お家乗っ取りご自由に。僕は楽しく生きていきますからね？

復活

隠密行動

僕は怪しい男たちを追いながらも、どうしたものかと焦っていた。僕一人で、この状況を解決できる気がしなかった。少なくともあの背の高い男は、隙のない身のこなしで手練れのように思えた。彼らはロッキンの店の方へと向かっていて、僕はますます焦っていた。


その時、僕の目に留まったのは彼だった。侯爵と遭遇するきっかけになった際に荷馬車を操っていたジョイだ。二つ上のジョイは今はロッキンの商会の運搬作業を手伝っていた。

僕がロッキンの店に顔を出す時に、会えば時々話をしていたんだ。僕は彼に合図を送ると、前方を気にしながら、白騎士団のアルバート宛にメモを走り書きして、彼に届けてくれる様に頼んだ。

一緒に僕の銀の髪をナイフで切って添えた。これならきっと必ず届くだろう事を願って。


ジョイの馬車が駆け足で遠ざかっていく音を聞きながら、僕は注意深くロッキンの本店へと急いだ。もうすぐ本店のある通りに出ようという時に、通りの手前で、あの二人がもう一人の若者と何やら揉めている所に出くわした。

多分さっき話に出た若者だろう。僕がこっそり様子を伺っていると、青みが掛かった暗めの銀髪と青い瞳の若者の顔は、どこかで見たような懐かしさを連れてきた。


ドクリと心臓が大きく動くのを感じた僕は、彼がきっとゲッダム男爵と母親の男爵夫人、そして僕に人生を翻弄させられている偽サミュエルなのだと分かってしまった。

凛々しい、気の強そうなその表情は今や、怒りと焦りを滲ませて、掴まれた大柄の男の手を振り払おうとしているのに、敵わない様子だった。


運命の悪戯か、彼がきっとロッキンの愛する人なのだろう。僕は唇を噛み締めて、腰に差した剣の柄を握り締めた。一緒にいた下男が馬車を呼びに離れた隙を突いて、僕は油断していた男の手から、ロッキンの恋人を引き剥がした。

そして剣を振りかざして言った。

「嫌がっているじゃないか！」


男は突然現れた僕と剣に一瞬怯んだものの、僕をジロリと見定めるとニヤリと笑って言った。

「どうも誤解がある様だ。彼は私の連れだ。我儘を言って困らせるのが彼の趣味なのだ。さぁ、邪魔だてしない方が良いぞ。彼をこちらへ寄越せ。」

僕は男を見つめながら、後方にいるロッキンの恋人に尋ねた。


「君はこの男の連れなのか？一緒に行きたいのか？」

するとロッキンの恋人は、首を振って言った。

「いいや、この男は私とは関係ない。一緒には行かない。」

僕はそれを聞いてニヤっと笑って、顔を歪める男に殊更明るい声で言った。


「聞いたかい？貴方に彼を連れて行かせるわけには行かなくなった。彼は僕の友人ロッキンの愛する人だからね。」