦者は、満身創痍の状態がほとんどなのだが、ファーストは汗さえかいていない。
冷や汗の国王、腹を決めて武器を手に対峙する。
素手での戦いでは敵わないと分かっていたからだ。
試合が始まる。
次々に攻撃を仕掛ける国王、さすが国王というだけはある。
重く鋭い攻撃が波状的に襲い掛かるが、ファーストに軽々と交わされいなされる。
そしてファーストが動き出す。
ゆっくりとした動きだが、間合いをとることができない。
重いパンチを軽く当てられる、たちまち国王の動きが鈍り出す。
5発ほどパンチをもらい、膝をついた国王。
「ワーッ」と会場に歓声が溢れる。
国王は決死の思いで必殺技を繰り出す、決して大会で使う様のない凶悪な必殺技を。
「狂乱」のスキルを使うと理性が飛び相手を殺すまでその効力は消えなく、身体能力は3倍になる。
これで国王は以前ドラゴンを倒したことがあるのだ。
しかし相手は、ドラゴンなど足元も及ばぬ力を持つ男、3倍の身体能力で立ち向かおうとも全く歯が立たず、ワンパンで床に転がった。
大会が大番狂わせで終わった武術大会、獣人王国は色々な意味で大騒ぎになった。
次の日の晩餐会に呼ばれたファーストと妹達。
国王が現れ
「ファースト殿貴方の強さに私は完敗であった。」
と素直に負けを認めた。
そしてソーニャに対し
「是非我が王国にて一家をなしてください。」
と引き抜きにかかったが
「私より強い男は、ファーストお兄様だけなのになぜ?弱く卑怯なものが大きな顔をするこの国に住む必要があると言うのですか?」
と答えたら
「何と無礼な女か、猫族如きが!」
と怒りの言葉を吐く国王にファーストが
「おい、負け犬が何を吠えている。お前はソーニャにすら敵わぬ弱者である。これ以上俺を怒らせるならここ国ごと潰すぞ!」
と怒りの威圧を振りまく。
会場の妹ふ達を除く皆が、震えてうずくまる。
そこで国王は気づいた
「お前・・いや、貴方はファースト様。その怒りはどうして?」
とファーストの正体に気づいたがその怒りがわからなかった。
「大会に出場させない為に、30人の獣人の後50人の兵士に俺を捕らえさせようとした、しかも戦闘用の武器を大会で使ったんだ、もう獣人が強いとは言えないだろう。獣人は心も身体も弱すぎる。」
と言うと会場から立ち去った。
そのあと国王以下主な獣人が集まり、今後の対応を話し合い始める。
「宿を包囲しております。生きて帰しては、獣人王国の歴史に汚点を残しますぞ。」
「しかし、勝てるのかあのファーストに。」
「5000人の兵士と選手を集めました。これで負けるなら我が王国自体の存亡の危機でしょう。」
と言う男の言葉に皆が頷き
「やれ」
と言う国王の言葉で始まった。
獣人王国とファーストの戦いが。
しかし彼らはファーストを甘くみすぎていた。
周囲を囲んだ獣人5000人に空から隕石が降り注ぐ。
「ズドドドー。」
獣人王国を震わせる隕石の振動、舞い上がる砂埃が収まると立っている獣人は僅かのみ、そこにファーストが現れてワンパンチで叩き伏せながら、国王に居城に歩いて向かう。
その情報を聞いた残りの兵士らが、ファーストに襲い掛かるが全くその歩みを止めることができないまま、国王に前にファーストを通してしまう。
「また会ったな、弱い獣人ども。頭まで弱いとはこの国はもういらぬと見た。俺が貰い受ける。」
そう言うと国王の首を切り飛ばした。
強き者が頂点時立つ獣人王国に新たな支配者が現れた。
人種の男、ファーストである。
獣人王国内におふれを出す、
~我と思う者は、10日後に集まれ。俺を倒した者が次に国王だ。~
と言うものを。
ーー 獣人王国の国王決め
10日後。
大会会場にまたしても多くのものが集まった。
そしてファーストが、妹2人をそこに向かわせ
「どちらかに勝てた者と戦う。」
と言えば、2人に群がる様に襲いかかる獣人ら、しかし誰1人として2人に勝つ者はいなかった。
そして獣人王国は、ファースト個人の属国と成り下がった。
その日から王国に住まう獣人らは打倒ファーストを目標に、爪を研ぐことになる。
こうして多くの強者を失った獣人王国は、他国を侵攻する考えを捨て去りひたすら独立することを願うのであった。
29
お気に入りに追加
1,080
あなたにおすすめの小説
現代の知識と科学で魔法を駆使する
モンド
ファンタジー
山奥に住む男は定年後、実家のあった田舎に移り住んだUターン者である。
古くなった母屋を取り壊し、自分で家を立て始めていたがその作業中に埋蔵金を掘り当てた、時価総額100億円以上。
そんな悠々自適な生活を送っていたところ、子供の頃から不思議に感じていた隧道が自宅裏山にあったことを思い出す、どこに通じているかと興味に惹かれ隧道に入ると、歩くほどに体が若返っていくのが分かる・・・、そのまま進むと突然、光に飲まれ気づくと石積みの部屋に立っていた。
その部屋には脇に机が一つ置かれてあり和紙の紙束と日本刀が一振り置いてあった。
紙束を開くとそこには自分の先祖と思われる人物の日記が書かれていた。
『この先はこの世でない世界が広がり、見たことも聞いたこともない人々や
動植物に恐ろしい魔物、手妻の様な技に仙人の様な者までいる、しかもその
世界において身に付いた技や力は現世に戻っても変わることがない。志ある
ならひと旗あげるのも一興、ゆめゆめ疑うことなかれ。』
最後のページにはこの言葉と「後は子孫に託す」との言葉で締められていた。
男は刀を腰に下げると出口と思われる方に歩きだした、10歩も歩かぬうちに光に包まれ森の洞窟の出口あたりに立っていた。
立っていた場所から車一台分の幅で未舗装であるがしっかりとした道路がなだらかな地形に沿って続いているのが見える、そこで男は食料や水を持っていなかったことに気付き一旦洞窟の方に歩き出すと、いつのまにか石室に立っておりそのまま歩くと隧道の入り口に立っていた、違っているのは17・8歳の若々しい身体の自分と腰に下げた刀が不思議な体験を事実と肯定していた。
冒険の準備を済ませ、自衛隊仕様のジープに荷物を載せて隧道に車を走らせると、あの石室を通過して洞窟の前にたどり着いた。
ここから男の冒険の始まり、セカンドライフよろしく21世紀の科学と不思議な世界で得たスキルで成り上がる男の物語。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる